山形移住者インタビュー 山寺・英語ガイドへの挑戦/小林雅子さん
移住者の声
#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは小林雅子さんです。
横浜市出身で、結婚をきっかけに2003年に山形へ。その1年半後には転勤で、茨城県つくば市、福島県郡山市、秋田県秋田市に住み、2015年に山形市に戻ってきました。現在は語学力をいかして、山寺の英語ツアーの活動準備に邁進中。日々の山形生活と今後の活動についてお話をうかがいました。
山形の自然に魅せられて
父方の大叔母が山形市在住で、幼少期は毎年1度くらい家族で大叔母の家を訪れていました。社会人になってからは、年に一度は蔵王にスキーをしに来るようになり、定宿としてお世話になっていたペンションで主人と出会いました。主人は山形市出身で、結婚を機に山形市に来ることになりました。
もともと自然豊かな場所が好きで、山形に越してくる前から、スキーのほかにも夏には山登りもに来て、だんだん山形の自然にはまっていきました。
引っ越してきた当初は山形弁が聞き取れず苦労しましたが、主人の生まれ育った地域に入り、親戚やご近所付き合いなどの受け皿がすでにある状態だったので、すんなり馴染むことができた気がします。
しかし、山形生活に慣れてきたのも束の間、1年半後には転勤になり、関東や東北を転々として約6年前にまた山形市に戻ってきました。3年前には家を建て替えて、少しづつ山形暮らしの足場ができてきたところです。
振り返ると、移住した直後に山形のマンドリン演奏団体に入ったのも大きかったと思います。趣味の仲間は新天地での生活の大きな支えになったので、移住してこられる方にはぜひ趣味の団体やサークルに入ることをおすすめしたいです。
自然と共に生きるということ
山形の魅力といえば、自然と一緒に暮らす豊かさがあるところ。景色の変化が楽しめたり、季節ごとに旬のものをいただく食生活があります。
なかでも山形の春は特別です。スイセンやクリスマスローズ、梅といった冬の花が、山形では一斉に春に芽吹くんです。喜びに溢れていて、心が晴れ晴れします。たしかに雪は大変ですが、冬が終わればあの春が来ると思うと頑張れるんですよね。雪をかぶった月山を見てきれいだなぁと思ったり、山菜を味わったり。春は何度迎えてもいいなぁと思います。横浜では味わえなかった感覚です。
もちろん自然には厳しさもあります。東京で勤めていた頃は、大型台風や雪の前日には駅前のホテルに泊まって定時に仕事に行くなど、すべて自分でコントロールできる前提で生きていた気がします。
だけど山形の人は、自然を前に人間ができることには限りがあると、何となくみんなが共通認識として持っている気がするんですよね。無力な気もするけど、肩肘を張らずにすむ。大雪が降って遅刻するのはしょうがないことです。コントロールできないことが普通なんだよ、と気が楽になるんですよね。自然を前に謙遜した気持ちになれると同時に、自由な気持ちになれます。
人と人とのつながり
大学は英文科卒で、秋田では国際教養大学に勤務し、留学生や外国人の先生に囲まれて仕事をしていました。思いがけず秋田で英語力が鍛えられて、6年前に山形に帰ってきました。また少しづつ山形に慣れてきたので、英語を生かして地元の役に立てないかな?と思い、国際交流協会にボランティア登録しました。勉強会をしたり通訳やイベントのお手伝いなどをする中で、山寺で日本語ガイドをやられている方とお会いする機会があり、山寺には英語ガイドがいないことを聞きました。
ちょうど同時期にお土産屋「ふもとや」の後藤麻衣さんが山寺の外国人受け入れプログラムの立ち上げ準備中とのことでご紹介いただき、現在は、その一環で私は英語ガイドの担当として関わっています。
親戚付き合いや地元の同級生同士など、人の繋がりが強いところも、横浜にはない新鮮な感覚でした。
人のネットワークの近くにいると、思いがけないところで新しいチャンスと出会えるんですよね。特に山寺の活動に参加してからは、あっという間に知り合いが増えて楽しくなってきました。
山寺の英語ガイドへの挑戦
山寺は知れば知るほど奥が深いなと思います。いまはお寺でもあるし、かつては修験道でもあり、奇岩怪石など地学から探究したり、松尾芭蕉の奥の細道から深めていくこともできる。いろんな切り口があるんですよね。登って景色を見て終わってしまうだけでは、もったいない。背景を知ってもらえたら、さらにいい経験になるだろうと思います。
英語ガイドの勉強のため、図書館で文献を見たり、山寺のお寺の住職さんからお話を聞かせていただくと、ネットでは出てこない情報にもたくさん出会えます。「みなさんにもっと知ってもらいたい!」と勉強すればするほど思います。
一方で、ガイドという仕事の奥深さも知りました。質問されたら答えられるよう、できるだけたくさんの情報を準備しておきたいのですが、ガイドは時間が限られているので、すべてを披露するわけにはきません。時間通りに頂上まで案内して、状況を見ながら適切な情報を伝える。それがガイドの技術なんですよね。
長年、山寺で日本語ガイドをされている「きざはし会」のみなさんからは学ぶことがたくさんあります。一緒に勉強させていただいたり、私たちも海外の人が興味を持つ視点を共有するなど、協力して活動を広げていけたらと思っています。
去年、英語ガイドのモニターツアーを2回行いました。1回目は山形大学の留学生に、2回目は日本在住の外国人の方4名に参加いただき、すごく楽しんで帰っていただけました。聞かれて分からないこともあったので、まだまだ勉強することはたくさんあり、少しづつバージョンアップしていけたらと思っています。
英語ガイドの初期メンバーが組成できたので、まずは運営してみるところからスタートです。英語ガイドとして長く続けるためにも、仕事となる組織にしていくことが目標です。いまはコロナであいにく外国人観光客はほとんどいませんが、この時期を使って準備を重ねて、また外国人の方が戻ってきたときに備えたいと思っています。
山寺の日本語ガイドの方には80代の方もいて、いまでも山寺を元気に登ってガイドをしていらっしゃいます。私もこの仕事をライフワークとして、山寺の名物ガイドおばあちゃんを目指していけたらと思っています。
画像提供:小林さん
取材・文/中島彩