福井のみなみの季節と養生 #6/10月秋分「若狭町岩屋の梨」
地域の連載
福井のみなみの季節と養生は、福井の南に位置する敦賀でユニットを活動する養生デザインのお二人(青木さん、山中さん)と、reallocal福井ライター牛久保で、季節ごとの養生についておはなししていく連載です。
※養生…身体の状態を整えること
早いもので秋分を迎えました。
秋分は太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日。春分から半年。これからは春に種をまいて大事に育ててきたものを収穫し、しっかりと蓄えしていく時期に入ります。
春分の頃から養生し大切に養ってきた身体は、秋からも健やかに過ごす力が備わっているはず。この調子で過ごしていきましょう。反対に、無理が重なってしまった方は、それまでの無理が身体の変化となって現れる時期にもなります。少しでも早めにからだを休めて、体調を回復しておきましょう。
白い色の食べ物で身体の潤いをキープする
青「過ごしやすくなり、趣味を楽しむにもぴったりな季節になりましたね。牛久保さん、体調はいかがですか?」
牛「最近、アプリを使って歩くことを意識し始めました。少し身体が軽くなったように感じています」
青「良いですね!この季節をしっかり満喫するためにも体調をととのえていきたいですよね。では秋のオススメ食材の見つけ方のヒントを伝授しましょう!それはずばり『白い色の食べ物』です」
牛「お豆腐や、れんこん、大根などですか?」
青「そうです。他には白ごま、白菜、白きくらげ、ユリ根、梨など。これらは乾いた身体に潤いを与えてくれる食材です。秋は乾燥し、喉からの風邪を引きやすかったり、カサカサする乾燥肌が気になる季節です。秋は五臓で言うと肺の季節に当たります。白い食べ物は肺の働きを助けると言われていて、これらのお悩みの強い味方になってくれますよ」
暑く感じる日でも5つの首は冷やさない
牛「朝晩涼しいと思っても、日中は暑かったり、身体が追いつくのがやっとです」
青「そうですね。特に季節の変わり目は気温や気圧の差も激しく、風が強い日もあります。気分も左右されやすいですね。また、空調の効き方も場所によってさまざまです。そんな時に備えて一枚羽織るものや、アームカバーやレッグウォーマー、ストールなどを準備して首と手首、足首の5つの首を冷やさないようにすると良いですよ」
牛「急に首がぞくっとすることもありますね」
青「そう。その『ぞくっと』は体からの大切なサインなんです。それは寒さが入ってくるサイン。しっかりブロックして本格的な風邪から身を守っていきましょう。特に首を冷やさないことは、この時期からの大切な養生になりますよ」
牛「そういえば、少し夏バテも引きずっているかもしれません。なんだか疲れが取れない感じです」
青「なんだか起き抜けからやる気が出ない。疲れが取れないと感じる時は、お休みの日に出かけるのを少し我慢して、おうちでゆったりと睡眠や休養を取っておきましょう。このときに美味しいものを食べるのではなく、食べる量を少し軽くしたり、脂っこいものは少し避けてお腹の負担を軽くするのもおすすめです」
牛「ついお菓子を食べてゴロゴロしたくなりますが・・」
青「ゴロゴロするのは良いですね。リラックスすることもとっても大切です。それなら前日の夜は少しお酒を飲んでもOK。でも冷たいビールはほどほどに、おつまみも脂っこいものは避けて下さい。少し気を付けると翌日身体の休まり方が変わりますよ」
山に囲まれた丘陵地、岩屋で梨園を営む瀬尾さん
今月は若狭町岩屋にある梨園を訪ねました。
お話いただいたのは、代表の瀬尾佳彦(せおよしひこ)さん、瑛史(えいじ)さん親子です。
この地で梨の栽培が始まったのは今から65年ほど前のこと。岩屋は山に囲まれた丘陵地です。他の地域では梨の栽培に人工授粉が必要な中、ここでは、ある程度自然受粉されるという恵まれた土地柄を生かしつつ、ミツバチの力も借りて今に続いています。
ピーク時の生産者数は集落の半分の40件、観光農園も沢山ありましたが、今では7件のみの生産者となり、梨の専業で営まれているのは瀬尾さんのみとなっています。
瀬尾さんは瑛史さんが3代目。大阪で就職されていましたが、3年前にこちらに戻って来られたそうです。いつかは地元に戻りたかったという瑛史さん。お父さまの佳彦さんからの愛情が、梨にもご家族の瑛史さんにもじんわりと温かく受け継がれていることを感じました。
梨の収穫は8月初旬に愛甘水(あいかんすい)から始まり、中旬に幸水(こうすい)、秋栄(あきばえ)。9月に入ると豊水(ほうすい)、20世紀と順に収穫が続きます。
このうち幸水、豊水、秋栄は「赤梨」と言われ茶色っぽい優しく甘い梨です。対する20世紀は「青梨」。こちらは少し黄緑色に近い色をしていて少し酸味もあり軸が太いのが特徴です。中でも20世紀は病気などには弱いため袋を二重にかけられ大切に育てられています。朝早くから丁寧にひとつひとつ収穫された梨は納屋で綺麗に並び、瀬尾さんの手で手際良く軸を切り取られ、選別されていきます。
この美味しい梨が私たちの手に届くまで、梨園の作業を聞いて驚くことばかりでした。
1年間休む間もなく手作業で丁寧に育てられる梨
梨園の作業は、収穫が終わるとすぐに来年に向けての剪定、冬には誘引作業、そして春には花芽の処理や摘果、袋がけ、秋に収穫・・と1年間お休みする時がありません。
また収穫もひとつひとつ手作業です。機械にはできない作業のため、なかなか後継者が続かないとのこと。少し前から、お隣の地区に移住して梨園を経営する方がいらっしゃるそうですが、まだまだ後継者が必要です。
※若狭町では、「わかさ農活プロジェクト」という農業を始める方への就農サポートを行っています。気になった方はこちらへお問い合わせください。
岩屋の梨はあまり市場に出回っていません。ご希望の方はJA三方五湖支店までお問い合わせください。また、去年から今年にかけては感染症予防対策のため閉鎖になっていますが、観光農園も運営しています。再開したらぜひお越しください。
梨で潤いキープ
さて、今月のおすすめの食べ物でもある梨は、肺を潤し熱を下げるのを助けてくれます。
また、喉の違和感や熱感、乾燥にも優しい味方です。
特に発熱後の脱水症状にも良いので、この時期のスポーツやお出かけする時に持っていくと体にも美味しく熱中症の予防にもなりますよ。
ちなみに美味しい梨の見分け方は、ざらざらした表面がつるっとなったもの。
また、梨は体を冷やすので、できれば日中に食べることをおすすめします。もちろん美味しいからといって食べ過ぎには気をつけて。身体にも美味しい梨を食べて、この時期も健やかに過ごしていきましょう。