地に根を下ろしながら、しなやかに。「四知堂 kanazawa」始動。/グランドオープンに向けてスタッフ追加募集中。
人材募集
以前reallocal金沢で求人募集をしていた「四知堂 kanazawa」(≫当時の求人記事はこちら)。当初は2020年初夏のオープンを予定していましたが、COVID-19の感染拡大により、延期を余儀なくされていました。
台湾との行き来ができない状態は続き、メニュー開発やスタッフの台湾研修も難しい。そんな中、8月に入って「まずは台湾屋台POP-UPとして四知堂 kanazawaをオープンさせます」と塚本さんから一報が入ります。(≫塚本さんの紹介記事はこちら)
コロナ禍の中でどんな考え方の変化や判断があったのか、オープンしたばかりのお店を訪ねました。
日常の一部となった台湾屋台のように。
「今やっている台湾屋台POP-UPはあくまでも“イベント”という形式をとっています。ここで提供しているメニューは台湾のストリートフードであって、本来ディナーとして提供する『四知堂』の味とは違う。けれどまずは序章というか、軽快にメニューをだしていきながら、台湾の空気感を表現できたら」と塚本さん。食の可能性を探求する夜の営業とは別に、朝昼は台湾屋台の魅力を伝えたい、というのは当初から構想としてあったそう。
「朝寝ぼけながらビーサンで屋台に出かけて、鹹豆漿(シェントウジャン)や豆花(トウファ)を食べる。もしくは出勤前の急いでいる時間にドリンクだけ買って行く。台湾の屋台は日常の一部になっていて、その在り方に憧れて。だから僕らも、尾張町の一角の新しい朝の風景として、地域に定着していけたら」
飲食店のあり方が、もう一度問われている。
予定とは異なる形で船出することになった四知堂 kanazawa。けれど「地元の人に向けて店を始められたのは、かえってよかった」と塚本さんは振り返ります。
「飲食店のあり方というものが、今もう一度問われていると思うんです。コロナ前の金沢には、インバウンドの海外ゲストや観光客が当たり前のように連日大勢押し寄せて、その方たちを相手にしていれば商売が成り立つというところが実際あったと思う。正直、僕らだって頼りにしてなかったといえば嘘になる。
けれど尾張町という歴史ある町で、さらには長年『森忠商店』として親しまれていたこの町家を引き継いで、僕らは商売をさせてもらうわけで。一番大切にすべきは、ご近所さんや地域の方、この土地に長く住まわれている方々であるはず。そういう人たちに認められる店になっていかなくてはいけないと今回改めて考えさせられました」
塚本さんはオープン前に近隣住人に声をかけ、試食会を兼ねた内覧会も開催しました。「どうなるのか気になっていた」「一度中を見てみたかった」という声も多く、好評のうちに二日間が終了。
「町の皆さんも、この建物のことを気にかけてくださっていたようです。この場所にずっとある建物だから、入居するのが誰でもいいわけではないというお気持ちも理解しています。その想いに対して、僕らもきちんと応えたいと考えています。
本来であれば夜の営業で使用する予定だった空間で、建物のオーナーである森忠商店さんのラベル展示を開催しているのもその一つ。この建物や地域に対しての“敬意”を、何かの形で表したいと思ってオープン記念の展示を企画しました」
地域の財産を引き継ぐ者として。
その“敬意”は、建物の随所にも感じられます。「そんなに以前と変わってない…?」と思うほど、リノベーションのギラギラとした主張がなく、元のつくりを生かしたとても自然な改修。
窓枠や照明など、もともと森忠商店の“チャームポイント”であった意匠もそのまま引き継がれていて、これらが台湾のテイストとしっくりマッチしているのには驚かされます。
「見た目はあまり変わっていないように見えるかもしれないけれど、実は見えない部分の修繕に相当お金をかけています。内装を商用にリノベーションするだけなら、ここまで時間も費用もかけなくてよかった。物件自体は購入しておらず、賃貸でお借りしているので、自分たちでどこまで改修費を負担するかは正直すごく悩みました。けれど、今この町家を借りている僕らが建物の在り方に沿った丁寧な改修をやらないと、今後借りる人がこれ以上のことはやらないんじゃないかと思ったんです。
この建物は地域にとっての財産。だからこそ、ちょっと踏み込んででもやらないといけないと思ったのです。自分たちが関わったことが“結果としてよかった”という風になったら嬉しい」
やっぱり人は、美味しいものを食べたいと思うから。
屋台営業は好評で、入口の扉を開け放った風通しの良い半分屋外のような空間で、サッと食べて立ち去るイートインスタイルも定着しつつあります。夜のディナー営業も、今年の冬以降に照準をあわせて静かに準備が進行中。
「シェフが夜営業の準備にかかれるように、キッチンスタッフの追加募集をしています。今後は通信販売なども考えているので、製造部門のスタッフも募集中。台湾の街角で見かける、おしゃべりしながらでも手は動いている女性達のような働き方ですね」
予期せぬCOVID-19の感染拡大に開店延期を余儀なくされ、「夜中に突然目が覚めることもあった」という塚本さん。けれど“出鼻を挫かれた”とは思っていない。目の前の課題を道しるべと捉えて進んでいくことは、塚本さんの生き方そのものだからだ。
「もう“元に戻る”という感覚ではなくなってきたように感じています。あとは向き合い方というか。やっぱり人は美味しいものを食べたいし、それを抑えなきゃいけない状況にストレスが溜まっているのを感じます。そういう意味では飲食店はやっぱり世の中に必要だと思うから」
とりまく環境の変化にもしなやかに対応しながら、じっくりと地に根を下ろしていく。「四知堂kanazawa」に共感する方、そして台湾が好きな方。ぜひお問い合わせフォームよりご一報ください。