はじめての「納豆汁」
※山形へ移住したライター中島による、山形で体験するはじめての食べ物、イベントなどを記録するコラムです。
それにしても、山形の人はよく納豆を食べる気がします。振り返れば、納豆餅の衝撃からはじまり、納豆ラーメンにひっぱりうどん(これについても後日にゆっくりと書いてみたい)と、その独自の納豆使いに驚きを重ねてきた山形ライフですが、先日ついに「納豆汁」を食べることができました。
納豆汁と聞いてどんなものを思い浮かべるでしょうか。納豆がトッピングされた汁物ではなく、すりつぶした納豆が味噌汁に溶かれたものが納豆汁の正体です。
雪深い山形では昔から納豆は貴重なタンパク源で、納豆汁は多様な具材から栄養を摂ることができる郷土料理であり、健康食であり、年明けに食べる七草がゆの代わりに納豆汁を食べる習慣があったと、地元の人からうかがいました。
旅篭町の「香味庵 まるはち」にて納豆汁をいただきました。具材はとうふ、こんにゃく、あげ、里芋、なめこ、お好みで刻みネギとせりをのせていただきます。
湯気からほんのり納豆の香り。汁に粘りはなく、具材は細かめ(1.5cmくらい)の賽の目に切ってあり、するするっとのどを通って、さらに後から納豆の風味が追いかけてくる感じ。
食べていると、シャキシャキした不思議な食感の具材を発見。これは「芋がら」というもので、里芋の茎を干した山形の伝統的な保存食なのだとか。納豆汁には欠かせないもので、山形ではスーパーで入手することができます。
郷土料理といっても、納豆をすりつぶす手間が省ける“納豆汁の素”まで売られているというくらい、納豆汁は日常的に愛されていて、地元では給食のメニューにも登場し、納豆汁が出ると「やった!」という声もあれば、「終わったー」と嘆き(!?)の声もあるとかで。ティーンズの賛否は分かれる様子ですが、山形では誰もが通る冬の味だそうです。
さりげなく納豆の風味がする素朴な味とあたたかさが、冷えた身体にじんわり染み渡ります。「寒くなると納豆汁が食べたくなるのよねぇ」と、地元の人が言っていたことに納得しながら、改めて山形の冬に入門できたような気がした一杯なのでした。
≫「はじめての山形」シリーズのアーカイブはこちらから。