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TOP » 山形 » 【山形/連載】穏やかな休日のための音楽３

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「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のあるアーティストとそのアルバムを紹介しています。

さて、少々画質は悪いのですが、まずはこちらの動画を見て下さい。

演奏しているのは、ブラジルのミナス・ジェラエス州の州都、ベロ・オリゾンチに拠点を置く、ブラジルのカルチャーを牽引する人気インディーロックバンド「パト・フ（Pato Fu)」で、曲は「Made in Japan」というタイトルです。日本をモチーフにした動画ですが、歌っているのはこのバンドの女性リード・ヴォーカル、フェルナンダ・タカイ（Fernanda Takai）。おそらく彼女は、現在のブラジルにおいて、音楽家として最も著名な日系人と言って良いと思われます。

フェルナンダ・バルボサ・タカイは1971年、ブラジル北部のアマパー州セーハ・ド・ナビオに生まれました。前述のパト・フのヴォーカリストでありシンガー・ソングライターです。父は日本人、母はポルトガルの家系で、彼女は日系３世。現在はミナスジェライス州、ベロ・オリゾンチに在住しています。1993 年にミナス・ジェライス連邦大学を卒業、その前年1992年にパト・フに参加しました。現在はパト・フの一員としての活動に並行して、ソロ・アーティストとしても活動しています。数多くののアルバムやD V Dをリリースし、ゴールデン・ディスクも多く、ラテン・グラミー、MTVブラジル、マルチショーなどで高く評価されているアーティストです。また、日本、イギリス、ポルトガル、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン、アメリカなど国外でも多く公演を行っています。2009年には元ピチカート・ファイブの野宮真貴、2012年にはポリスのギタリストのAndy Summersとのデュオによるアルバムをリリース、国内外で大きな反響を巻き起こしました。

野宮真貴と。

Andy Summersと。

そんなビッグ・ネーム、フェルナンダ・タカイが、山形公演を行ったのは2016年のことでした。実はその年、私はプライベートな事情があり、ライブを一切主催しないと決めていた年でした。このため当初山形公演のお話をいただいた時は、残念ながらお断りをするつもりでした。しかし招聘元の方からプロモーションなので観客は少人数でも良いというお話しがあり、また私どもの会の若い人たちがライブの運営をしてくれるということで、どうにか実現に漕ぎつけることができました。結局30人程度の観客で、ある和食店で開催するという、通常はあり得ない極めて贅沢な公演になったのです。

2016年のツアーのフライヤー。

山形公演の模様。左は夫のジョン・ウリョア。

ライブ終了後は会場となった和食店の出汁の効いた料理をとても喜んでくれたようですし、翌日は山ブラの若者たちが山寺などに連れて行ってくれて、わずかではありましたが観光も楽しんでいただきました。見た目はいかにも日系人という容貌ではないのですが、彼女の思慮深い立ち振る舞いや、輝く瞳と視線の奥に感じられる謙虚さや繊細さに、やはりどこか日本人の血を感じるのです。私の思い込みかもしれませんが。

今回取り上げるのは、フェルナンダ・タカイの、2008年の初ソロ作品で、「彼女の瞳が輝く処（Onde Brilhem Os Olhos Seus）」というアルバムです。本作は、彼女の父が好きで聴いていて、彼女もまた子供の頃から親しんでいた、「ボサノヴァのミューズ」こと故ナラ・レオンの好んで歌ったレパートリーを、全く新しい解釈で再構築した作品で、ナラ・レオンと自身の父に捧げた作品です。遊び心がギュッと詰まったスーパー・ポップなアレンジと演奏は、主として夫ジョン・ウリョアの手によるもので、ボサノヴァやサンバのリズムが全く使われていません。そしてなんと言っても彼女の歌が素晴らしい。吐息のように控えめで、壊れそうにデリケートな、包み込むような歌声に、彼女ならでは、彼女にしか表現できない「郷愁」が溢れています。

穏やかな休日にぜひゆっくりと聴いてみてください。