【福島・郡山】なりたい自分を決めない ヘアメイク アーティストSanaEさん
気になる人
今回お話を伺ったのは、郡山市出身でフリーランスのヘアメイクアーティストとして活躍するSanaEさん。福島、関東、関西を拠点に、いわゆる「メイクさん」と呼ばれるメディアの仕事から、一般の結婚式や諸記念日撮影のヘアメイクまで幅広く手掛けています。 そんな彼女の仕事に対する想いを様々な角度からお聞きしています。 ヘアメイクアーティストのSanaEさん(以下、さなえさん)。ヘアメイクの依頼は男女問わずあるそう。
ここで何ができるんだろう
――まずヘアメイクのお仕事に興味を持ったきっかけと、ヘアメイクになるまでの経緯を教えてください。
母が美容師で小さい頃から母が働く美容室に遊びに行っていたので、美容関係のお仕事は自分にとって身近な職業で、自然と志すようになりました。 最初は結婚式のヘアメイクさんを目指していて、その上で幅広い経験を積むために東京の美容学校を卒業して、原宿の美容室でアシスタントとして働き始めました。 でも休みなく働き続けた結果、体調を崩して、入社して数ヶ月で福島に戻るしかなくなって。10年くらいは東京のサロンで働くつもりだったので、正直戻ってきたときはこれからどうしようって思ったし、華やかな世界からの落差をかなり感じました。ここで何ができるんだろうって。
お母さんは郡山の美容室で約50年働いているそう。
その数年後、郡山の美容室で働いていた頃にちょうど震災に遭いました。その美容室は、起業や独立をしている若い女性のお客さんが多くいらっしゃっていて、年の近いお姉さんたちが震災直後の混乱の中でもいきいきと活動している様子を間近で見ていました。 当時はいろんな情報が錯綜していて怖い話もたくさん聞いて、「自分の人生短いかも、回り道している場合じゃない」って思うようになったんです。 じゃあとりあえずヘアメイクになろうと美容室を辞めて。ヘアセットサロン、写真スタジオ、結婚式場…いろんなバイト掛け持ちして、ひたすら現場に出て独学でヘアメイクに転身しました笑。
幅広くこなせるヘアメイクになりたい
――すごい行動力ですね…!現在は福島だけに留まらず活動しているとお伺いしましたが、具体的にはどのようなお仕事に携わっているのですか?
広告、メディアなどの現場から一般の方の結婚式や諸記念撮影まで、幅広くやらせていただいています。女優さんやアーティストの専属とか、記念撮影専門のヘアメイクさんも多くいますが、私はお声がけ頂いたお仕事は全部やりたいと思っています。 いまは月1くらいで福島での仕事を頂きつつ、メディア関係の仕事をもっと学びたくて関東関西を中心に動いています。福島だとこれまで築き上げてきた関係性があって、そのご縁でお仕事を頂くことが多いので、慣れた環境でよりパーソナルな部分まで理解しあって作品を作っていくことができます。関東関西では仕事の幅が広がる一方で、初めての現場でどれだけできるかが試されます。 ヘアメイクは「何でもやさん」と言われることが多い職業なので、現場の雰囲気づくりやモデルさんに対する気配り、円滑な進行のための撮影の補助まで、ヘアメイク以外の仕事も卒なくこなす必要があります。地域によって求められる役割が変化するなという印象です。それぞれの良さがありますね。 撮影現場に持って行くメイク道具の一部。現場ごとに中身は入れ替えるのだそう。
――人と関わる機会が多いご職業ならではの苦労もあるのではないですか?
現場ごとにいろんな人に会えることや、初対面の人と一歩踏み込んで深いレベルでお付き合いできることがヘアメイクの仕事の魅力であり難しさだと感じています。 特に地方だと限られたコミュニティのなかでの関係性が大事になってくるので、少し前までは人間関係に悩んで仕事が行き詰まることもありました。 今はようやく自分と違う人がいるんだって根拠を持って納得できて、感情に振り回されるのではなく客観視できるようになりました。人との関わりが必要不可欠なところに身を置いているからこそ、人を正しく思えるように意識しています。 さなえさん自身が人間関係に悩んでいたときに、DNAを使った特性分析を学び乗り越えられた経験から、現在はDNA歴史心理学アドバイザーとしても活動している。
場所は関係ない
――なるほど。ヘアメイクのお仕事は映像や作品を創り出す側。クリエイティブで都会向きな印象があるのですが、さなえさんはこのお仕事をする上で「地方特有の難しさ」を感じたことはありますか?
私はクリエイティブなことをするのに場所は関係ないと思っています。クリエイティブなものって業種や扱うものによって全然変わってくると思いますが、ヘアメイクにおいては必ずしも洗練されたものとかデザイン性があるものとかじゃなくって与えられたものを最大限活かすことだと捉えています。 例えば中年男性の選挙ポスターを1枚撮るために、その方の魅力をどう出せるかカメラマンさんと一緒に討論しながら作っていくお仕事とか。 私は人とか作品の良さを活かすためのヘアメイクが好きだし、クリエイティブだなって思うんです。 逆に自分の自己満で作るメイクとか、型にはめるメイクは苦手で…笑。自分が関わることによって活きるというか、0➡1じゃなくて5くらいを8にできるのが好きなんです。心と技術を使って、クライアント側の意見と、モデルさん自体の魅力を上手に両立させられるように、常に試行錯誤しています。 「結婚式のお仕事では、『料金は関係なく私にお願いしたい!』って指名を頂くことも増えました。料金以上のものをお返ししようって思うし、モチベーションにも繋がります。」と話す
――最後に今後の展望を教えてください。
私は数年前から「なりたい自分や、やりたい仕事を限定しないこと」を決めいています。自己実現だと限界があると思うし、例えば「トップヘアメイクアーティストになりたい」って目標をひとつ立てるとそれに沿わないものを排他してしまって、可能性が狭まる気がするんですよね。 これからも、時代と周りの環境に合わせて軽やかに、自分や誰かの為になることをやり続けたいです。 取材中も素敵な笑顔が印象的でした!
今回さなえさんの気取らない人柄とお仕事に対する考え方に触れて、ヘアメイクは「人に寄り添う」温かいお仕事なのだと感じましたし、さなえさんを指名したくなる気持ちがよくわかりました。 みなさんも機会があれば、大切な日をヘアメイクで彩ってみませんか?