real local 名古屋知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが? - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?

「real local名古屋」運営メンバー紹介

2020.09.21

自分のまちのことを胸を張って好きと言えない。外から来た友達を案内したいと思う場所もない。
名古屋に暮らす人の多くが自分のまちに対してそう感じていることに気づいたのは、いまから10年あまり前のこと。その頃、私自身もまた同じように、自分のまちへ特に愛着を感じることなく過ごしていたように思います。
名古屋には本当に魅力がないのだろうか?
改めて丁寧にまちを見つめ直してみると、そこには古くから愛され守り続けられてきた、このまちならではの「たからもの」がいくつも散りばめられていることに気づきました。ただ、それらは私たちにとってあまりにも当たり前すぎて、本来の価値が見えなくなっていただけだったのです。

知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
ポートビルの展望台から見下ろす名古屋港の風景。水族館、南極観測船ふじなどの見所があり、海風に吹かれてのんびり散策するのにおすすめのスポット。
観光地も少なくいまひとつ魅力に欠けるまち・名古屋。そんなイメージを覆したい。

生活に不便は感じないのに、名古屋に暮らしている人たちはなぜか自分のまちを誇れない。そんな現状を変えたいという気持ちが芽生えたのは、当時、まちじゅうをキャンパスに見立て、授業というかたちでイベントを開催してまちの魅力を学ぶ「シブヤ大学」の姉妹校、NPO法人「大ナゴヤ大学」の立ち上げに参加し、運営に関わったことがきっかけでした。

名古屋に暮らす自分たちがまちの良さを見直し、市民の「まちへのプライド」を取り戻したいという思いを胸に、2010年、大ナゴヤ大学の運営メンバー数人と「なごやのたからものプロジェクト」を立ち上げ、従来の観光ガイドブックとは違う、なごや案内本の出版を企画しました。
地元で愛され続ける老舗の数々とそれを守る人々、歴史的価値を誇る建築、まちのあちこちで鑑賞できるパブリックアート、そして名古屋独自の食文化など。それらをひとつひとつ丁寧に取材し、企画から約一年の制作期間を経て、地元の文化を愛する人たちの思いが詰まった『なごやのたからもの(※1)』(リベラル社)が完成。その制作プロセスは、まさにまちの「たから探し」そのものでした。

知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
名古屋のまちを歩いて見つけたたからものたちを詰め込んだ渾身の一冊『なごやのたからもの』。
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名古屋の喫茶文化を象徴する名店「喫茶ボンボン」。取材記事は『なごやのたからもの』の冒頭に。

発売直前に起きた震災がもたらしたローカルへの意識の変化

ところが、発行日直前に東日本大震災が発生。本は予定より一週間ほど遅れはしたものの無事に発売することができましたが、未曾有の災害は、当時、人々が少しずつ見直しはじめていたローカルの価値を再認識させ、地方再生の意識を一層高める大きな契機となったのです。

知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
地元のメディアで本をPRしたときの様子。県内各地の名物を集めて。
知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
北川民次原画によるモザイク壁画。名古屋のまちにのいたるところで鑑賞できるパブリックアートの案内も掲載。

あるがままの姿にこそ本当の感動がある!そこに気づいたテレビ業界での経験

私自身のこれまでを振り返ると、平成が始まる頃に社会人になり、20年以上にわたってテレビ番組の構成作家として主に地元の情報番組や全国各地への旅番組などの制作をしてきましたが、テレビというメディアの性質上、地域や人の魅力をありのまま伝えることの難しさを痛感する20年だったように感じていました。

一見、目立たず派手でなくても、人やまちのすべてに唯一無二のドラマがあります。だからこそ凝った演出に頼ることなく、あるがままの姿を取材し正直に伝えたい。そんなことを考えていた中で、同じ想いを持つ仲間たちとの出会いによって実現できた『なごやのたからもの』の出版は、私にとって大きな意義のある取り組みとなりました。

知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
出版を記念して開催した「なごやのたからもの展」では取材のオフショット写真などをパネルにして展示。
知るほどに味わいが深まる名古屋 この本を携えて、まちの宝探しはいかが?
名古屋の港まちづくり協議会(※3)が発行するまちのフリーペーパー『港まちポットラック新聞』。毎号、港まちに暮らす人々の何気ない日々の営みを独自の切り口で取材。

ローカルに根付いて取材を続けることの意義と楽しさ

震災後、社会全体がローカルの価値を再発見、再認識する流れが加速する中で、私の仕事も徐々にローカルにまつわる取材がメインに。「SOCIAL TOWER PAPER(※2)」,「SNUG CITY NAGOYA(※4)」,「ソトコト〜人が集まっている場所2020(※5)」のお仕事に関わってきました。中でも、名古屋の港まちづくり協議会(※3)が発行するフリーペーパーの制作は10年前から継続中。毎号切り口を変え、まちの人々の暮らしぶりや港に滞在して制作や展示を行うアーティストたちの活動などを紹介しています。

「まち」はそこに関わる人々の意志でできている

ローカルの取材を通して見えてくる「まち」の本質は、結局「人」そのものだということを学びました。テーマが違っても、またどんなまちであっても、まちをつくっているのはそこに関わる人々の意志にほかなりません。そのことに気づかされるたびにいまでも新鮮な感動を覚えます。まちを見つめ、伝える活動を今日まで地道に続けてこられたのは、シンプルに「人」が好きという気持ちが基本にあるから。人に出会い、互いに心を開き、思いに触れることの素晴らしさに感謝しながら、これからも素直な姿勢で誠実に地元の誇りを伝え続けていきたいと思います。

 

参考
※1『なごやのたからもの』http://list.liberalsya.com/?eid=2
※2『SOCIAL TOWER PAPER』 http://socialtower.jp/about/
※3「港まちづくり協議会」 https://www.minnatomachi.jp
※4「SNUG CITY NAGOYA」http://snug.city.nagoya.jp
※5『ソトコト〜人が集まっている場所2020』 https://sotokoto-online.jp/feature/56