芦屋に「作る」楽しみを増やす 火の果ぐらす – 芦屋の横顔 vol.4 –
地域の店
2019年秋に再び人の営みを取り戻した芦屋の石造り団地「旧宮塚町住宅」。そこに入居したテナントの紹介を通して、いわゆる住宅街というイメージとはまた違う「芦屋の横顔」を探るシリーズの第4弾。
ガラス作品制作の未経験者から上級者まで、さまざまなレベルに応じたレッスンを受けられるガラス工房「火の果ぐらす(ほのかぐらす)」のオーナー/ガラス作家 松田礼子さんにお話しを伺った。
制作に没頭できる場所を探して
ガラス工房と聞いてまず頭に浮かんだのは、数年前にひょんなことで体験した吹きガラス制作だった。ガラスをドロドロに溶かすとてつもない熱と、そのエネルギーを納めるための大きな機械。そんなイメージを持ったまま火の果ぐらすを訪れたので、ギャラリーのように落ち着いた雰囲気に少しほっとした。
松田さんによると、火の果ぐらすではガラスの粉末を石膏の型の中で溶かして成型する『キルンワーク』という技法で作品を制作するため、小さめの冷蔵庫を横に置いたようなサイズの電気炉を使用するという。恥ずかしながら、ガラス工房にも様々なタイプがあることを知った。
松田さんは、金沢卯辰山工芸工房(石川県)等これまで国内の5つの工房で研修を重ね、岡山・大阪の生涯学習教室や奈良芸術短期大学で約6年に渡ってガラス工芸を教えていたそうだ。
その傍らで自身の作品づくりにも取り組んでいて、制作現場は大阪・奈良・自宅の3箇所に分散していた。移動が多く疲れることもあり「自宅近くに制作に没頭できる場所があれば」と考えていた矢先に、旧宮塚町住宅のテナント募集を知ったという。
ハイクオリティな飲食店が多い芦屋だから
ガラス工房を開業する候補地として、芦屋という街は松田さんの目にどう映ったのだろうか。
芦屋にはガラス工房が少ない一方で、クオリティの高い料理を提供する飲食店は多い。この点に松田さんは注目し、「飲食店との交流から、食器を入り口にガラス作品に興味を持つ人が増えることも考えられる。芦屋で暮らす人や訪れる人の「食べる」楽しみと、「作る」楽しみをつなげられると面白いと思った」と応募を決めたそうだ。
確かに、料理と食器はいつもセットだ。料理人は、自慢の料理を引き立てる良い器に出会いたいと考えているだろう。また、ハイクオリティな飲食店に足を運ぶ客は相対的に目が肥えていそうだ。料理の器に興味を持つことも十分に考えられる。懇意にしている店のオーナーが選んだ食器とくればなおさらだ。
火の果ぐらすで制作できるガラス作品は、皿のように平面的なものから花瓶のように立体的なものまで幅広い。ガラスを曲げたり、立ち上げたり、熔着したりと、様々な技法があることに加え、前述のとおり石膏の型に流し込んだガラスの粒を溶かして成型するため、かなり繊細な造作も表現可能だ。
松田さんからレクチャーを受けながら制作できるため、初心者でも安心して作品づくりに取り組める。火の果実ぐらすでは全10回のレッスンを基本プランとしているが、お試しで体験してみたいという人のために、1~2回で完成させるワークショップも時折開催しているそうだ。本格的にスキルアップしたい人に向けた、1年間のレッスンプランも用意されている。
自分の光を探しに
ガラス好きにはお気に入りの「光のたまり具合」があると、松田さんに教えてもらった。その具合を自分の手で理想に近づけようと試行錯誤するのが、ガラス作品を制作する楽しみだという。
ガラス作品の制作に没頭するということは、自分の中にある「光」を探すことなのかもしれない。
どんなガラスの表情を美しいと感じるのか、どんな光のたまり具合が好きなのか。ガラスにじっくり向き合う有意義な時間を、ぜひ火の果ぐらすで過ごして欲しい。
文・写真 / 則直建都
名称 | 火の果ぐらす |
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住所 | 〒659-0062 兵庫県芦屋市宮塚町12-24旧宮塚町住宅1階4号室 |
レッスン | 講座曜日:完全予約制 講座時間:午前の部 AM9:30~12:30(3時間) 午後の部 PM13:00~16:00(3時間) *土曜日はAM9:00~12:00(3時間)毎月2回~3回開講。 *開校日はカレンダーをご覧ください。 *講座時間は準備や後片付けを含めた時間になります。 料金など詳細情報はこちら |
レンタル | 家ではできないガラスカット作業や原形づくりや石膏どりなど制作スペースとしてご利用いただけます。工房の加工機や電気炉(材料費・焼成費が必要になります)もご利用いただけます。 受講されてない方: 1時間 ¥1,300 定期受講コースの受講生: 1時間 ¥1,100 回数券利用の受講生: 1時間 ¥1,200 利用条件など詳細情報はこちら |
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