山形移住者インタビュー/gugu flower 佐藤真梨絵さん「暮らしや人をつなぐコーディネーターに」
移住者の声
#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは「gugu flower」の佐藤真梨絵さんです。
自分から行動すること。その先に見たことがない世界が待っているーー。
結婚を機に見知らぬ土地だったここ山形で新たな生活をスタートし、花にまつわる活動として「gugu flower」を開業。その背景には、自分自身と向き合い葛藤した日々と大きな価値観の変化があったといいます。自分で活動を起こし、メッセージを発信していく。そんな新たな世界の扉を開け、日々邁進する佐藤さんのストーリーです。
お花との出会い。
自分で楽しみを見つけたい。
出身は北海道網走市です。18歳まで地元で過ごし、大学進学で上京して、卒業後もそのまま東京の百貨店でランジェリーの販売員をしていました。共通の知人を通じて山形市在住の旦那さんと出会い、1年間の遠距離を経て結婚、2016年の冬に山形市に引っ越してきました。
いまでは充実した日々を送っていますが、実は楽しめるようになったのはまだ最近なんです。というのも、山形にはまったく地縁がなく、移住直後は「旦那さんばかり楽しそうでいいな」と羨ましく思ったり…。
だけど、それではダメだと思うようになりました。山形に移住すると決めたのは自分自身です。旦那さんに頼るばかりではなく、自分でなんとか楽しみを見つけなきゃと習い事を始めることにしました。そこで出会ったのがお花です。
最初に習いに行った「アトリエ モモ」さんのレッスンでお花の楽しさを知り、別のお花屋さんに勤めることにしました。最初はお花に囲まれているだけで楽しかったのですが、SNSで好きなフローリストを調べてレッスンに通ったり、勉強して知識がついてきたりして、次第に自分の好きなスタイルがわかるようになってきました。
gugu flowerのオープン
お花に触れ始めて2年が経過した頃には、お花を自分の仕事にしていきたいと思うようになり、自分の好きなお花で、自分の思うようにやってみようと開業の道を選びました。
桜町でいいサイズの物件と出会い、2020年1月に「gugu flower」をオープン。ブーケやリースなどフラワーギフトの販売、フラワーレッスンなどを行ってきました。
「gugu」はアフリカの人が話すスワヒリ語で「雑草」の意味です。山形に自然や緑の豊かさを教えてもらい、野生に生えているものの力強さや美しさに叶うものはないと、自然の力にリスペクトを込めて名付けました。
山形を楽しめるようになったのは、お花に出会えたおかげです。私の好きなものを表現できること、いろんな方とお花を通じた話題が生まれ、みんなが笑顔になってくれることがすごく嬉しいんです。
現在はブーケやリースなどの商品作りと、ワークショップやレッスンをするアトリエとして稼働中ですが、今後は外部講師を招いてのオンライン講座やものづくりの拠点としていきたいと思います。
四季の変化を楽しむ暮らし
山形は自然が豊かで、季節感があるのがいいですね。日常の風景の中には必ず山があって、山を見て景色の移り変わりを感じられるのが贅沢だなぁと思います。私の地元は北海道で自然豊かなのですが、冬が圧倒的に長く、大規模農場や酪農が多い平野部なので景色の変化が少ないんですよね。山形は山だけでなく田んぼがたくさんあって、稲が成長していく過程が身近に見られたり、果物や野菜が多品種あって四季折々で生産物を楽しめたり、食生活も豊かだなと思います。
友人が山形に訪ねてきたときは、おいしいお店にたくさん案内します。夏は西蔵王のお蕎麦屋「竜山」のだし蕎麦、山寺の「コザブジェラート」、ほかにも、村山のジンギスカン「ひつじや」、西川の「出羽屋」など。どのお店も自然に囲まれていて、旬のおいしいものが食べられるお店ばかりです。
最近では「自分には何が必要で、何がしたいのか」が少しづつわかってきて、お金の使い方も大きく変わったなと感じます。東京に住んでいたときは、情報が多くて、友達とおしゃれな場所に出かけて、流行りの服を買ってと、何も考えないまま消費していました。
山形に来てからは、そもそもお金をたくさん使わなくても充実した生活が送れるし、外食したりモノを買うときは知り合いの人がやっているお店に行くことが多いです。やはり選択肢は東京に比べて圧倒的に少なくなるので、考える余裕が生まれて、自分で本当にいいなと思うものにお金を使うようになりました。そのほうが満足度が高いんですよね。
「あるもの」に感謝して生きること。
GUGUJANIのメッセージ
gugu flowerと平行して、「GUGUJANI(ググジャーニ)」という活動も始めました。アフリカのマラウイ共和国在住の友人と共同でものづくりをする活動です。
大学時代は国際協力の勉強していて、そのときの友人がマラウイに嫁いで暮らし、お店をやっています。現地の素材を使って主にファブリックの小物をつくって販売しているのですが、その商品を送ってもらい、これまでに2回ほど山形でポップアップショップを開いてきました。せっかくなので、継続的に一緒にものをつくって販売しようと始めたのが「GUGUJANI」です。
モノを売ることが目的ではなく、根底にはマラウイからの学びを伝えたいという思いがあってアイテムをつくることにしました。
マラウイは経済的にはアフリカの中で最貧国と言われています。だけど、人々はすごく穏やかな心持ちで暮らしていて、毎朝目が覚めたときに家族がいて、ご飯が食べられて、ご近所の方とおしゃべりできること、生きていること自体が幸せだと心の底から感じている人が多いと聞きます。
あるものに感謝して生きる。これがマラウイの人々のスタンスです。情報社会に生きていると、ないものを必死に探して、他人を羨ましく思ってしまいます。だけど本当は誰もがたくさんのものを持っていて、それに気がついていないだけなのでは、と思うようになりました。
私自身を振り返ってみてもそうでした。花屋を始めた1年目は、流行りの花を使いたいと、無理して東京から高い花を仕入れていました。だけど次第にそれが苦しくなっていきました。こんなに自然豊かな山形にいて、お花の農家さんもたくさんいるのに東京の花屋さんと同じことを目指しても意味がない。もっと自分の目の前にある環境を生かすことをしたい、農家さんと長く向き合ったり、私たちに感動を与えてくれる植物のことを根底から学んでみたいと思うようになりました。
そんな自分の経験やコロナのタイミングが相まって、マラウイのマインドから学ぶことがたくさんある気がしたんです。
GUGUJANIのアイテムは私と友人でデザインを考えて、現地の素材を使って現地のテーラーさんに縫製してもらっています。今回はアフリカの生地と日本文化を掛け合わせた巾着バッグをつくりました。マラウイにはないデザインで、現地の人にとっても新しい学びの機会になり、微々たるものですが、雇用が発生することで現地に貢献できればいいなと思っています。
暮らしや人をつなぐコーディネーターに
最近、市内に小さな畑を借りました。自分で植物を植えて、ハーブやお花を育ててみようと準備中です。農家さんの現場を拝見すると、お花も野菜もなんでこんなに単価が安いんだろうと思うくらい、育てることの大変さは尋常ではありません。
農家に転身まではいかなくても、自分自身も手を動かして自然と向き合うことで、学ぶことがたくさんある気がしています。さらにはみんなで苗を植えたり収穫したりする体験を共有して、自分でつくったハーブでハーブティをいれたり、花を飾ったり、植物を暮らしに取り入れることの豊かさについて考える場をつくっていきたいです。
お花のレッスンについても、これからは外部講師を招いて、私にはない知識や技術を持っている先生から学べる場をつくっていく予定です。そして、山形の作家さんと試作してオリジナル花器の販売にも挑戦したいと思っています。
これからも自分が出会ってきた文化や人の中から素敵なものを見つけて、モノをつくったり、イベントを企画してメッセージを伝えていきたいです。目指しているのは、暮らしや人を繋いでいくコーディネーターのような役割。少しづついろんなアプローチを試しながら発信していけたらいいなと思っています。
gugu flower
https://www.instagram.com/gugu_flower/
GUGUJANI オンラインストア
https://guguflower.thebase.in/
写真提供:佐藤さん
取材・文:中島彩