Q1という新たな問いのはじまり【その2】/リビセン体験記・前編
2019年11月2~19日までの18日間、山形を離れ長野県で過ごしました。上諏訪市にある古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップRebuilding Center Japan(リビセン)の「サポーターズ」に参加してきたのです。これはその体験レポートです。
そもそもなぜ私がそこへ向かったのか。きっかけは「Q1プロジェクト」における第3回リノベーションスクール@山形です。私が参加したユニットを率いていたユニットマスターが、リビセン代表の東野唯史さんでした。このスクールで私たちが最終的に提案したのはQ1(=旧一小校舎)の空間を使って「まちの建物やモノに詰まった想い、物語を未来へ紡いでいく古物店をやる」こと。リビセン「サポーターズ」への応募を、その実現への第一歩としました。
リビセンにおける「サポーターズ」は、スタッフではないけれど、スタッフとたくさん話をし、一緒に働き、一緒にお茶して、一緒にご飯を食べるし、古物に触れて、洗って、売り場に並べてみたりもします。お客さんよりもずっとスタッフに近いところでリビセンを体験できます。そこに自分の身を置くことで、古いモノの価値の見分け方、扱い方、値付けの仕方、お店やイベントの運営の仕方、古物を扱う基本などを学びながら、「自分が山形でこういう事業をやるためにはどんな能力や準備が必要なのか?」を明らかにすることが狙いです。
古いモノたちが無言で
語りかけ教えてくれる
さて、実際の「サポーターズ」では、お店にやって来たモノを掃除したり、運搬したり、建具を洗ったり、タイルを磨いたり、床板から釘を抜いたりと、シンプルで地道な作業をたくさんしました。ワクワクするばかりのリビセンの売場を支えているのは、実はこの地道な作業なのだとわかります。
年季の入った立派な工具はここが職人の多いまちだったということを教えてくれます。なかなか抜けない手打ちの和釘は古材の歴史を無言のうちに感じさせてくれます。引き取られてくるもの全ての思い出を一つ一つ大家さんから聞けるわけもないのですが、モノ自らが姿形を通してそこに刻まれた様々な物語を語りかけくれることがあるというのは大きな発見でした。
「レスキュー」。
労いと感謝の表れ
リビセンでは、解体が決まった建物から古材や古道具を引取りに行くことを「レスキュー」と呼びます。私も同行させてもらった最初のレスキュー先は、100平米を超える大きなお宅でした。そこは江戸時代に宿場町として栄えた場所で、多くの人が泊まってきたのだそうです。なんども改修を重ねながら大事に住まわれてきたお宅ですが、家主であるご夫婦がふたりで暮らすには広すぎるということで、解体の決断をしたとのことでした。そんな思い出やお話をお聞きしつつ、お引き取りできそうなものを探していきます。
「こんな古いものも引き取ってくれるの?」「捨てるつもりだったものをまた使ってもらえるのは嬉しいことね!」という家主さんの驚きや喜びの声をお聞きして、こちらも嬉しくなりました。
また、畳の下の床板を引き取るレスキューに参加する機会もありました。印象的だったのは、解体の作業が始まるというまさにそのとき、スタッフのナカジさんが建物に向かってかけた「今日までお疲れ様でした」という言葉でした。
私はこの一言に、レスキューという言葉に込められた想いを見た気がしました。リビセンが古物を引き取りにいくのは、「捨てられるのがもったいないから」というネガティブな思いでもなければ、「商品を仕入れる・買取る」という商売感覚とも別のもののように思います。古道具や古材や解体される建物、そしてそれを大事に守ってきた人たちに、労いと感謝の気持ちを持って、丁寧に、楽しみながら接すること。リビセンの魅力はそこなのだと感じています。
清々しく働く
美味しく食べる
1日の終わりにみんなでごはんを食べる。その時間がまたとても良いものでした。気持ちよく働いた後の食事によって、また気持ちよく働くための活力をもらえる、という感じです。
「自分が好きなことや普段の活動が、社会や地域の人のためになる。それはすごく頑張れる力になる」と、毎日美味しいまかないを作ってくれたどんどんさんは言っていました。ここで学んだことをきっかけに、山形で企てていたことを実現しようとしている私たちの背中を押してくれるような言葉でした。
誰かのためになっていると思えることを仕事にしているおかげで、日々の作業をやるのも気持ちいいし、新しい挑戦に向かっていくことができるのだそうです。働いていて清々しい。そういう心のありかたが、リビセンのお店の穏やかな空気感を生んでいるように思います。
次回はレスキュー以外の活動についてもレポートしたいと思います。