「大名古屋ビルヂング」マルシェ&芝生広がるスカイガーデン
インタビュー
なぜビルディングでなく、ビルヂングなのか。そんな疑問を持った人もいるでしょうが、1965年から名古屋駅前のランドマークとして親しまれてきた「大名古屋ビルヂング」が、老朽化により新しく生まれ変わったのは2016年のこと。そして今春からは、開業5周年大規模リニューアルで続々とお店がオープンしています。特に目玉となった地下1階のリニューアルがどのようにして実現していったのか、担当した三菱地所の秦野さんに話を伺ってきました。
地元で愛されるビルヂング。
約半世紀にわたって名古屋の成長を支えてきた旧大名古屋ビルヂングは、多くの人に惜しまれながら2012年に閉館しました。
「ビルヂングだなんて古臭い」などと言われることもありましたが、昭和の時代には東京・丸の内のビルも「丸の内ビルヂング」でした。名古屋ではこの呼び名が継承されることで、地元の人たちから愛着をもって親しまれてきたのです。だから2016年に新しいビルとなってグランドオープンした時にも、「大名古屋ビルヂング」の名が残されたのだとか。
そこからさらに5年を経て、2021年の春には大規模リニューアルが実施されました。大きな特徴は地下1階のマルシェと、地上5階のスカイガーデン。地下には地元東海地区と全国の人気食物販店などが大集合し、新たな賑わいゾーン「大名古屋マルシェ」が誕生しました。それと連動して季節毎の装飾が人気の5階のスカイガーデンでは「ピクニック・食」をテーマとした装飾が施され、インスタ映えするとS N Sでも話題に。
このビルヂングのあり方を考える。
2016年のグランドオープン後、思ったように売上が伸びていかない中で、ワーキンググループを立ち上げて検討を始めたところ、「名古屋のニーズに応えきれていないのでは。」という意見が多く出たのだとか。東京のスタイルをそのまま持ってくることが良いと思っていたのが、そうではなかった。そうした反省のもと、では何が受け入れられているのかから話し合うことになりました。
「グループインタビューでヒアリングしたところ、“ツバメヤ”がすごく人気でした。同時に、他にちょっとした手土産品を買うところがないからこうしたお店がもっとあったらいいのにという声を多くいただきました。そこで、これまでファッション・雑貨がメインで構成されていた地下のフロアで、食を充実させようと考えました。」
他にない「食を体験できる」場所にしよう。
ファッション・雑貨から食への転換で、大きく変わった地下1階。食べ物を買うだけでなく、買ってすぐに食べられる「食と体験」をコンセプトにすることで、デパ地下との差別化も図ることができました。リニューアルオープンした地下1階の「大名古屋マルシェ」には、小さなお店が集まった小割ゾーンがあります。
屋内にいながら屋外を感じられるインテリアにもこだわったそうで、真ん中の通路を挟んでお店が立ち並び、横丁のような雰囲気と賑わいがあります。イートインできる飲食・休憩エリアが各所に設けられていたりするのも、他にはない嬉しい特徴です。
東海圏を中心としたちょっと良いお店が、名駅初進出でこの小割ゾーンに出店しています。
「これまで地元の人たちが本当に期待するものに応えられていなかったという想いから、地元の名店グルメが名駅で買えることを一つの特長にしようと思いました。地元の小さな個人店でも出店しやすいように、小割ゾーンは1坪〜7坪と小さい区画にして、イニシャルコストの負担等をなるべく軽減し、出店しやすく退店しやすいように工夫することで、地元の名店グルメが、気軽に名駅にも来てもらえるようにしました。」
一緒にマルシェを盛り上げてくれるお店を。
出店をお願いする前には、必ずご自身でお店に足を運ぶという秦野さん。まずは自分が味わって、その魅力を体感してから声をかけるのだと言います。そうして一緒にやってくれる「お店」であり「人」を地道に探して、交渉を続けたのだそうです。
「直接お店に出向いて、話を聞きに行ったからこそ、お店の要望も分かり、つながりを作っていくことができました。コロナ禍で進んだリニューアルの中で、出店を決めていただいたこともあれば、やむなく辞退されたお店もありました。その都度、どうしたら出店できるかを一緒に考えてきたつもりです。大変でしたけど、やった甲斐はありましたね。これからも続けていきたいと思っています。今後は、このマルシェで一度買ってみて美味しいと思った時に、次はオンラインでも買えるような仕組みを作っていきたいですね。」
SNSで大人気の5階スカイガーデンへ。
2019年の夏にはひまわり畑となったスカイガーデン。多い日では1日に1500人が訪れることもあったという人気ぶりでした。フォトスポットとしての可能性を感じたのは、グランドオープンから3年目に実施したイルミネーションで予想以上の反響があったことだと言います。
また、リニューアルに向けたユーザーインタビューでも「名駅エリアには買い物はできてもゆっくり休める場所がないから、スカイガーデンはありがたい。」という声が多かったことから、休める・楽しめる庭園としてここを活かしていこうという方向性が決まったのだそうです。
「実際、ビルの飲食店にもゆったりするために来る人たちが多かったようです。ゆっくり過ごせることがこのビルの特徴でもあると改めて知りました。だったらここでピクニックができるようにしようと。それで人工芝を敷いたところ、子供たちが走り回っていたり、若いカップルがレジャーシートを敷いて本当にピクニックしていたり。そんな光景を目の当たりにして嬉しくなりました。それがインスタ映えするとSNSで拡散されて、これまでにない20代の方たちにも徐々に認知されるようになりました。季節ごとに装飾を変えて、いつ来ても楽しめる、そして子供連れの方たちにも優しいビルでありたいですね。」
地下のマルシェで食べ物をテイクアウトして、この広々とした芝生の上でピクニック気分を楽しむ。そんな名駅での新しい過ごし方ができました。これからもどんどん新しくなっていく大名古屋ビルヂングをお見逃しなく。