【鹿児島県・桜島】表現することは新しい物語のはじまり/tephra 久木田智美さん
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全国的にも有名な鹿児島のシンボルといわれる桜島。そこをフィールドに自然や暮らす人たちと向き合いながら表現をし続ける『tephra(テフラ)』代表の久木田智美さん。そんな久木田さんから桜島に関わることになった経緯や表現を通して感じてきたことについてお話を伺いました。
表現することは楽しい
幼い頃から絵を描くことが好きだった久木田さん。高校時代の恩師から教員になることを勧められ、大学は教育学部へ進学しました。
しかし、大学に入ってからは自分の力不足や周りの評価を気にするようになってしまったといいます。
「葛藤していくうちに大切なのは絵を上手に描くことではなく、表現したい気持ちを大切にすることだと気付いたんです。そう思うようになってから、その気持ちから色々な物語が始まっていくと私は信じるようになりました。それは今でもずっと変わりません。」と久木田さんは話します。
結果ばかりにのめり込んでしまうと表現の楽しさを見失い、本来持っている自分の力を発揮できないのではと大学時代を通して感じたそうです。
このままでいいのだろうか?
大学卒業後、教員生活を5年、そのうち4年を横浜で送ることになります。教員として過ごしているうちに「教員のままでいいのだろうか?」と迷いが生じてきたそうです。そのタイミングで結婚が決まり、鹿児島へUターンすることになりました。
「ゼロからやり直そう。」
そう決意し、就職活動を始めた久木田さん。元々観光や旅行が好きだったこともあり、旅行関連の会社へ就職することになります。
「誰かを案内したり旅行の企画を立てたりすることも自分が思い描いている“表現”に近いのでは?」と感じたそうです。しかし、実際の仕事内容は営業だったといいます。
「私がやりたかったのはこれなのかな?」
「やっぱり教員がいいのかな?」
そんな思いで悶々とする日々が続いていきます。
桜島が繋いでくれたご縁
そんな時、ある求人を見つけたことで転機を迎えることになります。内容は桜島の資源を活かした商品開発ができる人材募集でした。
それが現在所属している『NPO法人桜島ミュージアム』との出会いになります。
入社してからは桜島に関する基本的なノウハウを教わる日々だったそうです。覚える量が多く最初は大変だったといいます。
でも、そのノウハウが商品開発や観光ガイドを行う際に役に立ち、多くの仕事や仲間に繋がっていきました。
「桜島の歴史や、そこで暮らしたり働いたりしている人たちの小さな積み重ねがあったからこそのご縁だと思っています。」と話す久木田さん。
桜島に関わるようになってから久木田さんの新しい物語が始まっていきます。
秘めた輝きを表現する
久木田さんは6年前に火山灰を使ったジュエリーブランド『tephra』(以下:テフラ)を仲間たちと立ち上げました。
テフラとはギリシャ語で『噴出物・火山灰』を意味します。桜島の人にとって火山灰は厄介者と言われていますが、火口から噴き出た薄片(はくへん)を光学顕微鏡で覗くと色鮮やかな宝石のような輝きをしているそうです。
その火山灰の秘めた輝きを一つ一つのジュエリーに表現しています。現在チームメンバーは6名で大学時代の先輩(主婦)やそのママ友、デザイナー(夫)等、さまざま。
メンバーはそれぞれ本業や家業をこなしながら無理のない範囲で自分たちができることを形にしていっています。
最初は表現の幅が広がったらと思ってゆるく始めたとそうです。「活動していく中で私だけじゃなく、お客さんやチームメンバーの世界が広がったと実感しました。」と話す久木田さん。
選択肢の幅を広げる
ある時、メンバーである主婦のお子さんが「ママの作品がここにある!」と嬉しそうに声を上げていたそうです。
「あの時は本当に嬉しかったです。母親が楽しそうに仕事をしていることがお子さんに伝わっていくのを間近で感じれたのですから。」と嬉しそうに語ります。
桜島に関わることで、表現は「自分だけではなく他者の選択肢の幅を広げることに繋がっていくのでは?」と実感していったそうです。
そして、色々試行錯誤していく中で大切にしていることがあるといいます。それは桜島が紡いでくれたご縁に対する感謝です。最後に久木田さんはこう振り返ります。
「今があるのは自分たちの力だけではなく、桜島が引き寄せる力があったからです。だから、その感謝の気持ちを忘れずに、これからも表現していきたいと思っています。」
学生時代から表現することを続けてきた久木田さん。桜島との関わりやテフラの表現を通して、これからも心踊る物語がさらに一つ一つ展開されていくのではないか。そんな未来を今回のお話を通じて感じました。
屋号 | tephra(テフラ) |
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