福井駅前realpeople#2「福井駅前はアフリカの島の生活に似ている」山田夏子さん
福井の地域情報誌であるURALAとwebメディアreallocal福井がタッグを組んで、変わりゆく福井駅前に関わる人たちに焦点を当てた連載です。関わり方はみな様々。リアルな横顔を切り取っていきます。
第2回目は、山田夏子 (やまだかこ)さんです。
アメリカ、ボストン出身。大学までアメリカで過ごした夏子さんはコロナをきっかけに2020年日本に来ました。大学院を休学して、アフリカの島国でも働いていたというグローバルな経歴を持つ24歳です。現在は駅前に居を構え、福井での暮らしを満喫中。なぜ福井?なぜ駅前?と沢山のクエスチョンが浮かんできます。これまでの経緯を含めてお話しを伺いました。
アフリカの島国での活動
―これまでの経歴を教えてください。
18歳までアメリカのボストンで育ちました。大学では政治経済を学んでいて、卒業してから一度、Peace Corpsという団体に所属していました。日本の海外青年協力隊のアメリカ版といったところでしょうか。ケネディ大統領の立ち上げた団体です。
私はアフリカの島国、コモロに赴任して学校で英語を教えていました。コモロは、マダガスカル諸島の近くのトロピカルアイランドです。赴任した村が海沿いで、家までの道を歩くのが気持ちよかったです。ぜひ一度訪れてほしい。安全ですごく良い場所でした。
言語のメインは、2つ。フランス語が公式で、あとは現地のコモロ語でした。教育を受けている人たちはフランス語が話せますが、現地語のみの人も多かったです。特にお年寄りの方は多かったですね。
―実際コモロ語も喋れるようになりましたか?
そうですね、普段の生活はコモロ語でした。ホームステイをしていましたが、お父さんお母さんは30代で若かったのですが、コモロ語でした。英語は通じないです。私は他のアメリカ人に比べて公用語のフランス語が喋れたので少し楽でしたね。
日本に来るキッカケはリモート授業だった
私は大学院を休学して、コモロに赴任していたのですが、コロナの流行で当初のスケジュールが変更になったので、大学院と相談して復学を早めました。
―なぜ日本、そして福井に移住したのですか?
親戚が日本で暮らしていて、小さい頃から一度住んでみたいと思っていました。コロナ禍で大学院がリモートになったので、どこでも学べると思い、2020年9月に日本に移住しました。
最初は神奈川県の親戚の家にいたのですが、友人が福井に暮らしていて、1週間ほど観光に訪れたのが福井を知る最初のきっかけでした。コンゴ人の友人なんですが、留学生として福井大学に通っていました。
関東だとそもそもコロナで出歩きにくい上に、知り合いばかりなので、新しい人に会う機会がほとんどありませんでした。自分のマンションにいるか友達と英語で話すかで、日本に居る実感がなかった。これでは来た意味がないなと。
そこで最近行ったところでどこがよかったか、生活できそうなところはどこかと考えた時に福井が思い浮かびました。
福井の駅前ライフを満喫しています
-今はどんな暮らしですか。
福井駅近くの古い一軒家を借りています。2021年5月に大学院を卒業したのですが、福井に残ろうと決めて、好きな駅前に気楽に来られる場所を探しました。
なかなか面白いところが見つからず、お世話になっている方に相談したら、実家の横が空いているよと紹介していただいて、そこからトントン拍子に決まりました。大家さんが優しいご夫妻で、野菜を頂いたり、本当によくしていただいています。
住み心地がいいですね。八百屋さんやお肉屋さん、魚屋さんもあるので、そういった個人商店で買い物するのが楽しいです。駅前ライフ、満喫しています。
これが面白いことに、コモロの村になんだか似ているんですよ。ここを通れば、この人に会える、挨拶できるという環境が村の生活に近くて、すごく心地がよいです。
仕事は近くの専門学校で英語教師をやっています。衣食住が近いっていいですよね。あとは院の時から続いているアフリカ研究と、この夏は国連のインターンをやっていました。
歩いて、このまちのドキュメントをつくりたい
―これから福井でやりたいことを教えてください。
この働き方を選んだのは、他の時間をつくりたかったからです。もっと歩き回ってまちの人の話を聞いて、写真と文字のドキュメントにまとめたいなと思っています。
便利ではないけれど、歩きやローカルな公共交通を使うほうがゆっくり景色を楽しんだり、人情味を味わえますね。来た当初はよく公共交通を使っていたのですが、えちぜん鉄道の駅とそこから見える景色、黄緑色の田園風景と古い駅舎が何とも言えなくて。あと、目的地まで1日数本しかないバスに乗ろうとしていたら、宿泊先のおかみさんが車で乗せてあげるよと言ってくれたこともありました。
身近な古さが福井にはある
昨年、ふくいムービーハッカソン(福井駅前を舞台に3日間で映画をつくるプロジェクト)の番外編の「日々」の撮影に参加しました。駅前の三角地帯が再開発で変わっていく様子を背景に撮る映画でしたが、私が暮らし始めた頃がちょうどその変化が顕著な時期だったと思います。
アメリカ、特に私が生まれ育ったボストンは古いものに価値を見出して残していきます。そこまで福井の歴史を知らないし、話を聞き始めたくらいなんですけど、この変化を目の前で見ていると、どうしても複雑な気持ちになりますね。
私は二世代前くらいの、戦災や震災で直した福井の身近に感じられる古さが好きです。
もちろん京都とかの歴史的な美しい古さは素晴らしいんですけど、私には昔過ぎるかな笑。私は昭和の香りのする古さの方がいい。だから朝、よく片町を歩きまわります。雑居ビルの看板とかそういうのを見て回るのが楽しいです。
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