地元で味わう生活カルチャー!福井市東郷で「県内微住」
体験レポート
近ごろ話題の新しい生活カルチャー「微住(びじゅう)」。その発祥の地である東郷地域で新たな微住がはじまったと聞きつけて、全4日間の日程のうち2日間お邪魔して、取材してきました。
えっ!?微住って??という方は、発起人の田中佑典さんのインタビュー記事をご覧ください。
台湾×福井 『青花魚』発刊!「微住」という新しい観光スタイル
台湾の最先端で福井の魅力を紹介! 新しい観光スタイル「微住」が展開中。
観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん
1日目:出会いはテントサウナとともに
福井駅から車で約15分。のんびりと田んぼ道を走らせていると…見えてきました!会場の農家民泊施設「福井ふるさと茶屋 杵と臼」。微住してる人たちはどこにいるのかなー?
と思ったら、その軒先に煙突が飛び出た変わったテント出現。中から「熱―い!」「うひょー最高―!」「もっと燃やそー!」などの怪しい声が聞こえてきます。こ、これは噂に聞くテントサウナか!いきなりこんなディープな体験してるんですか~!
サウナから出たら水風呂代わりのミニプールに使ってチルアウト。ととのった~
その傍らではBBQの準備が進行。いい感じに肉が焼けていきます。準備ができたところで集合してカンパーイ!って、最高かよ~
今回は福井県内の方が東郷に微住するという新しい趣向。えーっと、誰が微住しに来た人で、誰が地元の方ですかねー。と思っていたら自己紹介タイム開始。ちょっとホッとしました(笑)
参加者も地元の方々も個性豊か
参加者の一人、武生にお住まいの墨絵アーティスト上田さん。微住のことを知ったきっかけはクラウドファンディングだそう。「東郷に来たのは初めてで興味津々、好奇心が止まりません!来たばっかりですけど、本当にいいところ!」
他にも「地元に空き家があるから、微住の候補地にならないかなーって考えてるところです!」という参加者も。
こちらは飛び込みで見学に来た、武生在住の堺さん。東京で音楽活動をやっているときに、とあるイベントで微住主催者の田中さんと知り合っていたそう。「彼が福井出身というのは知っていたんだけど、こんな形でまた関わることになって、色んな方とも再会できて嬉しいです!」
参加者の皆さんは始めての東郷だったようですが、実は私も東郷を訪れたのは初めて。ここはどちらかと言うと「ふつうの田舎の町」という趣きで、派手な観光スポットも繁華街もありません。それでも「東郷が何だか面白いらしい」という話は、どこからともなく耳にしていて、地元の方の自己紹介を聞いた時、その理由に触れたような気がしました。
地域で造園会社を営み、東郷のまちづくりに長年携わってきた佐々木さん。「微住の田中くんとは最初ユルユルと付き合ってきたんだけど、彼はすごい行動力。気がついたらスリリングなことになってきたね」と温かい眼差しで話されます。
東郷の方とご結婚されて移住してきた伊藤さん。台湾で日本語教師として働いていた経験があり、「いつか海外から福井に来る人のお世話みたいなことがしたいな~と思っていたんです」と、微住がきっかけで夢に近づいたそうです。
本当は地元の方を全員紹介したい!それくらい面白くてオープンマインドな方ばかり。何だろう、この「役者がそろってる」感じ。なんだかすごいぞ東郷。
オンラインで語らう「微住大会議」
BBQがひと段落したのもつかの間。夜は「微住大会議」と題したオンライン会議がはじまります。コロナウィルスの影響で東郷に来れなかった田中さんも、東京からオンラインで参加です。オンライン会議って大体お固い雰囲気なものですが、親戚の集まりのようなこの雰囲気が微住ならでは。
ご飯とお酒を片手に、冗談交じりで微住の感想を語り合う面々。次第に「これから微住をどう盛り上げていくか」「微住で地域をどう盛り上げていくか」などの熱い話に発展していきます。
ヨソモノが地域と関わる時に、地元の人がどういう受け入れ方をするかが大事だと思うのです。東郷のような、お互いの顔が見える小さな田舎町に、急に知らない人が住み始めたら、地元の人が警戒しかねません。でも東郷の方々は、ヨソモノと一緒に微住を面白がって、自分達も盛り上がっている様子。発起人の田中さんが地元の方との関係性を丁寧に紡いできて、微住のプログラムをコーディネートしてきたんだろうな~と想像できます。
お腹を抱えて笑い合ったり、真剣な表情で語り合ったり。地元の人・微住に来た人という垣根を越えて、お互いの想いを共有しあいながら、東郷の夜が更けていくのでした。
2日目:微本づくりを追いかけて
次の日は越前東郷駅から徒歩3分ほどにある私設の有料図書室「トンデモ図書室伊藤堂」へ。空き家になっていた住宅を活用して、主に週末の金~土曜に開かれているこの図書室。ここで微住参加者による微本(びぼん)づくりが行われているとのことで、様子をのぞき見しに行きました。
微住でゆったりとした時間を過ごし、白い紙に自由に好きなものを書いて本にする。それが微本だそうです。それではさっそく伊藤堂さんの中に入ってみましょう。ガラガラガラ~。こんにちは~!
・・・と思ったら、皆さん微本づくりに集中して取り組んでいる様子。
静かにやってるし、邪魔しちゃ悪いなあ~。とりあえず座るか。よっこらしょ。面白そうな本がいっぱいあるなあ。へ~、ピカソ全集だって。あっ、ナウシカの原作漫画だ。どれどれ。
くつろいだ様子のreal local取材班(注:取材中)
はっ・・・!そうこうしているうちに微本が完成しているっ!見せてくださーい
さすが墨絵アーティストの上田さんは絵で表現。一方、想いをエッセイ風の文章にしたためる方も。それぞれ個性が出ていて面白い!今後も微本を集めて、いずれ貯まってきたら本にしていくことも考えているそうです。
取材をしている間にも地元のお母さんたちが訪ねてきて、微本を見ながら「今夜の晩御飯は何しようか?天ぷらなんかもいいわね~」とワイワイしたり、台湾スイーツの愛玉子(オーギョーチー)の差し入れで一服したり、本当にこの町の人や生活を実感できる時間でした。
観光旅行でも移住でもなく、参加する方と受け入れる方の両方に、新しい価値観や関係性をもたらす微住。これから福井だけでなく日本各地に根付いていくのかもしれません。そんな微住の最新情報は、公式Webサイト「微住.com」でチェック。気になる方は、ぜひ参加してみてください!
(テキスト/黒川照太、写真/松倉健太郎)