【福島・金谷川】何でもできるコンテナがある。金谷川、面白いかもしれない。「かがや区」佐藤直也さん 齋藤哲也さん
ローカル 気になる人
福島県福島市金谷川。それは私の通う福島大学がある場所。この場所に謎のコンテナがあります。このコンテナの正体は一体何なのか?運営元である「かがや区」さんを訪ねました。
金谷川は、遊んだり買い物したりできるお店がそろう場所ではありません。
ファミマがひとつあるだけの場所、と思っています。
金谷川駅から大学までは徒歩10分程度。その10分間の道のりは、階段、上り坂の繰り返し。登山している気分になる、と言っても過言ではないほど。
その道中に、謎のコンテナがあります。
毎日通る場所なので、入学当初からその存在は知っていました。しかし、中で何が行われているのかはよく分かりませんでした。チラチラと見る限り、どうやら色んなお店が入れ替わりで入っている様子。「この場所の正体を知りたい!」と思い、色々と調べてみました。そのうちに、このコンテナを運営する「かがや区」にたどり着きました。
今回は、コンテナの正体を暴くべく「かがや区」立ち上げメンバーである、佐藤直也さん、齋藤哲也さんにお話を聞いてきました。
謎のコンテナの正体は!?
まず、かがや区代表の佐藤直也さんに話をお伺いしました。
―― このコンテナを設置したきっかけを教えていただけますか?
佐藤さん:学生さんが何か挑戦できる場所をつくってあげたかったっていうのがきっかけです。
―― なぜそう思うようになりましたか?
佐藤さん:平成19年から大学近くのアパートを管理するようになって、学生さんが行き交う姿をそばで見てたんですけど、正直「勢いがない」と感じたんですよね。
―― 勢いがない、、、笑
佐藤さん:うん、でも学生さんと話してみると、情熱がないわけではないと気づきました。ただ、何をどうしたらいいのかわからない。やり方がわからないだけなんだと。
「勢いがない」っていうのも、学生さんがアピールする場所、地域と触れ合う場所があまりないから、そう感じるだけなのかなと思いました。
―― 学生さんはどんな思いを持っていましたか?
佐藤さん:「地元の人たちとも関わりたい」「社会と関わっていきたい」と言う子が多かったですね。
―― そんな学生のためにコンテナをつくったんですね。
佐藤さん:「場所をつくるから何かやる?」って学生に聞いたら、「やってみたい!」「面白そう!」って声が返ってきて。「じゃあ、一緒にやってみっか!」っていうのがそもそもの始まりです。
佐藤直也さんに加え、この地域で「SEKIYA COFFEE」を営む齋藤哲也さん、県内に建築事務所を持つ安斎好太郎さん、福島大学准教授の沼田大輔さんが集い「かがや区」を結成しました。「かがや区」と学生によって、コンテナでの「コミュニティカフェプロジェクト」が始動しました。
このコンテナなら、誰もが挑戦できる
ーー コンテナでは具体的にどんなことができますか?
佐藤さん:用途は限定せずにサークルでも授業でも、イベント、お店、どんなことでも挑戦できます。
学生にとって社会と関われるのはアルバイトくらいでしょ?それだけじゃなくて、もっと実体的な経済や経営の仕組みを学んでほしい。その経験ができる場所になればいいなと思います。たとえ失敗しても、ここでの失敗は小さなやけどで済む。だから失敗をして欲しい。小さな失敗のうちに、色々なことを学んで欲しいという思いがあります。
ーー 学生だけでなく一般の方も利用できるんですよね?
佐藤さん:はい。カフェや飲食店をやりたいという思いを持った社会人や主婦の方にも使っていただいています。お店をやってみたいけど、最初に大金を払って店舗借りてっていうのはリスクが大きすぎる。だったらここをリーズナブルな価格で貸し出して、腕試しする場所として使ってもらいたいです。
ーー 学生が挑戦できる場所、一般の方が腕試しできる場所の2つの側面を持っているんですね。
佐藤さん:そうですね。あとは、学生がここで何かをするとき、地域の方が訪れて、だんだんと交流が生まれればいいなって。だから3つの側面になるのかな。学生が挑戦できる場、一般の方の腕試しの場、そして地域との架け橋となる場。
この場所を選んだ学生にお土産となるものを
ーー コンテナを運営してきて、喜びを感じた瞬間を教えていただけますか?
佐藤さん:就職活動を終えた学生に話を聞いたとき、「学生時代何をしてきたか」っていう質問に、このコンテナでやってきたことを話したって言ってくれて。その子のためになったなって実感できたのは、うれしかったです。
あと、卒業した学生が家庭を持って、この地区に戻ってくることになって。そのときに、「コンテナを仕事で使いたいから貸してほしい」って言ってくれて。それもうれしくて。
学生が帰って来れる場所になってるんだなって。
学生にとって、「学校以外の学びの場」となり、「帰って来れる場所」になっているのです。この小さなコンテナは、「ただ貸し出すスペース」以上の意味と可能性を持っています。
佐藤さんは、「学びの地としてせっかくこの場所を選んでくれた学生にとって、お土産となるものを持って帰ってもらいたい」とも語ってくださいました。
私にとって、「この場所を選んだ」という言葉が印象的でした。地元の大学への進学ということもあり、正直「選んだ」意識が自分の中にそこまでありませんでした。でも、福島に残ることを決めたのも自分自身。自らの選択で、私は今、ここで学んでいるんだと意識することができました。
コンテナで挑戦を遂げた先輩が、「お土産」を見つけたように、私もこの場所に「大学がある」以外の意味を見出したいと思いました。せっかく自分で選んだ場所なのだから、そうしなければもったいない。
金谷川には可能性しかない
ファミマがひとつあるだけの場所。私がそう感じていた場所。
最後に、佐藤さんと齋藤さんにとって「金谷川」がどんな場所か尋ねました。
ーー佐藤さんにとって「金谷川」はどんな場所ですか?
佐藤さん:何もない、何もないっておっしゃるでしょみんな。なんでこんなにいっぱいあるのに、何もないって言うのかなって。都市部と比べたら、ないものはないですよ。でも、都市部にはないけど、ここにあるものはたくさんあるんですよ。「あるもの」っていうのは「都会にあるもの」って刷り込まれちゃってる。そういう固定観念で見るから、色眼鏡で見ちゃうから見えないんです。コンテナで行列ができたこともある。やり方1つでは行列ができる。金谷川は可能性のある場所だと思います。それを自分から見つけてほしい。
ーー 齋藤さんにとって「金谷川」はどんな場所ですか?
齋藤さん:どう見るかだけだと思うんですよね。ポジティブに見れば、たくさん要素はあると思う。その要素を自分でどうやって開拓していくか。
金谷川は可能性しかないと言えると思います。自分みたいな小さな事業を営んでいる者でも、何かやれば何か起こる可能性があるのはすごく面白いと思います。学生さんだって「自分は何もできない」って言うけど、ちょっとコンテナで店をやると、「自分にもできるんだ」って自信がつくじゃないですか。そういう積み重ねって大事かなって思います。
齋藤さんはご自身のお店「SEKIYA COFFEE」を営む場所として、市街地ではなく、生まれ育ったこの場所を選びました。この場所には市街地にはないメリットがあり、それが自分に合っていると話します。
そして、「金谷川をもっと面白くしていきたい」という気持ちのもと、かがや区として活動しています。
私はここで何ができるだろうか
福島大学に通い始めて3年目。今まで、駅と大学の往復しかしてきませんでした。金谷川に何があるのか全く知りません。この場所を知ろうという姿勢、この場所と触れ合おうとする姿勢がそもそもありませんでした。
郡山から40分電車に揺られ、4年間この場所に訪れることを選んだのに。
佐藤さん、齋藤さんの言う「金谷川の可能性」を自分なりに発掘していきたい。そのためにも、しっかりと金谷川を見つめて、感じ、面白がっていきたい。
まずは、このコンテナで自分だったらどんなことができるか、それを想像することが、この場所を面白がる第一歩かもしれません。