宇宙から見た、じぶんの場所を
登山地図アプリ「YAMAP」 春山慶彦さん
「高い山でなくていい、あくまで身近な自然に触れてもらうきっかけにしてもらえば。大事なのは、近所の山から自分の住む街を見下ろす視点を持つことなんです」
アウトドア向けスマートフォンアプリ「YAMAP」を開発するベンチャー企業、株式会社セフリ。その代表である春山慶彦さんは、このアプリを開発した目的をこう語る。
YAMAPは、登山などのアウトドア時、携帯の電波が届かなくともスマートフォンに搭載されたGPS機能を使い、現在位置やルートなどが確認できるアプリだ。また、写真や日記・登山記録などを共有し、上級者からのアドバイスを受けたり、アウトドア仲間とのコミュニケーションツールになるなど、SNS機能も備えている。
この構想のきっかけとなったのが、2年半のアラスカ留学経験。24歳の時だった。
いざ行ってみると、年間の最大温度差は80℃、季節や太陽の動きにより気候や動植物が目まぐるしく変化する環境に衝撃を受ける。そんな中、印象的だったのがオーロラ。これを目の当たりにすることで、宇宙を身近な存在として感じることができたという。
この環境を何千年と経験し順応してきた現地の民族、イヌイットには、「宇宙から自分の位置を俯瞰し、自然と共に生かされている」という世界観が深く根付いている。反面、都市に暮らす現代人の生活を振り返ると、そのギャップに思わず危機感を覚えた。
「何千万年という人類の歴史の中で、自然の中で身体を動かすことをせずに生きているのはここ数十年だけだということに気付いたのです」
現代の社会は都市化が進み、生活における利便性は増した。だが、自分で身体を動かさずに食べ物や欲しい物が手に入るようになるにつれ身体性は衰え、自然に対するありがたみも希薄化している。
そんな中、近年において、それを僅かながらも覆すチャンスが訪れたという。スマートフォンの登場だ。GPS機能が搭載されている為、それを持つ誰もが宇宙の中での自分の位置を確認できるようになった。これにより、「宇宙からの視点を持つ」ことに近づけることができるのではないか、と春山さんは思った。
GPS機能を最大限活かしたアプリを作ることで、自然に触れる機会をさらに増やし、自然の中で身体を動かすことの楽しさに気づいてもらえる仕組みができれば。
春山さんのこの崇高な想いが通じたのか、リリースしてから2年でダウンロード数は10万を超えた。気軽且つシンプルながら高機能である点が、アウトドア愛好者の間で高い評価を得ている。
失礼ながら、春山さんはITベンチャーによく見られるイケイケな起業家というイメージとは正反対。ある種、悟りを開いた高僧のような、淡々とした口調の言葉一つ一つに、確固たる意思が込められているように感じる。
とは言え、福岡でビジネスを展開することについては、笑いながらこう答えてくれた。
「福岡だからこそコツコツできましたが、東京でこれを作っていたら今頃潰れていたでしょうね」
情報が多く競争が激しい東京のような環境は、切磋琢磨はできるが、消耗もし易い。
自分の理念を虎視眈々と貫くには、春山さんのように拠点を地方に置く選択肢もきっとあっていい。未来の起業家にとって、この存在は大きな道標となるはずだ。
※本記事を最下部までスクロールして頂くと「YAMAP」のプロモーション動画がご覧頂けます。
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