福岡県八女郡広川町 絣の申し子「藍・森山」
ローカル気になる人
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甕の中は、「一寸先は闇」って感じです・・・。
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こんにちわ。
1年前に取材した記事を今ごろになってアップするでお馴染みの重(しげ)です。
何故そんなにタイムラグが出来てしまったのか?
ズボラだからです。
じゃなくて、その答えが出たので、今回めでたく記事が出来ました。
詳しくはのちほど。
さて、「絣の申し子」と題した今回は、「久留米絣(くるめがすり)」にまつわる青年のお話しです。
あの日は確か、
青々とした緑が広がり生命が生き生きとする初夏。
の、なぜか30度を超える鬼の猛暑日でした。
福岡市から車で1時間30分ほど、夏に向かって車を走らせると目的のまちにたどり着きます。
そこは、八女郡広川町。
住宅や農地が続く細道を、ナビに言われるがままズイズイ。
じきに看板が見えてきます。
「藍・森山」(あい・もりやま)
車を停めると風情のある建物の奥から、笑顔の青年が。
キンパツなのに柔らかい物腰。(失礼)
彼こそが今回の主役の森山浩一さん。(現在29歳)
実は、久留米絣の職人家として、江戸時代末期から代々続く「森山絣工房(藍・森山)」の6代目。
今回のreal localは、
伝統工芸の後継者である森山さんに、近年注目されている久留米絣についてお伺いしました。
ただし!
わたしのお目当ては「絣」ではなく、「藍染体験」です!
一度やってみたかった藍染体験。
「ハンカチやTシャツを用意してくれて手ぶらで体験できる。」
という噂をゲットし、ズボラがまんまとやってきました。
それでは早速行ってみましょう。
最初に事務所で受付をします。
絣、藍染の歴史と、どうやって染めるのか、今日はどういう模様をつくるか、
などのレクチャーを数分受けて、お目当ての工房へ移動します。
すご。
なんですかこちらの建物は。
「たしか大正時代に建てられた建物で築100年を超えているとか聞いてます。」
ざっくりですね。
さっそく中へお邪魔します。
こ、これは!
かっこいい・・・。
渋すぎる。
独特の匂いと湿度の工房内。
見たこともないような設備と器具が所狭しと並んでいます。
そして奥には、甕、カメ、かめ!
-なんでこんなにたくさん甕があるんですか?
「4つの甕を一組にして、ローテンションで染めていくんです。
一つの甕で漬けたら、次の甕に移動して、また次に、と順々に漬けていくんです。」
「一番濃厚に染める時は40回くらいつけますよ。」
-染める染めると言ってますが、そもそも「藍」ってなんですか?
「まず、染料のことを「すくも」と言います。藍を発酵させてつくった染料です。」
-発酵ってことは生き物なんですか?
「藍はそもそも植物なんですよ。
葉が大きなミントみたいな形してます(笑)」
はあ~~(感心)
-甕ごとに色が違うのはどういう差が出るんですか?
「これは濃度と、新しいか古いかの違いです。
染める時は、
薄いところから濃ゆいところに徐々に移動して染めていきます。
黒に近い色に染める時はずっと濃ゆい甕でやりますね。
ちなみに、古いやつは薄く染まるんですけど、
新しいやつはめっちゃ元気よくて濃く染まるんですよ。」
「自然繊維だと色が入りやすいですね。あとは麻もいいです。
化学繊維だとちょっと色が入りにくくて、Tシャツのステッチとか白く残ったりもします。」
「合計八回くらい染めるんですけど、
三回目くらいから漬ける部分をずらしていくとグラデーションになります。」
「じゃあ、早速やってみましょうか!」
ハンカチを甕につけて、スーッと引き上げます。
「一度染めたら次の甕は変えたほうがいいですよ。個体差があるので。」
ハンカチをつけて、水で洗って、またつけて、を繰り返します。
「移動の時は気をつけてくださいね~。
たまに甕に落ちる人いるんで!
こないだも新聞記者さんが落ちてました。(笑)」
おいおい森山青年。ニコッじゃないよ。
改めて甕を覗いてみると・・・
甕の中は、一寸先は闇って感じです・・・。(語彙力)
森山さんの軽快なリップサービスで、
工房内は和やかに、でもとても集中した時間が流れます。
風情のある工房内。
木枠の窓からは、いくつもの光が筋状に差し込んでいて不思議な空気。
外との境界線が曖昧な感じ。
ノスタルジックなアニメを見ているかのような、牧歌的だけど、凛とした空気が漂います。
こんな空気感、なかなか触れることは出来ません。
これだけで来る価値アリですね。
藍染は順調に進み、甕から甕へ、移動させる度に少しずつ出来上がっていきます。
染まり具合にもよりますが、合計8回ぐらい染めます。
このあとは干す工程。
乾くまで時間があるので、森山さんに色々とお話しを伺ってみました。
Q 藍染のワークショップをやるようにしたキッカケは?
「数年前、ある大学から授業として依頼されて始まりました。
それから色々な高校や大学の授業の一環として、今も年に数回お越しいただいてます。
せっかくなので、友達や周りの人たちにも体験して欲しいなと思って、ワークショップとして始めることになりました。」
Q 他の場所やイベントでもやってるんですか?
「藍染は基本的にここでしかできないんですよね。藍を持ち出すのができないので。
一回やってみようと思って、バケツ2杯分くらい持ち出してみたんですけど、つけてみたら2~3回しか色入んなくて、やっぱりダメでした(笑)」
「逆に、久留米絣の手織り体験はイベントとかでやってますよ。鶴の恩返しみたいなイメージのあの感じです。」
Q 家業だとお伺いしましたが、
小さな頃から「この仕事をするぞ!」って思ってましたか?
「ずっとそれは思ってましたね。それでファッションの専門学校に行きましたし。」
おお、しっかりしてるな。。
「そういう業界に入ったらファッション関係の人と繋がれるかなと思って。」
したたかだな。。。
「結果としてファッションのことに詳しくなれたのは本当に良かったですね。」
Q 近年、BEAMSと久留米絣のコラボ展開もあってて、これからなのかなと思ってますが、どうなんですか?(ざっくり)
BEAMSさんの件はそもそも県から話があって。
福岡県が7産地っていう7つの産地をつけて、小石原とか博多織とか伝統工芸を展開しようという事業があるんですよ。
その中からまずは2つが選ばれて、2019年に絣はBEAMSさんからコラボしていただきました。
コラボをきっかけに、多くの人が久留米絣のことを知ってくれてたら嬉しいですね。
Q その久留米絣の特徴ってなんですか?
「もともとは農家さんが農作業着として着ていたから、とっても生地が丈夫なんです。
絣着てくるお客さんは年配の方が多いですが、母親から譲り受けたものと言われる方もいらっしゃいます。」
「4~50年前のものを着てても状態が綺麗なことが多いです。
3世代は着れる。色が褪せない。ガシガシ洗える。などが特徴でしょうか。」
「それぞれの工房で特徴というか棲み分けがあって、ウチは小柄が特色なんです。
ただ、小柄は手織りじゃ無いと出来ないから大変で、だんだんと減っていってしまいました。」
「ちなみに昔は小柄は男性の柄だったんですよ。」
へええ〜。
「やっぱり若い世代にもこういったことを伝えていかないといけないな、と思ってます。
20~30代の人にまずは絣っていうのを知ってもらって、後々ファンになってもらうイメージをしています。」
Q じゃあ若い人に訴求しそうな久留米絣の魅力は?藍染の魅力でも!
「自分たちが身につけるものも、大量生産、大量消費から、こだわってたり、生地から環境のこと考えたり、
特にコロナもあってだいぶ意識も変わってきたから、SDGsなどの観点からもこれからの時代の波に乗れそうな気がしてます。」
たしかに、ハンカチ1枚でも今日みたいにすごい楽しくて、個性があって、みんなバラバラで、色の深みとかも
愛着もわきますよね。藍だけに(笑)
「自分で青の服着たくなったら、藍で染めるとかになってくると面白いですね(笑)」
Q 作ってみたいものとかありますか?
「やっぱりウチは生地屋なんで、その辺は生地屋として徹していくのがいいなと最近思いますね。
服屋さんというのはプロの方がいらっしゃるので。(BEAMSさんとか清永さんだったり)
だから、コミュニケーションが重要になってきますよね。
そういう人と出会って、どういう話をして、そっからどう具体化していくのか。
Q 大事なのは、つながりですかね?
「色んな業種で同世代で頑張ってる人たちがいるので、その人らとまず何かやって、
面白いことやってるねって見てくれる人がいて、そっから一歩目入っていけたら嬉しいですね。」
「それだけのこと出来そうな技術を持ってる面白い仲間が周りにいるんですよね。
少しずつですけど、これからやっていこうかなって。」
Q 知ってもらうのは出来そうですよね。
染める作業も、ハンカチ付2000円でやらしてもらって、楽しかったし。
この光景をインスタとかで見た人は「なにそれ?楽しそう!」ってなると思うんですよ。
「そうですね。最近では、それこそインスタ見て全然知らない人も来てくれるようになってきたし、
BEAMSさんとのコラボの商品は、知らない人が買ってタグ付けしてくれたりしてます。」
「藍染体験も、やっとインスタとかWEBで発信する場が出来てきて、
最近はよく友達が来てくれるし、そこから友達が友達を連れてきてくれたり、海外から団体で来てくれたり、ワークショップの数も増えていってます。」
これは自然と友達にも紹介したくなりますよね。
休日の過ごし方としてはパーフェクトすぎる。
「あ、ちなみにTシャツは8000円です。(営業)」
ハイゼヒ。次はTシャツやりたいです。
Q 森山さんの、もしくは藍・森山の今後の展望はなんですか?
「先ほどお話しした、若い世代に知ってもらうとか、仲間と一緒に面白いことに取り組んでみるとかですかね。
他にアイデアでいくと、この工房の裏に空き家が一軒あるんで、そこをリノベしてゲストハウスにして、宿泊+藍染体験とかやりたいです。
本当に面白いかなと思ってて、今はコロナのこともあって落ち着いてるので、実は少しずつYouTube見ながら大工作業してます。(笑)」
藍泊もしくは染泊ですかね(笑)
「つくる工程とか、ちゃんと見て知ってもらえるようにして、
そこにさらに作り手の人たちが足を運ぶようになる場所をつくれたら素晴らしいかなって。」
ありがとうございます。
たくさんのお話を聞いていると、あっという間にハンカチが乾いて完成しました。
今回は、森山絣工房(藍・森山)の6代目、森山浩一さんにお話を伺いました。
文中にもありましたが、地球環境や様々な背景の中、「モノ」という価値観が変化していっているこの時代。
伝統工芸に興味を持たれている素敵な人も増えてきているように感じています。
29歳という新たな感性を持った世代である森山さん、とっても接しやすいお人柄ですので、
ご興味がある方はぜひ、体験しに行ってみてはいかがでしょうか。
森山絣工房(藍・森山)
藍染体験のご予約はこちらから ➡️ https://aimoriyama.com/
(ハイ!我ながら綺麗な記事ができました!!)
冒頭にあった、1年前の取材記事をアップしなかった理由の答えがここからです。
なんかこれって、リアルじゃないよな〜
(別にリアルローカルじゃなくても誰でも聞けるし。
ただの活動紹介じゃなくて、もっと深掘りして、その人を知って欲しいんですよね。
と、モヤモヤして記事を書かずに放置してましたスミマセン。
というわけで、
せっかくのリアルローカル、こんな綺麗な紹介インタビューでは終われません。
一年越しで、無理言って再取材をお願いしました。
伝統工芸の家の嫡男ならではの悩みや、ぶっちゃけたお金の話、森山さん個人のこと、どんなことを考えているか。
そして、金髪の真の野望とは・・・?
森山浩一さんのリアルな物語は、なんと後編に続きます!!!
屋号 | 藍森山・森山絣工房 |
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URL |
Instagram https://www.instagram.com/ai__moriyama/ |