【福島県・葛尾村】若手畜産農家が村の養鶏業を復活!「やりたいこと実現できると思うんですよね、葛尾って」
ローカル 気になる人
「村の皆さん、ほんとにいい人ばっかりです!」
そう語ってくれたのは、福島県葛尾村で、養鶏業を営む「株式会社大笹農場」の取締役・髙橋憲司さん。2018年に家族で移住し、事業を次々に拡大しています。そんな髙橋さんに、事業立ち上げの経緯から移住後のライフスタイルなど、経営者であり二児の父でもある目線で語っていただきました。
「想い」が「形」になったのは村のみなさんが背中を押してくれたから
ーー 祖父母の代から福島県伊達市で養鶏業を営んでいるそうですね。髙橋さん自身は、もともと家業を継ぐつもりだったんですか?
幼い頃から養鶏は身近なものだったので、将来的には継ごうかなと考えていました。
ーー 震災がきっかけでUターンされたそうですね。養鶏に携わるようになったのもそのあたりからですか?
そうですね。父が葛尾村で養鶏場を営む構想があって、2016年に葛尾村で「株式会社大笹農場」を立ち上げました。父と話し合いを重ねる中で、「自分もやってみるか!」と葛尾への移住を決断しました。
ーー 養鶏業を始めるにあたり、葛尾村を選んだ理由は何ですか?
葛尾村は標高が高いので一年中気温が涼しく、養鶏にはぴったりの気候だったんです。実は昔、祖父が養鶏の仕事で何度も葛尾村を訪れていまして。僕も幼いころ、いっしょに連れてきてもらっていたんです。僕にとって、葛尾村は馴染みのある場所でした。
ーー どのようにして事業を立ち上げられたのでしょうか?
実は葛尾村って、もともと養鶏農家さんがいたんですよ。養鶏場も4軒あったくらい産業として栄えていたんですが、原発事故の影響で廃業を余儀なくされてしまって。その農家さんたちから受け継いだ養鶏場を利活用させてもらっています。廃業せざるを得なかった方々の思いを大切にしながら鶏を育てています。
ーー 葛尾村で新しく事業を始めたとき、村の方達はどのような反応でしたか?
「葛尾で養鶏をやりたいと思ってる」と村役場の方に相談したら、すごい積極的に話を聞いてくれたのがとても心に残っています。また、もともと養鶏をされていた方が気さくにアドバイスをくれたりもしたので、とても心強かったです。今こうして、葛尾で養鶏をできているのは、村の皆さんの温かさがあってこそだと感謝しています。
モノと想いが巡るサステイナブルな畜産
ーー エサやりから室内温度の管理まで、すべてコンピューターで管理されるなど、設備を充実させているそうですね。どういった理由でこのような最先端の養鶏場を設立されたんですか?
一番の理由は「循環型の畜産」に力を入れるためです。鶏の糞を燃やしたときに出る熱は鶏舎の床暖房に使い、燃やして出た灰は県内の飼料米の栽培農家さんに肥料として使っていただいています。この先長く葛尾村で養鶏をやっていくには、こういった環境への配慮や村の方とのつながりが欠かせません。
ーー 養鶏業を営んでいて、一番苦労されることは何ですか?
ヒナたちがストレスなく快適に過ごせているかを見極めることですね。コンピューターで管理していても毎回育ちかたが違うので、試行錯誤しながら常にヒナ目線で世話をしています。
ーー 髙橋さんの新しい取り組みは、葛尾村にとってきっと大きな刺激になりますよね。
葛尾村への移住者や、事業立ち上げに興味を持つ方が増えるきっかけになれば嬉しいです。
近すぎず遠すぎない、ほどよい人とのつながり
ーー 葛尾村での暮らしについても教えていただきたいのですが、髙橋さんは現在どのようなところにお住まいですか?
若者定住促進住宅という子育て世代向けの家に住んでいます。近所の方もお子さんがいらっしゃるので、安心して暮らせる環境ですね。
ーー 家族4人で移住してみて、葛尾での暮らしはどのような印象ですか?
一年を通して気温の変化が少ないので、やっぱり過ごしやすいですね。葛尾村は標高が高いのもあって、夏でも比較的涼しい印象です。
ーー 葛尾村に移住する時、不安なことってありましたか?
地元と人とうまく付き合えるかっていうことですかね。だけど、葛尾村の人達の交流ってすごく風通しが良くて、その不安はすぐ解消されました。ほんといい人ばっかりです!
ーー 現在、葛尾村に住み、暮らしている方は400人程度だとお聞きしました。小さい村ならではの住みよさは感じますか?
村づくりのリーダーと村民が、同じ目線で考え、話し合えるフラットな関係を築けているのが魅力だと思います。「意見の言いやすさ」「意見の取り入れられやすさ」は小規模な村ならではですね。
ーー それってすごいですよね。なかなか住民の声が形になるって難しいのに。
「こうしたい!」とか「やりたい! 」っていう気持ちがちゃんと形になりやすいっていうのは、規模の大きすぎない利点ですね。
ーー 髙橋さんにとって葛尾村の魅力って何ですか?
「なにもなくて静かなところ」ですかね。「なにもない」って一見マイナスに聞こえますけど、ぼくはプラスに捉えています。情報量が少なくて、集中できる環境が整ってるので、ものづくりや何かにぐっと向き合いたい方にはピッタリの場所です。
もう一つは、標高が高くて空気が澄んでいるので、ビックリするくらい星がきれいに見えるところですかね。
葛尾を知って、興味をもってもらうきっかけ作り
ーー 葛尾で養鶏をはじめて今年で4年目なんですね。今後の目標は何ですか?
生活者のみなさんって養鶏場に行く機会がないから、どんなところか分からないじゃないですか。だから、観光型の養鶏場を作りたいです。そうすれば、養鶏を通して葛尾村をもっと知ってもらうことができる。ただ、葛尾村そのものの認知度があまり高くないので、まずは村を知ってもらうきっかけ作りをしています。例えば、うちの養鶏場で積極的に従業員を雇ったり、学生のインターンを募集したりしています。ふるさと納税もはじめたので、葛尾村に興味を持ってくださった方にはぜひ利用していただきたいです。
ーー 葛尾村での起業を考えている人にとって、髙橋さんの事例はとても心強いと思います。同じように葛尾村で事業を起こしたいと考えている方へメッセージをお願いします!
やりたいこと実現できると思うんですよね、葛尾って。ぼくの時もそうでしたけど、「こんなことをやりたい」って村の方に相談すると、本気になって一緒に考えてくれます。移住や起業を考えている人は、ぼくもお世話になった「一般社団法人葛尾むらづくり公社」に、まずは相談してみるといいと思いますよ。