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山形県天童市・移住者インタビュー/金 星さん「健康で笑顔になれる場所をつくりたい」

移住者インタビュー

2021.08.26

山形県天童市にあるその場所はちょっと変わっている。1階にはコインランドリーと餃子製造所とシミュレーションゴルフ場があり、その2-3階は民泊施設になっているという、組み合わせが不思議な施設なのである。そこを運営しているのが金星(きん せい)さんだ。出身は中国藩陽市。1993年に留学のために来日し、大学卒業後は医療系人材派遣会社や製薬会社などに勤務。社内ネットワークと基幹システムの構築を手掛けるなどし、現在は情報システムコンサルタントとして活動しながら、数々のユニークな事業を複合的に展開中だ。

2012年から仕事のため天童市に単身赴任し、2017年には本格移住した。「この土地に暮らそう」と思ったきっかけは、天童市の象徴的存在ともいえる舞鶴山との出会いだったそう。自然や温泉豊かなこのまちで舞鶴山に親しみながら健康な毎日を手に入れ、コロナ禍の苦しい状況の中でもポジティブな事業展開を止めることなく邁進する金さんのこれまでとこれからの話を聞いた。

 

澄んだ空気、山登り、そして温泉
天童での生活が健康につながると確信

山形県天童市・移住者インタビュー/金 星さん「健康で笑顔になれる場所をつくりたい」
金星さん。毎日登るという舞鶴山にて。

2012年の3月初めに初めて天童市に来たときは「こんなに寒いのか!」と驚きました。アパートの駐車場の雪が50cmも積もったうえに、下のほうは凍っていて、片付けるのに半日もかかりました(笑)。それまで住んだことのある東京や富山とはまるで違う日常にビックリしましたね。

このまちで仕事をすることが決まってからすぐに法人を立ち上げ、仕事と暮らしの環境づくりを始めました。私にとって、仕事は生きがいです。1日でも休むことは考えられません。その土台にあるのはやはり健康ですから、健康寿命を延ばす生き方をしたいですし、ジョギングや散歩は大切な日課です。

それで、当時借りていたアパートから近かった舞鶴山に登るようになったのですが、これが大正解。往復で1時間程度というちょうどいいスケール感の山で、歩道も整備されていて登りやすい。いくつもある登山道の全てを歩いてみました。以来すっかり魅了され、今でも毎日5時半に起きて1時間のトレッキングに行っています。雪が多い12月〜2月以外、年間で300日は登っているのではないでしょうか。とくに展望台から見る天童市の景色は最高です。雪景色、紅葉、新緑などすべての時期の風景を写真におさめるのも楽しいですよ。手が届く範囲に自然があるせいか、森林浴をしながら暮らしているような感覚があります。

単身赴任していた当時は東京との行き来が多かったのですが、天童にいるときのほうが明らかに体調がいいということにだんだん気づきはじめました。毎日の山登りと温泉と空気のよさのおかげだったのでしょう。東京生活で発症したアレルギーもすっかり緩和されました。こうした体の変化とクライアントとの契約延長を機に、2017年に天童に定住することを決めたのです。

本格的に天童に暮らすにあたりまず考えたのは、住まいと仕事場を一緒にしたいということでした。ですから物件探しで重視したのは十分な広さがあるかどうか。それで出会ったのがこの場所です。かつては1階が氷屋さんで2階3階が住まいという店舗兼住居だったそうです。希望の広さがあったことに加え、立地がとてもいいと思いました。私が大好きな舞鶴山の麓にあったのです。それが決め手になりました。

すぐ隣にはスーパー・ヤマザワがあって多くの人が立ち寄りやすいことから、ここにあれば便利だろうと、2018年からはコインランドリーを始めました。さらに、かつて氷屋さんの冷凍庫が設置されていた場所が断熱、遮音の空間だったことを生かし、シミュレーションゴルフをオープン。なぜゴルフかというと、私の趣味だからです(笑)。飲食店の許可もとって、飲食できる場所も作りました。そのスペースはミニコンサートや忘年会の場としても利用していただいています。

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コインランドリーは6時〜23時まで営業。待ち時間に隣のスーパーで買い物もできて便利。
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世界中85のコースが体験できるシミュレーションゴルフ。

2019年の冬には、2-3階の使っていない部屋を宿泊施設としてリフォームし、民泊できるようにしました。もちろん観光の方に使っていただくのもいいですが、もともとは地元の人がお酒を飲んだあとに気軽に泊まれたら便利だろうと始めました。ネットの口コミで広まったのか、2020年の3月〜6月までは満室が続いていたのですが、コロナ禍になってすべてキャンセルに…。現状は、開店休業状態が続いています。

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素泊まり1人3,500円〜。現在は客数を限定するなどしているので、利用する場合には直接問い合わせを。

集客が難しい状況になったことから、テイクアウトできるものを販売しようと、妻がよくお客さんに振る舞っていたレシピをもとに餃子の製造に乗り出しました。認知度を上げるためキッチンカーを入手し、平日はスーパー、土日は道の駅天童温泉で餃子販売をスタートしました。最近は、大手通販サイトで冷凍餃子の販売もはじめました。ぜひたくさんの人に味わっていただきたいですね。
(通販サイトはこちら

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金さんのブランド「錦餃子」は完全無添加のオリジナル餃子。地方発送も行なっている。

どうやれば一歩前進できるか
悔いのない日々をこのまちで送りたい

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私がこんなふうにいろいろやるのは、やるべきことをやらないで終わりたくはないからです。どんな人にも、必ず最後の日が来ます。そのときに「私の人生はよかった」と思えるような、後悔のない人生にしたいんです。最初この家を借りて事業をスタートするときにも、銀行から融資をもらうために決算書と計画書をまとめたり、東京のマンションを売りに出して資金調達しなければならなかったり、かなり大変な思いもしました。

そこからさらに事業拡大のための投資をしたので、借金も膨らみました。だからこそ儲からないことには意味がないと思う一方で、お金儲けだけが大事だと思っているわけでもないんです。私はこの天童のまちに誰でも気軽に訪れることができる拠点を作りたいと思ってこの事業をやっています。コインランドリー、シミュレーションゴルフ、多目的スペース、民泊という事業はバラバラではなく、根本にある思いは同じです。

私にとって祖国は中国ですが、母国は日本です。今の自分を育ててくれたのは日本だと思っています。これまで受けた恩を返すためにも「この場所に来たら、健康で笑顔になれる」と思ってもらえるコミュニティーの場を提供したい。それがいちばんの目的なんです。コロナ禍にある今、事業がうまくいっているとは言えない状況です。けれども、走り出している以上前に進むしかありません。とにかくどうやっていけば前進できるかを考えて行動するだけです。後ろには一歩も引き下がれない気持ちで日々取り組んでいます。

移住を考えている方は、ぜひ一度うちの民泊を利用してみてください。リモートワークが可能なら、仕事を持ち込んで、一週間ぐらい暮らすつもりで来てみてはいかがしょうか。朝には舞鶴山に登って、夜には近くの日帰り温泉に行きましょう。それだけで体が浄化され、健康になれるはずです。実際に体験した私が言うのですから間違いないですよ。

私は旅が大好きで、旅するように暮らしていくのが理想です。山形での事業が軌道に乗ったら、今度はほかの地域で山形の魅力を発信する側になりたいと思っています。東京、大阪、福岡などにも拠点を作って、仕事と旅を兼ねた生活をするのもきっと楽しいでしょうね。

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土日は道の駅 天童温泉。平日はおーばんなどのスーパーで販売する。

シミュレーションゴルフ、民泊、コインランドリー、餃子製造販売などを行う金星さんの事業ブランド「錦」のwebサイトはこちら
https://www.healing-forever.com/

Text:中山夏美
Photo:根岸 功

山形連携中枢都市圏移住ポータルサイト「ポータル!やまがた!」はこちら
https://www.portal-yamagata.jp/

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