real local 福岡靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」 - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」

靴下の一大産地・奈良から福岡へ移住した若い二人

2019.11.26

3足まとめて◯◯◯円、擦り切れたら新調する消耗品。靴下ってそんなものだと思っていました。ところが、

「靴下はインナーでありアウターでもある」

と聞いて、考えが180度変わり、

「足は第二の心臓。締め付けがきついと良くないけれど、ずれたら気持ち悪い」

「耐久性と見た目、求められるものは服より多い」

と知って大いに納得。

「洗濯ネットに入れて洗ってくださいね」のアドバイスをいただく頃には、すっかりこのお店が好きになっていました。

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」
ハウズザットの靴下たち。色合い、風合いともに見るからに温かそう

奈良県出身の綾部舜(しゅん)さんと光里(みさと)さん夫婦のお店は、福岡市中央区六本松にあります。店名の「六本松のくつした屋さん How’s That(ハウズザット)」は、二人が「これどお?」と胸を張っておすすめできるものだけを、という思いから。そしてブランドの一つでもあります。

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」
見ていて気持ち良いほど初々しい二人。でも靴下には経験と思いが詰まっています

二人は小学校の同級生。奈良県は日本一の靴下生産地で、光里さん自身、老舗の靴下工場で生まれ育ちました。もともとは江戸期創業の木綿の紡績工場で、靴下の生産を始めたのは大正時代だそうです。かつて町じゅうに響いていた靴下編み機の音が次第に減っていく。光里さんは家業の靴下工場に就きながら、もう一度町に活気を取り戻したい、と考えていました。

一方、舜さんは靴下などニット製品の材料となる糸商社に就職。二人は販売イベントでばったり再会して意気投合。「タンスに返ってくるのが待ち遠しくなる靴下」をブランドコンセプトに、二人が本当に履きたい靴下を提案する新ブランドの構想、そして結婚と、公私ともにめまぐるしい展開に。

お店を出すなら実家のある福岡で、という舜さんの福岡礼賛を聞き続けて1年、光里さんはやっと腰をあげます。

2019年3月に挙式、5月に福岡市へ。101日、古い木造アパートを2室つなげて改装したお店をオープンしました。

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古いアパートに決めたのは「商売する場所ではなさそう」な点で二人の考えが一致。「六本松の昭和感と近代が混在しているところも面白い」と光里さん

ハウズザットは他の靴下とどこが違うの?

まず一つは、日本製の古い編み機を使っていること。大量生産ができず、職人がつきっきりで適正な時間をかけて動かす必要があるそうですが、「それだけ糸に負担をかけない編み方ができる」と、舜さんは言います。

コンピュータ化された今の編み機は、大量かつ安定した生産が可能ですが、高速であればあるほど糸が消耗してしまう。「ゆっくり編むことで吸湿性や保温性といったコットンの特性を活かせるし、風合いが出る」と、二人は1台の機械から編み立てる靴下を1日50足に留めているそうです。

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」
初期の頃の編み機(レプリカ)。靴下が実際どのように編まれていくか見ることができます

今、取材時に購入した靴下を履いて原稿を書いていますが、肌触りと包まれる感触は、これまでの靴下とはまったく違います。実はサイズについて、光里さんはなぜか1サイズ大きめをすすめてくれたのです。これが正解でした。靴下をこれほどの感慨をもって履いたのは初めてのことです。

光里さんは奈良県靴下工業協同組合が認定する「靴下ソムリエ」の一人。「靴下産業の背景にある文化もいっしょに伝えるのが私の使命と思っています」

そう、ハウズザットのもう一つの魅力は、様々な切り口から靴下についての相談を聞いてもらえること。例えば、既製品にない特性を持つ靴下の提案もその一つ。

きっかけは、薬の副作用で足が膨らみ、合う靴下がないと悩むお客様の来店でした。店の製品にもなく、今、奈良の職人さんに頼んで、特別に伸び代の大きい靴下を試作中です。

「すべてにお応えすることはできませんが、取り組みたいと思っていた矢先のお客様だったので、ご満足いただけるものができるようにしたい」と、二人は口を揃えます。

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」
他にオーガニックコットンを使用した「オーガニックガーデン」、様々なデザインや色合いの「ホフマン」というブランドを取扱っている

本場・奈良県から福岡へ飛び火した靴下にかける情熱。それを、春風のようなさわやかさで目の前に広げてみせる二人に、ぜひ会いに出かけてみてください。

目印は、アパートの2階に掲げられた、小学校の教室番号のような小さな「くつした」の看板です。

靴下ソムリエのいる小さな靴下屋さん「How’s That」
openの刺繍が入った靴下が下がっていたら開店中。でもあまりお休みすることはなさそうです
屋号

六本松のくつした屋さん How’s That(ハウズザット)

URL

https://www.howsthat-shop.com/

住所

福岡市中央区六本松1丁目4-11 MM202

備考

営業時間:11:00〜18:00

定休日:なし(不定休)

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