real local 福岡「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【店】

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

2019.12.05

護国神社の裏手にぎゅっと寄り添って佇む長屋の群れ。その細い路地の入り口に、裃をつけてちょんと座ったユーモラスな猫の看板が揺れている。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

猫に誘われるままに路地を曲がると、同じ裃姿の猫が染めぬかれた、まるで小料理屋のような藍染のれんが出迎えてくれた。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

2018年、六本松地区の路地裏にオープンした「書肆吾輩堂」は、かなり珍しい、猫専門の書店だ。
店内に一歩踏み込めば、そこは猫たちの領分。
本の表紙はもちろん、オブジェや小物など様々なところに陣取った猫たちが出迎えてくれる。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

実はこの「吾輩堂」、実店舗のオープンこそ2018年と新しいが、ネット上ではすでに「猫の本屋さん」として2013年からの長い活動歴がある。
本のジャンルや新本・古本などの分類に混じって「店主の主観」で紹介される本の数々からは、画面越しにも伝わってくる猫愛がある。

Webサイト:書肆吾輩堂 ONLINE BOOK STORE

「ほしかったけどなかったから作った、というのが正確かもしれないですね」

「吾輩堂」の生まれた経緯を店主の大久保さんに伺ってみると、そんな風に教えてくれた。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

元々、本も猫も大好きだった大久保さんだったが「猫の本」に興味を持ったのは、実際に猫を飼い始めてから。
ペットとしての猫との生活について触れた本はもちろん、エッセイや絵本、小説まで、猫に関する本は実に様々。

なのに、それ専門の本屋さんはない。
だから、やろうと思った。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

とは言っても、店を構えるというのは一大事業。
大久保さんが選んだのは、人件費や施設費がかからず、個人でも初められるネットショップというやり方だった。

インターネットを通じて個人間で売買した経験はあった。
それに加えて、各地の隠れた魅力を紹介するツアーコンダクターや、テーマに沿った作品をピックアップする学芸員など、これまで積んできた様々な経験が、不思議とひとつにつながっていくのを感じたという。

古本に加えて雑貨や新本も扱いながら、ネットを中心に活動していたが、カフェやショッピングモール等でのイベントに参加するごとに「実店舗を開かないの?」と訊かれることが多くなった。そんな折、今の物件との縁もあり、昨年、開店への運びとなった。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

「焦らずゆっくりしてほしい」というのが「吾輩堂」の実店舗に込めた思い。
その言葉通り、磨かれた椅子とテーブルが配され、ゆっくりと本を選べるようになっている。

お酒のメニューも設えられていて、路地裏に佇む猫のような、ひっそりとした大人の空間だ。
そしてこだわりの雑貨が並べられた2階には、なんとこたつも!これぞ究極の「ゆっくり」空間。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

猫愛あふれるのんびり空間で、大久保さんに(無理を承知で)1冊だけおすすめの猫本を紹介していただいた。

大久保さんが挙げてくださったのは「こねこのミトン」。
いなくなってしまった子猫を探すかわいらしいストーリーながら、たった2色の水彩でどうやったらこれほど……?と思わされるほど、子猫の愛らしさが溢れんばかりに描写されている。
温かいこたつに潜り込んで子猫の表情を眺めていると、いつの間にかずいぶんと時間が過ぎてしまっていた。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

帰り際、ふとカウンターの端に目をやると、そこにもたくさんの猫本たちが出番を待っていた。
猫の本、というジャンルははっきりと存在しているわけではない。小説やエッセイ、写真集や絵本と、実に様々な猫本がある。だからこそ、大久保さんはいまでも手と目で猫の本を探しているのだという。
路地裏にひっそり佇むこの店で、出迎えてくれる猫たちの数はこれからも増える一方のようだ。

帰路、次にまた会いに来るのが楽しみな、馴染みの猫ができたような、そんな不思議な気持ちで胸がいっぱいになった。

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように

URL

https://wagahaido.com/

住所

福岡市中央区六本松1-3-13

名称

書肆 吾輩堂

業種

書店・雑貨店

TEL

092-791-1880

営業時間

11:00〜18:00

定休日

月・木曜、年末年始
※イベント出店等にて急な店休日あり

「書肆吾輩堂」路地裏に棲む猫のように