氣比さんの前で風が強くふいた -国道8号空間利活用イベント「KUKATSU」レポート
イベントレポート
2020年11月1日(日)に福井県敦賀市で行われた国道8号空間利活用イベント「KUKATSU」が行われました。「KUKATSU」についてはこちらの記事をお読みください。
今回、reallocal福井チームはアンケート調査のお手伝いをしながら、来場した方や出店者の方のお話しを伺いました。
朝ごはんはまちかどのパン屋さんで
快晴。やや風強し。
福井市から車で約50分。会場近くに車を停めて、氣比神宮前の受付に向かいます。
その前に朝ごはんということで、前から敦賀の人たちに「おすすめだよ」と言われていたフジパンさんに立ち寄りました。
昔ながらのまちかどのパン屋さん、フジパン神楽売店さん。
総菜パンだけではなく、おにぎりやお昼のちょっとしたおかずにぴったりの惣菜がショーケースに並びます。「写真を撮らせてもらっていいですか?」と声を掛けるとお母さんが気さくに応じてくれました。「朝7時からやってるんだけどね。お客さん7時前に来ちゃうのよ。」とのこと。うーん、これは近くにあったら通っちゃうぞ。
氣比さんにあいさつをして1日をはじめよう
氣比神宮前の受付で、連絡先の記入をして、検温とリストバンドを受け取ります。
今回の「KUKATSU」でアンケートやゴミ拾いのボランティアを行っていたのは、「THAP(タップ)」のみなさん。長年敦賀でボランティア活動を続けているNPO団体です。今回はスタッフジャンパーをお借りしました。このジャンパーを着ていたら地元の人たちに「おお、碇さん(※団体の顔の方)とこやな。元気か?」と声を掛けられました。敦賀に根付いている団体さんだということを肌で感じます。
始める前にと、氣比神宮にまずはご挨拶。
ここ敦賀では氣比(けい)さんと呼ばれ親しまれている神社です。歴史は神代にまでさかのぼるというのだから、挨拶せねば失礼にあたるということでまずは参拝してきました。今日、1日よろしくお願いしますとお参りすれば、すがすがしい気分に。良い1日が始められそうです。
4つの社会実験イベントと2つの連携イベント
「KUKATSU」では、国道8号の4車線から2車線削減に伴って創られた歩道の公共空間を使って、今回4つのイベントが社会実験として同時開催されました。
OSANPOSANDOU(マーケット)、レストランバス、ON-FES(音楽ライブ)、FOOD–FES(飲食店ブース)の4つで、出店者数は30程、ライブ出演者は14組程です。また、併せてけひさんアートマルシェ、氣比神宮の杜-未来へのa・ka・ri(エコキャンドル)の2つの企画も行われました。
今年は毎年9月に行われる敦賀まつり(通称けいさんまつり。氣比神宮の秋季例大祭)がコロナで中止だったこともあり、午前中から「待っていました。」とばかりに大勢の人たちが来場!敦賀市の公式発表では7,000人の方がいらっしゃたそう。
話を聞いていくと、大半は敦賀市民の地元のみなさんです。久しぶりのまちなかでの大規模なイベントに家族や、友人たちと連れ立っていらした方が多く、お目当ての出店者さんや音楽ライブを聴く方であふれていました。マスク越しでしたが、来場したみなさんが久しぶりの屋外のイベントを心待ちにしていたのがうかがえます。
敦賀人の横顔をさぐる
インタビューを行っていると、沢山の人たちが色々なアイディアや意見を伝えてくれました。話していて感じたことは、よくお話ししてくださる方が多いということ。自分の考えていることをご自身の素直な言葉で話してくれました。
福井の人って、思っていることを口に出さない方が多いなと思っていましたが、敦賀の人たちはさっぱりした口調でどんどん話をしてくれます。古くから海からも陸からも、交通の要所として開かれていたことも敦賀の人の性質に現れているのかもしれません。あとはイントネーションが関西寄りということ!同じ福井と言えど異なる文化圏です。
来場した方、商店街の方の声
「いろいろな角度から敦賀のものに触れられるから、こういったイベントがあるととても良いわね。」と言ってくれたのは元気な女性。「私は歌を歌うから、音楽のイベントがもっと増えると嬉しいわ。」パキスタンから数カ月前に敦賀に来たという従業員の方たちを連れて色々な出店を楽しんでいらっしゃいました。
「フードフェスの取り組みはよいけれど、買ったものを排気ガスの当たらない景観の良い場所で食べたいね。」と言ってくれたのは、大阪から来た男性。道路関係の仕事をしているとのことで、新しくなった道の活用方法を実際に見たくて来場したとのこと。「思った以上の人出で驚きました。新しい道路に表記されている自転車ナビライン(車道に書かれた青い矢印)を知らない人も意外と多いので、交通ルールを教えるイベントを開催して、正しい道路の使い方、新しい空間の楽しみ方をみんなが知れるといいですね。」
地元の商店街の方にもお話しを伺いました。福井県内で初めて洋楽器を扱い始めたという老舗の楽器屋オリエント商会さん。「若い世代と今までがんばってきたここに暮らすシニア層が一緒になるような企画ができたらいいですね。シニア層が持っている知識や経験が、若い世代にもきっと役に立つと思うから。」店内はお父様がつくられた精巧な模型が展示されています。
今回この社会実験に併せて、普段の日曜日は閉じているシャッターをあけてくれているお店をそこかしこで見られました。「まだまだ現役だぞ!」という底力を感じさせてくれます。
最後に伺ったのは神楽商店街に2020年6月にサロンをオープンさせた「養生デザイン」さん。理学療法士と養生薬膳アドバイザーのユニットのおふたりです。当日は養生みくじという自分の身体のセルフチェックのできるおみくじを用意されていました。「今回どのカテゴリーにみんなが興味を持ってくれたのか知りたいですね。」中庭の縁側でお話しを伺います。「僕たちは身体のことをみなさんにお伝えしていますが、大きく人出の動くイベントはそれだけだと一過性の盛り上がりになってしまう。今回のような実験をふまえて、考察を繰り返し、傾向をつかんで、敦賀の商店街にとって良い方向性を見出していければなと。盛り上がってよかったねで終わらせる時代ではなくなったと思います。」
氣比さんの前で風が強く吹いた
あっという間に1日の社会実験が終了。
事前の告知タブロイド紙で取材した人たちにも所々で顔を合わせることができました。みなさん良い顔でこの日を迎えられていました。
氣比神宮の鳥居の目の前を国道8号が通る。今回の整備で、車道が減り、氣比神宮前に小さな広場があらわれました。鳥居の内から外を眺めれば、国道8号と神楽通りが参道の体をなしています。きっとここは神様に守られる場所。長い間ここで商いをされている商店街の人たち、新しく入ってくる人たちを氣比さんは温かく見守ってくれるでしょう。
今回の社会実験国8空活「KUKATSU」は、最初の一歩。
神楽の風が強く吹いて大きく暖簾をゆらします。これが一度きりの名もなき風になるか、潮が満ちた時に吹く時津風になるかはこれから。敦賀の商店街から目が離せません。