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大地をキレイにする旅をはじめよう!

「ミドリカフェ」ウチダケイスケ氏

2015.04.16
大地をキレイにする旅をはじめよう!
ウチダさんは「旅する大地」というプロジェクトも推進。自然の力だけでつくられる土「森育ち」を提供している。(写真は 「TRAVELING GROUND 旅する大地」のHPより)

「土」をつくり、森とまちをつなげようと取り組んでいる人がいる。
神戸市東灘区岡本で「ミドリカフェ」を営んでいる造園コンサルタントのウチダケイスケさんだ。

ウチダさんは会社員だった頃に、ニュータウンの緑化計画や管理放棄された庭園再生活用の企画などに関わった。その後、今から約10年前に独立。ご夫婦でミドリカフェを立ち上げた。
カフェとあるが、事業の根幹となっているのはウチダさんによる無化学肥料・無農薬でつくる菜園や庭のデザイン業。併設されたカフェでは、有機栽培農家から仕入れた米や野菜を使った軽食やスイーツを奥様が提供している。

「造園コンサルタント」「ミドリカフェ」これらのキーワードを聞くと、樹木や植物の専門家かと想像すると思うのだが、ウチダさんは「土」にもこだわる。

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ウチダケイスケさん。ガーデンや土づくりに関する講演や、ワークショップも定期的に行っている。
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ミドリカフェの店内から、テラスを眺める。

 ミドリカフェのある神戸市東灘区岡本は街と六甲山が隣接しており、徒歩10分ほどで登山口に到着、山に入ることができる。

もともとは横浜出身のウチダさんが長くこの地に住み着いたのも、山と街が近いコンパクトさが気に入ったからだという。休日には、朝から六甲山にトレイルランをしに行くのが習慣で、2時間位走ってもまだ昼前。一日を有効に使える。

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ミドリカフェの店内。「食」と「植」の雑貨や商品も充実している。

  森を守るためには、まず土を良くしなくてはいけない

ウチダさんの人柄、そして土地柄もあってか、次第にミドリカフェにはその考えや取り組みに共鳴する人々が集まる場所になっている。

そしてここで出会った仲間と話すうちに、林業、農業、そして自身の造園業、それぞれが、ある共通した悩みを抱えているとわかってきた。

「日本の土が死につつある」。

農薬や添加物、化学肥料による土の汚染は農業、造園業ともに抱える問題だ。
特に林業においては事態は深刻だ。
現在、国内の木材自給率は20%前後、国土の約7割が森林であるにもかかわらず、残りは発展途上国に頼っている。その結果、管理の担い手もなく荒れたままの山は少なくない。そういった状況は治水力の低下や、生態系のバランスの崩れといった様々な問題を引き起こす。また整備された森林であっても雨などによって土砂が海へ流れ出ているため日本の地力(土地が作物を生育させうる能力のこと)は低下している。

このままでは、日本の資源である良質な土がどんどん死んでしまい、その土の上にある森林も駄目になってしまう。

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「旅する大地」HPより。「story of  the ground / links forest to city(大地の物語/森と都市をつなぐ)と書かれている。

  2014年、これらの状況を食い止めるため、仲間と共に「旅する大地」というプロジェクトを発足した。

このプロジェクトは、資源ごみとして廃棄処分されている山林や農地からでる刈草や樹木の皮などを、良質な「土」に再資源化し、まちなかの街路樹が植えてある場所や、公園や庭へ再活用する仕組みをつくろうとしている。

その主な活動は、以下の3つである。
1. 「森育ち」という、農薬や添加物・化学肥料などを一切使わず、自然の力だけで培養される土の生産・販売
2. 土づくりに関するワークショップ
3. 「森育ち」の生産地をめぐるアウトドアイベント

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「-森とまちをつなぐ培養土-森育ち」。お米?と思ってしまいそうですが、実は土なんです。 コチラで取り扱い店を紹介しています。

 ウチダさんとの対話

 —「森育ち」はどのようにしてつくられているのですか?

「まず、1㎝の土ができ上がるのに、約100年の年月がかかるという話をご存知ですか?」

 — 100年も!?

「はい。岩石が風化したものが母体となり、その母体に落ち葉や枯れ枝や動物の遺体などの有機物が加わって、それが微生物によってゆっくりと発酵分解され土になっていきます」

—気の遠くなる話ですね・・・

 「ええ。ただ、実は1年位に短縮することができるのですよ。それも何てことはなくてただ月に一度『切り返し』(※堆肥を底から混ぜ合わせることで空気を土に入れること)を行うだけ。人間の手が加われば、その時間は100分の1に短縮できます」

—空気を入れてあげるだけで良いんですか?

「はい。自然本来の力に少しだけ手間をかけることで、良質な土ができる。
しかも、原材料は、枯れた木の枝や葉、枯れ草、樹木の皮など、自然から出てくるものなのでコストもかかりません」

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兵庫県姫路市にて。この写真のように、枯れ葉や枯れ枝を積み重ねて、定期的に切り返しを行うことで土ができ上がる。

 「この仕組みを利用して、コーヒー豆みたいに『◯◯産』という産地ブランドが出来れば面白いなと考えまして。それで生まれたのがこの「森育ち」という土です。

現在は、兵庫県の姫路市と熊本県の山鹿市で、地元の林業の方などと一緒に生産しています。
もし、日本各地で生産した土が山林や農地に還れば、日本はもっと多様な植物が育ち、栄養価の高い野菜も収穫出来、林業や農業の活性化にもつながる。
そして、商品として都心部に流通すれば、環境的にも林業の方々の経済的にも実りがある。長い目で見た時に、社会のシステムを変革できる一端になれると思っています」

 —最後に、今後の目標や夢を聞かせてもらえますか?

 「林業など山の人達にスポットを当てたい。山の人達をアイドルにしたいですね。
また今はまだ途方もない夢で、しかも勉強不足ですが、いつか東日本大震災で放射能汚染を受けた土に自分たちのつくる土を混ぜることで、濃度を緩和し土本来の自浄作用を促すことができたらいいなと思っています。また先進国の都合で枯れてしまった発展途上国の土地にもこの技術を持っていきたい」

森を見て、土を見る。
ウチダさんは、ミクロレベルでの「土」の生命力と向き合いながら、同時にマクロな視点で、森とまちをつなぐ架け橋になり社会を良くしたいという夢を熱く思い描いている。

屋号

ミドリカフェ(オーナー ウチダケイスケ)

URL

http://midoricafe.jp/

住所

〒658.0003
 神戸市東灘区本山北町2-6-24 1F
 TEL + FAX = 078-412-7214
 営業日 = 11:30-19:00
 定休日 = 水曜日+木曜日

 

備考

ミドリカフェは「green drinks japan」の神戸拠点にもなっています。
※green drinks kobeのfacebookページはコチラ

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