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【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽9

地域の連載

2021.09.26

「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。

数あるネオ・フォルクローレのアルバムの中でも、絶対的な名盤の一つとして必ず挙げられるのが、以前山形新聞の日曜随想の中で取り上げた「ルス・デ・アグア(水の輝き)」という作品です。「ルス・デ・アグア」はクラウディオ・ボルザニ(ギター/歌)、フェルナンド・シルヴァ(ベース)、そしてセバスティアン・マッキ(ピアノ/作曲家/歌)の3人によるユニットです。本作はパラナ河周辺地域の美しい自然を題材として創作されたフアン・ラウレンティーノ・オルティスの詩に、セバスティアン・マッキが作曲した楽曲を収録したものです。審美的で映像的な音は、確かにネオ・フォルクローレ屈指の名盤といえる作品です。

さて、そのメンバーの一人として素晴らしい才能を示したセバスティアン・マッキは、2019年10月に「セバスティアン・マッキ・トリオ」として初来日を果たしました。セバスティアンのプロフィールは以下の通りです。

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1981年11月、アルゼンチンのエントレリオス州の州都パラナで生まれ。15歳で同郷の音楽家であり、現代アルゼンチン音楽を代表する存在のカルロス・アギーレと出会う。2005年にフェルナンド・シルヴァ/クラウディオ・ボルサーニとの連名で発表した『ルス・デ・アグア』はネオ・フォルクローレの金字塔として日本でも多くの熱心なファンを獲得し、ルカス・ニコティアンとのピアノ・デュオ・アルバムのリリース、2015年の『ルス・デ・アグア』第2弾、2016年のソロ・アルバム『ピアノ・ソリート~たった一人のピアノ』の発表まで、寡作ながらも着実にキャリアを重ねている。

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「セバスティアン・マッキ・トリオ」のメンバーは、セバスティアンのほか、ドラム/パーカッションのゴンサーロ・ディアス、そして彼が師と仰ぐネオ・フォルクローレの重鎮、カルロス・アギーレでした。カルロス・アギーレといえば、ピアニスト/作曲家/ギタリスト、そして繊細な歌い手としてシーンを牽引する存在ですが、驚くべきことにこのトリオではなんとベーシストとして参加して、セバスティアンを支えているという、なんとも贅沢な編成でした。

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ライブ前日は拙宅で歓迎会を催しましたが、プライベートのセバスティアンは、どこまでも好青年でした。控えめで誠実でナイーヴで、でもユーモアを忘れず社交的で、まるで彼が作る音楽そのものです。カルロス・アギーレもそうですが、優れた音楽を創造するアーティストは一般常識を外れた奇人変人が多い、などと言うのは少なくともアルゼンチンのアーティストには当てはまりません。ちなみにセバスティアンは「芋煮」と「胡瓜の辛子漬け」がお気に入りでした。

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歓迎会にて。なんと3人でブラジルのサンバを演奏してくれました。

さて今回紹介するのは来日メンバーと同様に、カルロス・アギーレとゴンサーロ・ディアスをメンバーに迎え制作した、セバスティアン・マッキ・トリオのアルバム、「アグアシラバス」です。アグアシラバスとはアグア=水、シラバス=言葉による造語です。瑞々しい楽曲、セバスティアンのやさしい歌声と、煌めくようなピアノ、カルロスの音数は少ないけれど雄弁なフレットレス・ベース、ゴンサロの多彩なリズム。もはやカテゴライズする必要のない、ユニバーサルで質の高いグッド・ミュージックです。ぜひ穏やかな秋の日に聴いていただきたいアルバムです。

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