山形移住者アンケートからの分析・考察・提言(前編)
移住実態アンケート調査
「山形市に移住した人たちの声をデータ解析してみたい」。山形大学4年生金子泰地さんがreal localを通じて独自に呼びかけたアンケート、232名の方のご協力を得ることができました。ありがとうございました。その分析と考察をお伝えするシリーズ・前編です。
アンケートを作成・収集・分析から
移住者の性質と価値観を明らかに
こんにちは、リアルローカル山形にインターンしている山形大学理学部4年の金子泰地と申します。
私はこの度、山形市に移住してきた方々に向けてアンケートを作成、収集し、「山形市の移住に関するアンケート調査データ」を得ることができました(アンケート記事についてはこちら)。
また、それとは別に、すでに全国規模で実施されていた「移住実態アンケート調査」の統計データをこの研究のために購入し、それら2種類のデータをもとに、統計処理言語の R を用いて解析を行いました。目的は、解析によって移住者の性質や価値観を明確にすることでした。
私が作成したアンケートには、232名のみなさまにご協力いただきました。お忙しい中アンケートにおこたえくださった方がた、また拡散をサポートしてくださった方がたには、この場をお借りして改めて深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
私は今回のデータ解析を行ってみた結果、大きく分けて 3 つの「考察」を導き出すことができました。そこでその3つの「考察」を、その背景や裏付けを含めて紹介していきたいと思います。そしてそこから、勝手ながら、山形市の移住政策への提言をしてみたい、と思います。
今回はその前編となります。では、よろしくお願いいたします。
まずはじめに、今回私が行ったアンケートは以下のようなものでした。
・対象:山形市以外の都道府県市町村から山形市に移住して現在も住み続けている方
・アンケート実施期間:2020/12/22~2021/1/15
・得られたサンプル数:232
・調査方法:Google フォームにて集計
・調査内容:基本属性、山形市に移住する前の価値観や実際に住んだ後の価値観、新型コロナ ウイルスの流行に関する価値観の変化について問うもの
では早速、いきましょう。
【子育て世代の満足度に注目】
まず、現在の生活の満足度が高い人と低い人にはどんな違いがあるかを見つけるような解析を行うことにしました。その結果、生活の満足度を説明する寄与率が高いものは上から順に
〈年収満足度〉、〈年齢〉、〈現在の体調〉…etc.
となることが わかりました。年収の高い人、体調の良い人は生活満足度が高い、というような相関が見て取れるということです。ここで注目すべきは「年齢」です。
図 1 は日本全国の人を対象に満足度を調査したアンケート結果です(「『満足度・生活の質に関する調査』に関する第1次報告書」内閣府/2020.5より)。
引用元:https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf
暮らしの満足度というのは、全国的に見ると、10代から減少していき、60歳以上の世代で 満足度が高くなる傾向がある、ということがわかります。
それに対して図 2 をご覧ください。これは今回のアンケートから得られたグラフです。
この真ん中にある、山形市の年齢別の満足度の高さを示したグラフからは、「山形市は、20代後半から40代ぐらいの子育て世代の満足度が高い」ということを読み取ることができます。これは山形市の特徴を示すもののひとつであると言えます。
【移住しやすい人とは】
続いて、移住しやすい人の特徴はなにか、を明らかにするための解析を行いました。実際に移住した人としていない人には、どの変数での寄与率が大きいかを調べています。
これを行った結果が図 3 のグラフです。
移住する寄与率が高いのは順に
〈職業〉、〈年齢〉、〈婚姻状況〉…etc.
となりました。職業的に見ると、専業主婦、パート・アルバイトといった方たちが移住しやすいことがわかります。また、学生や、弁護士や税理士などの専門職も移住する傾向が高いことがわかりました。年齢で見ると、30歳すぎの世代までの移住率が高いという結果が出ています。また、未婚者よりも既婚者の方が移住する傾向が強いこともわかりました。
まとめると、「一般的に、30歳過ぎまでの既婚者が移住しやすい傾向にある」ということがわかります。子供が小さいうちの方が、移住という選択肢を選びやすいからかもしれません。
以上のようなことから導き出す「考察」のひとつ目は以下のようなものです。
【考察1】山形市は、まだ子どもの年齢が低い子育て世代の満足度が高いまちである、と考えられる。
2021.3.10
山形大学理学部4年
real local山形 インターン 金子泰地