【北九州】大人の社会科見学/伝統織物「小倉織」の技術が生きる新しいデニム「KOKURA DENIM」
インタビュー
「小倉織」という織物をご存知でしょうか。
江戸時代初期から袴などに使われていた、北九州市を代表する織物です。この、丈夫で高密度の生地を織る伝統の技術を用いて、2021年、新しいデニム生地「KOKURA DENIM」が生まれました。
この生地で作ったデニムパンツは、初販で完売するほどの人気ぶり。伝統織物、小倉織のファクトリーブランド「KOKURA DENIM」の製造現場に伺いました。
小倉織のアイデンティティが生きた、霜降(しもふり)グレーのデニム
デニムといえば、おしゃれには欠かせないアイテム。タフで履き心地が良いジーンズは、カジュアルファッションの代表格です。
カジュアルなデニムとは無縁とも思える伝統的な織物工場で、どうしてKOKURA DENIMが生まれたのか。小倉織物製造株式会社の代表・築城弥央さんにお話を伺いました。
「新型コロナウイルスの影響で、この工場でも一時生産をストップしたのですが、その間になにかできることはないかと考えたのが始まりでした。時間もたっぷりあるから、新しい製品を開発しよう。だったら小倉織らしいものがいい。そこでヒントになったのが小倉織にもともとある『霜降小倉(しもふりこくら)』という生地でした。明治〜昭和初期には学生服や作業着として愛用されてきた生地です。
当時、地厚で丈夫な小倉織のニーズは高く、小倉以外の場所でも同じような織物がつくられていました。そうした織物は『備中小倉』や『土佐小倉』というように、小倉織を意味する『小倉』と地名を組み合わせて呼ばれ、小倉織は全国に流通したそうです。
今、国産デニムの産地として知られる岡山県井原市は、『備中小倉』の技術を受け継いだ場所。つまり日本のデニムのルーツを辿ると、小倉織に行き着くことに気づいたんです。それでデニムをつくろう!ということになりました」
KOKURA DENIMは霜降小倉の生地の特色を生かし、ブルーデニムではなく“霜降グレー”にこだわり、開発は糸を作るところからはじまりました。白糸と黒糸を撚りあわせる「撚糸(ねんし)」を請け負ってくれる業者を探し出し、糸の撚り具合も試行錯誤が重ねられました。
糸ができあがると、今度は織りの試作です。
「ルーツとなる小倉霜降に近づけたくて、試作は10パターン以上織りました。同じ糸を使っていても、表情や風合いがまったく異なって見えます。先人たちの小倉織があったからできる挑戦なので、KOKURA DENIMにふさわしい織りを追求しました」と築城さん。
小倉からデニムの本場アメリカへ
完成したKOKURA DENIMの最初のプロダクトは、海を越え、アメリカで先行デビューを果たしました。
「ハカマデニム」と名付けられたこのアイテムは、世界的に知られるファッションブランド「アンリアレイジ」のデザイナー・森永邦彦氏のデザインによるもの。
和装の平面構造とジーンズの立体構造とを組み合わせた不思議なデザインで、幅広いウエストを袴のように巻きつけて着ると、今までに見たこともないような斬新なシルエットが現れます。
どんな体型の人でも、その人らしく着こなせるパンツは、多様性の時代に合ったアイテムともいえそう。ブルージーンズとも、無地とも違う、独特な霜降模様の生地が、個性的なデザインを引き立てています。
築城さんは「デニムという身近な生地だからこそ、アパレルに限らず、インテリアや建築など、広い分野で展開ができると思っています」と、小倉織の新しい顔となっていくことを期待しています。
北九州のファクトリーブランドとして、今後の展開も楽しみにしていきたいです。
(取材/文:岩井紀子 写真:清原裕也)
●初回販売ではすぐに完売するほどの人気だった「ハカマデニム」。
現在は「小倉 縞縞 本店」にて受注販売を行っています。受注販売はこちら
名称 | 小倉織物製造株式会社 |
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URL | |
TEL | 093-953-8388 |
営業時間 | 平日9:00 〜 18:00(土日祝は休業) |
備考 |