【鹿児島県姶良市】今私がここにいるのは、そばで寄り添ってくれる人たちがいるから/コミュニティナース 山下えりかさん
移住者の声
鹿児島県姶良(あいら)市北山地区に移住し、コミュニティナースとして活動されている山下えりかさんにインタビュー。コミュニティナース(※)の活動や北山に移住するに至った経緯、これからの展望について伺いました。
病院から地域に入ることのできない“もどかしさ”
元々小さな街で育ってきた山下さんにとって、都会の暮らしや仕事は中々馴染む環境ではなかったといいます。故郷の鹿児島へ戻りたい気持ちが強く、25歳の時にUターン。
その後、様々な科で経験を積みたい想いから、県内の病院を転々とすることになります。
そんな時のことでした。自身が担当されていた透析患者が薬を飲めない、自分で食事の管理ができない等の問題に直面。
「問題が色々あるからこそ、その患者さんの生活がどういう状況か非常に気になってしまったんです。」
「でも、病院勤務の看護師である私は病院から出て、在宅に足を運んでその患者さんと関わることができませんでした。それがもどかしくて。」
そこから山下さんは「患者と在宅でも関われる道はないか?」と考えるようになりました。
情報収集をしていると、姶良市にある『北山診療所』の求人募集を発見。北山は姶良市の中でも高齢化率が約65%と過疎化が進んでいる地域でした。
元々、小さい頃から自然が好きだったことや地域の人たちに寄り添う形で仕事ができるのではないかという想いもあったことから、求人に応募することにします。
コミュニティナース・山下えりかさん
コミュニティナース
顔をすぐに覚えてくれたり、地域のことを色々教えてもらったり。一つ一つの出来事が居心地の良いものだったといいます。
そして、2つの出来事が北山での活動や移住へのきっかけとなりました。
1つ目は北山校区コミュニティ協議会の会長・内甑さんとの出会いでした。
北山の現状や問題と向き合いながら将来を見据えて動いている姿に「私も一緒に地域で何かできたら。」と思うようになりました。
2つ目は矢田明子さん著『コミュニティナース』を読んだこと。
何気なく手にした本には山下さんにとって看護師の概念が180度変わるような内容が詰まっていました。
「すごい、こんな考え方をしている人が日本にいるんだ。」
その後、内甑さんにコミュニティナースのことを話すと
「北山に住みながら、その活動をするといいよ。」
それだけではなく、地域の人に山下さんのことや活動について話をする機会をセッティングしてくれたりと率先して背中を押してくれたといいます。
そして2020年に北山へ移住。地域の未来を見据えて、診療所を退職し福祉関連の仕事をしながらコミュニティナースとして活動していくことになりました。
矢田明子さん著『コミュニティナース』
何気ないことの繰り返しの先に
「まずは顔を覚えてもらうことから考えて地道に足を運んでいます。」
「お会いする機会がない方や顔がわからない方には活動紹介をまとめた紙を作って配布してまわることもしています。」
数ヶ月前のこと。サロンに来ていたある高齢者の足を見ると怪我をしていたといいます。
血腫ができていたため、急いで親族に連絡。何とか連絡がつき、即入院となり治療を受けることができました。
話を聞くと、怪我に対して本人(高齢者)や親族は「問題ない。」と判断し、そのまま放置していたとのこと。
今は元気に暮らしていて、親族からはお礼の連絡があったそうです。
この経験や活動を通して感じたのは、看護師としてのある程度の経験や地域に根付いて地道に関係性を作っていくことの大事さでした。
「病院に勤務していた時代にほとんどの科を経験していたからこそ、直面した症状に対してどう対応するか判断できていると思います。」
「そして、地道に顔を合わせて信頼関係を築いているからこそ、地域の人が抱えていることを打ち明けてくれたり相談してくれたりするんだと実感しています。」
ただの地域住民、+αで看護師でありたい
山下さんは現在シングルマザーで発達障がいを抱えるお子さんと2人暮らしです。
コミュニティナースとしての活動や仕事、そして、お子さんと過ごす時間で悩んだ時期もありました。そんな時に支えてくれたのは北山の人たち。
「「最近、元気にしているの?」と声をかけてもらったり、子供と楽しそうに遊んでくれたりしてもらっています。北山の人たちがいるからこそ、私は今ここで生活できているんです。」
最近は畑を借りて綿花の栽培を進めていて、地域のおばあちゃん達に綿花を活用して糸を作ってもらえたらと妄想しているそう。
綿花以外にもやりたいことが多く、北山で何か産業を作れないか模索している段階です。
北山の最大の魅力はお互いを思いやる相互扶助の関係性があること。その関係性があるからこそ先が見えなくても地域で色々と活動ができていると話します。
「コミュニティナースとして活動はしていますが、私はただの地域住民。たまたまプラスαで看護師であって「何かあったら聞いてね」といったスタンスでいたいと思っています。」
「北山を消滅集落にしたくありません。何ができるかわかりませんが、地域を知ってもらって移住者を増やし、ここに住んでいる皆さんが安心して暮らせるような活動をしていきたいです。」
特別なことではなく、目の前にある何気ないことを大事にしている山下さん。
その姿勢から「肩書きがどうこうではなく、地域住民としてどう動いていくか?」といった本来地域で生活する上で根幹にあるモノを思い出させてもらいました。
※『人とつながり、まちを元気にする』コミュニティナースは、職業や資格ではなく実践のあり方であり、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプトです。
地域の人の暮らしの身近な存在として『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒につくり、『心と身体の健康と安心』を実現。その人ならではの専門性を活かしながら、地域の人や異なる専門性を持った人とともに中長期な視点で自由で多様なケアを実践しています。
実践の中身や方法は、それぞれの形があり、100人100通りの多様な形で社会にひろがり始めているところです。
(『Community Nurse Company』 HPより参照)
屋号 | コミュニティナース |
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URL | https://www.instagram.com/kitayama_nurse_y/ |