越前丹南、日常に触れる旅8/漆器の産地ならでは!漆塗りグラスで福井の地酒を飲み比べ!
体験プログラム
日常に触れる旅と題して、福井県丹南地域のローカルトライアルツアー第8弾を紹介します。アーカイブはこちらからどうぞご覧ください。
こんにちは!real local福井ライターのふるかわともかです。今回のトライアルツアーは、鯖江市河和田(かわだ)地区にある温泉宿泊施設、ラポーゼかわだで日本酒を飲み比べるツアー。越前漆器の産地として有名な河和田地区で、漆塗りを施したオリジナル酒器で福井の地酒を飲み比べてきました。それではさっそくツアーの様子を紹介します!
泉質抜群の温泉施設!ラポーゼかわだ
トライアルツアーの会場であるラポーゼかわだは、鯖江市河和田地区にある温泉宿泊施設。ラポーゼかわだの温泉は「美人の湯」「長寿の湯」と言われており、お肌がすべすべになる重曹泉と、動脈硬化防止に効果がある芒硝泉が同時に含まれているめずらしい温泉。筆者もラポーゼかわだの温泉が好きで、ときどき日帰り入浴に訪れています。温泉以外にパン作りなどの体験もできる施設なので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!
今回の会場は、ラポーゼかわだ1階にあるレストランほたる。地酒の飲み比べツアーは、当日ラポーゼかわだに宿泊されているお客様にご参加いただきました!
日本酒専用グラスに漆塗り!?トライアルツアーのオリジナル酒器
今回のトライアルツアーに使用する酒器は、日本酒専用のグラスに漆塗りを施したもの。「ん?日本酒専用のグラスってなに?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。日本酒専用グラスとは、ワイングラスメーカーが開発した日本酒を飲むためのグラスなんです。日本酒はおちょこのイメージが強いのでびっくり。ワイングラスのような見た目ですが、日本酒を飲むのに最適な形状をしているんだそう。しかも、純米酒と大吟醸でグラスの形状が異なるんです。
日本酒専用グラスの詳細を知りたい方はこちらからどうぞ。
https://shop.riedel.co.jp/lp/junmai/
https://mi-journey.jp/foodie/28060/
純米酒用のグラスは、純米酒のうまみを最大限感じられるように飲み口が広くなっているのに対し、大吟醸用のグラスは、香りを閉じ込めるために飲み口がやや狭く、深さのある形状をしているのが特徴です。
今回のツアーでは、日本酒専用グラスに特別に漆塗りを施しました。漆塗りのグラスは、越前漆器の産地ならでは。漆を塗ってくださったのは、鯖江市河和田地区にある老舗漆器店の錦古里(きんこり)漆器店さん。普段職人さんは透明なグラスに漆を塗る機会はほとんどないそうですが、今回のツアーのために特別に塗ってくださったとのこと!ありがとうございます!
グラス自体は透明なので、生漆(きうるし)の茶色っぽい色合いがよくわかりますね。しかも漆の経年変化によって、少しずつ色合いも変わっていくそう。天然塗料ならではの楽しみですね。
やっさんによると、日本酒専用グラスに漆塗りを施すことで、見た目だけでなく日本酒を口に入れたときの風味も変化するんだそう。また、漆には抗菌作用があると言われており、衛生面でも効果が期待できます。
やっさんが今回のトライアルツアーの参加者のみなさんにご挨拶。グラスの違いや漆の効果について説明した後、「漆の魅力を存分に感じてくださいね!」と、始めました。
本日の地酒ラインナップ!
この日の日本酒のラインナップはこちら。
・「伝心」 純米酒、純米大吟醸
・「白龍」 純米酒、純米大吟醸
・「梵」 特別限定純米酒
・「おしどり」 河和田地区のお米を使ったなかなか出回らない地酒
全6種類のかなり豪華なラインナップ。福井県内でもなかなかお目にかかれない「おしどり」までありました。こんなにたくさんの福井の地酒を見る機会はなかなかないので、筆者もわくわく!
いざ、飲み比べ!
参加者は1組ずつ交代で飲み比べにチャレンジ。最初はみなさん緊張していた様子でしたが、緊張が解けてきたのか、「次、飲み比べしたいです」と徐々に手が上がるようになりました。
用意された酒器は、お水を飲む通常のグラス、日本酒専用グラス(漆塗りなし)、日本酒専用グラス(漆塗りあり)の3種類。日本酒専用グラスは純米酒用と大吟醸用の2種類がスタンバイ。
まずは飲み比べたい地酒を選びます。
飲みたい地酒が決まったら、お水を飲む通常のグラスで地酒を飲んでみます。続いて、漆塗りをしていない日本酒専用グラス、最後に漆塗りを施した日本酒専用グラスで同じ地酒を飲み比べます。
なにか違いはあったのでしょうか?参加者に感想を聞いてみました!
日本酒専用グラスでは、「味がスッと入ってくる!」「スムーズ!」と言った感想が出てきました。グラスの飲み口が薄いので、まるで別の日本酒を飲んでいるみたいだそう。漆塗りを施した日本酒専用グラスは、まず見た目の色が違うのと、口当たりが少しまろやかに感じたそう。やっぱり違いがあるんですね〜!
他の参加者も、順番に飲み比べにチャレンジ。
最初の参加者と同様に、飲み比べしたい地酒を選び、お水を飲む通常のグラス→日本酒専用グラス(漆塗りなし)→日本酒専用グラス(漆塗りあり)の順に飲み比べていきます。普段あまりお酒を飲まない方も、「せっかくだから」と飲み比べに参加してくれました。
漆塗りを施した日本酒専用グラスでは、グラスの見た目や香り、味の違いを感じていました。グラスからは、漆の香りがほんのり感じられたそうです。
その後もたくさんの方が飲み比べに参加しました。「生漆の色がいいねえ」とグラスを眺めて喜んでいる方や、「漆の塗りムラがいい!」と言っていた参加者もいました。塗りムラは、漆塗りの職人さんとしてはあまり見られたくないものだそうですが、参加者は塗りムラを「個性があっていい」とポジティブに捉えているようでした。
それではいよいよ…筆者も飲み比べにチャレンジ!
お水用のグラスで地酒をいただいた後、日本酒専用グラスで試飲。口あたりがガラっと変わって衝撃でした。グラスのフチの厚みがこんなに重要だとは…!今回使用した大吟醸用グラスでは、グラスの底にたまった日本酒の香りが鼻からスッと入ってきて、より香りを楽しむことができました。さすが大吟醸のために設計されたグラスです。
また、漆塗りのグラスでは、生漆の茶色によって見た目がシックな印象に。日本酒を口に入れた際の味わいも、漆塗りされていないグラスに比べてほんのりやわらかい印象を受けました。普段見かける漆塗りの製品は木製のお椀が多いので、「ガラス×漆塗り」は新鮮で、「ガラスにも塗れるんだ…」と漆のポテンシャルを感じました。
好きな酒器を選ぶ楽しさ
今回のトライアルツアーを企画されたJTBの石原さんに話を伺いました。米の生産が盛んで水がきれいな福井県では、現在も約40の蔵元で酒造りが行われています。石原さんは、これまでの「福井×日本酒」に「酒器」をかけ合わせ、「福井×日本酒×酒器」の観光体験を目指しているのだそう。
「福井は伝統工芸やものづくりが盛んな地域で、陶器や漆器などの酒器が充実しています。また、福井の地酒には根強いファンも多くいらっしゃるので、お酒を好きな人がお気に入りの酒器を見つけるという観光体験があってもいいと思うんです」と石原さん。
福井に旅行に来た人が、好きな地酒とお気に入りの酒器を買って帰る…。これってすごく素敵な観光体験ではないでしょうか?「地酒」「酒器」という入り口から福井の工芸やものづくりに触れるというのは、これからの観光の新たな切り口になるかもしれません。
今回のトライアルツアーは、漆器の産地で、漆塗りの酒器で福井の地酒を飲み比べするという内容でした。このようなツアーをきっかけに「こういう酒器がほしい」と思った人に、製造する工房を紹介できる産地の観光案内所がこれからできることを期待したいです。
「福井の観光は観光地を巡るだけじゃない!」ということが実感できたローカルツアーでした。
(文:ふるかわともか、写真:松倉健太郎)