【神戸】FARM to FORK 2021 レポートvol.1
レポート
2021年10月30日(土)〜31日(日)に開催した、食都神戸DAY「FARM to FORK 2021」。今年は「みんなで守り育てよう!神戸の海、山、田畑。」をテーマに、様々なトークセッションや音楽ライブ、ワークショップ、そして地産の食を楽しむ2日間となりました。そんなイベントの様子をレポートしていきます。
2015年から開催している「FARM to FORK」は、地産地消を通じて海・山・田畑と都市の“心の距離”を近づけるためのお祭りです。今年ははじめて須磨海岸で開催。
秋の陽に照らされてキラキラと光る海をバックに、海・山・田畑に関連した催し物と、地産の食やモノ、体験が手に入るファーマーズマーケットで賑わいました。
遊歩道には農家さんや漁師さん、そして様々な飲食店、物販、ものづくりワークショップなど約40のテントが。今回は須磨や垂水から、はじめましての出店者さんにもたくさん参加いただき、バリエーション豊かなマーケットエリアとなりました。
砂浜でも様々な企画をご用意。ゲストトークを聞いて神戸の食やこれからの暮らしについて考えたり、音楽ライブに酔いしれたり。他にもライブペイント、焚き火料理、ビーチヨガなど盛り沢山。海をぼーっと眺める人や、砂浜で遊ぶ子どもたちもいたりと、みなさん思い思いの時間をお過ごしでした。
毎年素敵なステージを設営していただいているのは、北区淡河町に拠点を置く茅葺職人チーム「くさかんむり」。今年は、砂浜に茅を一本一本立て、その動きで海風を、そして茅と茅の隙間から海の揺らぎを感じられるステージをつくっていただきました。
ここからは、そんなステージで行われたトークイベントの様子をご紹介します。
トーク「食都神戸のこれまで/これから」
1日目のステージは「食都神戸」が始動した2015年から今までの取り組みとこれからについて、活動に関わってきた5名によるトークセッションで始まりました。
「食都神戸」とは「食文化を神戸の魅力に育てていく」ことを目指した、神戸市による中長期的な運動のこと。 FARM to FORKもその取り組みの一環として開催しています。消費者として、農家として、行政として様々な形で食都神戸の活動に参加してきた5名が、どのように関わってきたか、またその成果について報告し合い、これからの神戸の食文化について語り合いました。
生産者と消費者が毎週のように顔を合わせられるFARMERS MARKETという場が定着したこと、さらにそこでできた人々のつながりが最も大きな成果ではないかと意見が交わされました。
食都神戸では2030年に向けて、毎日の暮らしの中でできる6つの食にまつわるアクションを提示しています。ぜひこちらもご覧いただき、豊かな暮らしのヒントを見つけていただけたら嬉しいです。
トーク「URBAN FARMINGサミット」
続いて、神戸でURBAN FARMINGを実践する5名によるトークセッション。
まちなかの空き地や屋上で土を耕すURBAN FARMING。神戸市の各地で実験的な取り組みが広がっています。その中から、多文化共生ガーデン(長田区駒ヶ林)、平野コープ(兵庫区)、Sky Cultivation(中央区)、いちばたけ(灘区・水道筋商店街)、シェラトンファーム(東灘区・六甲アイランド)を運営しているみなさんに、活動を始めたきっかけや、なぜまちなかで農業をするのか、運営方法などをうかがいました。場所や仕組みは違えど、URBAN FARMINGに挑戦しているみなさんには共通の喜びや悩みも多いようです。
野菜づくりはもちろん難しいこともあるけれど、やっぱり楽しくて美味しい。それだけではなく、コミュティが生まれるという収穫も大きいのだとか。
いずれもここ数年で生まれた都市農園ということもあり、まだまだ試行錯誤中。運営方法や畑の維持についての課題を共有していくことで、これからの歩み方が見えてきました。こうした農園同士の情報共有を通して、益々まちなかに農を取り込むURBAN FARMINGの種が芽吹いていくといいですね。
トーク・岡本よりたかさん「農を暮らしの中に・自給農のすすめ」
無肥料栽培セミナーを開催し、シードバンク「たねのがっこう」を運営する岡本よりたかさんを招き、自給的な考えに基づく農や暮らしについてうかがいました。
現在は岐阜県郡上市で、農薬も肥料も使わない自給のための農業をしながら生活されている岡本さん。そんな自給的農業をはじめたきっかけは、東日本大震災とのこと。東京出張時に被災し、数日間はスーパーへ行っても食べ物がなく苦労されたそうです。ところが、その頃住んでいた山梨にやっとの思いで帰ったら、そこには自分で育てた食べ物がたくさん。それを機に「手元に食料がある」「農薬も肥料も使わない=買わなくていい、お金がなくても食べ物を自給できる」ことが大事なのだと気付いたのだとか。「お金は使うと減るけど、タネは撒くと増えるんだよ」という言葉が印象的でした。
今は豊富にある農産物。しかし今後、自然災害や食糧難などにより、いつその生産・流通が止まるかわかりません。そんな時代を生きる私たちに必要なのは「何かあったときのために、農家さん、漁師さんたちに頼るだけでなく、少しでも自給できる技術を持つことが大事だ」という強いメッセージをいただきました。もちろん食べ物だけではなく、衣服にも住まいにも言えること。輸入品ばかりに頼りすぎず、できるだけローカルなもの、自分でも繕いながら使い続けられるものや生活の選択をしていきたいですね。
トーク・高山なおみさん「おいしいを見つける、海と田畑の神戸旅」
神戸の山の麓に移住して6年目という、料理家であり絵本制作にも取り組む高山なおみさんと、神戸の海や田畑を訪ねました。この小さな旅を通じて高山さんが感じたことについてお話いただきました。
10月中旬、1泊2日で巡ったのは神戸市西区と北区の農村地域。西区はチアファーム、久國農園、ナチュラリズムファーム、北区は淡河町にあるケハレ、うちのにわ、森本聖子さん、つるまき農園、弓削牧場を訪問。行く先々で野菜・果物の収穫や稲刈り体験をして、農家さんと一緒につくった料理をみんなでいただきました。また後日、垂水漁港でのFARMERS MARKETにもお越しいただき、神戸のしらすについて漁師さんのお話を聞いたり、地産の食を味わっていただきました。
それまでは神戸に農家や漁師がいることも知らなかったという高山さん。「おいしいを見つける旅」を通じて、実際に田畑を訪れて自分の手で収穫することで「野菜も生きているんだ」とあらためて感じられたとのこと。硬かったり、柔らかかったり、小さかったり、癖があったり…。それは私たち人間と一緒。個性を見つけられる感覚を身につけると、野菜もより愛おしく感じるものです。だからこそ、少し元気のなくなった野菜も、初めて出会った種類のものも、使い切ることが大事。「野菜に触れてよく観察することで、どう料理したらいいのかわかってきますよ」と教えていただきました。
これまで様々な国の食材や料理に出会ってこられた高山さんですが、すっかり神戸の「おいしい」も見つけていただけたようです。
以上、各トークの全容はEAT LOCAL KOBEのインスタグラムIGTVよりご視聴いただけます。
・URBAN FARMINGサミット
・岡本よりたかさん「農を暮らしの中に・自給農のすすめ」
・高山なおみさん「おいしいを見つける、海と田畑の神戸旅」
またレポート第二弾では、農林漁業者による海・山・田畑のつながりをテーマとしたトークセッションの様子をご紹介。近日公開予定ですので、そちらもぜひお楽しみに。
Photo=片岡杏子(一部除く)