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【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。

インタビュー

2022.03.15

山形県村山市で、新たな雇用を生み出す株式会社ローカルブライトCEO鈴木祐一郎さんと、COOの五十嵐勇人さんにインタビューしました!

村山駅前に街のスポーツ店として、古くから存在する「富士スポーツ」。そこには、もうひとつの会社が存在する。2020年に設立した「ローカルブライト」というデザイン会社だ。「スポーツ店でデザイン会社ってどういうこと?」と思ってしまうが、実はそこに「通販」や「マーケティング」といった共通点が。新しい戦略で、村山市に新たな雇用を生み出すローカルブライトの企業スタイルを伺った。

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
株式会社ローカルブライトCEOの鈴木祐一郎さん(左)と、COOの五十嵐勇人さん(右)。

“売れる見せ方”と“高いデザイン性”の
両方が強みの会社

CEOの鈴木祐一郎さんは大学進学のために上京し、その後都内で大手飲料メーカーに就職。12年前にご家族の病気がきっかけでUターンしてきた。家業であったスポーツ店「富士スポーツ」を受け継ぎ、その後ネットショップをオープン。

鈴木「スポーツ店のお客さんは、村山市の人口減少とともに除々に少なくなっており、このまま実店舗だけで続けていっても経営が厳しくなっていくだけだと思いました。せっかく戻ってきたのに、この状況はマズイと思ってネットショップをやろうと決めたんです。とは言ってもパソコンには強くないし、通販のノウハウもない。オープンすると決めてからプログラミングを含め、通販で売る方法の勉強を始めました」

楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングといった大手ショッピングモールに出店。最初は通販サイトのシステムを使い、写真も見様見真似で掲載した。多少売れるようになってくると「何をどうしたら売れるのか」を考えなければいけないことがわかってくる。今以上に売上げるためには仕入れはもちろん、在庫商品を置く倉庫のある場所、サイトの作り方もいちから学んでいった。

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
村山駅前に位置する街のスポーツ店「富士スポーツ」。

鈴木「ネットショップは、サイトがオシャレだから売れるということではないんです。キレイにデザインされたサイトなのに、まったく売れていないショップは全国に五万とあります。売れるためのデザインでなければ意味がない。整頓されていることよりも大事な“売れる見せ方”というのがあるんです」

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
学生時代は野球一筋。その時に鍛えられたメンタルの強さが仕事に活きていると話す。

勉強と努力を重ね、着々と売上を伸ばした結果、現在では実店舗の5倍の売上まで成長。毎日、村山市にあるスポーツ店から全国に商品が発送されている。その中で富士スポーツに五十嵐勇人さんが加わったことが会社として大きな一歩を踏み出すきっかけを作った。

鈴木「五十嵐とは同じ高校の先輩後輩ということで、話しているうちに同じ先生に教えてもらったことや、体育会系の厳しさ、仕事に対しての考えが同じで意気投合。五十嵐となら今後一緒にやっていけると確信しました。Uターンしてきてからいつかは起業したいと思っていつでもできる準備はしていたのですが、五十嵐が来てくれたことが後押しになったと思っています」

五十嵐「大学が教育学部だったので、卒業後は4年教員をして、その後シンガポールへ。帰国後に富士スポーツに来ました。基本的に好きなことをして生きてきたので、仕事も自由にやりたかったんです。富士スポーツは繋ぎでまたすぐ海外にいこうと思っていたのですが……鈴木と話すうちに一緒ならおもしろいことができそうって思ったんですよね。熱意に押された部分もありますが(笑)」

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
鈴木さんの良きサポート役。元教員だけあって、社員を気遣う目線が優しい。

五十嵐さんも本格的にeコマース(商品やサービスをインターネット上で売買すること)の勉強を始め、これまで以上に戦略的にネットショップを運営していけるようになった。強力なタッグが生まれると、富士スポーツのネットショップの知識を活かして村山市のふるさと納税を全面的にサポートしてほしいという話が舞い込む。その中でお願いされたひとつが「村山市楽天ふるさと納税」のサイト。ローカルブライトが入ったことにより、どこにでもある楽天サイトだったものから、キレイで、そして見やすいサイトにリニューアルした。しかし請け負った当初は、デザイン面での技術はそこまでなく、デザイナーを探すところから始めたそう。

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
「村山市楽天ふるさと納税」のトップページ。東京・浅草にある浅草寺の大わらじをモチーフにしたログマークがキービジュアルだ。ロゴ、文字の色味すべてローカルブライトでデザインしている。

鈴木「ふるさと納税は、ネットを通じて寄附してもらうので、いわば通販と同じなんですね。だから富士スポーツでの実績がある僕らにとって、売る知識は自信を持って提供することができたんですが、正直なところデザインまでは追いついていなくて…。でも、サイトがオシャレであればブランディング力は高まりますし、見て楽しいサイトが作れなければ、お客さんにも納得していただけないと思いました。そこで五十嵐が東京にいるデザイナーの友人に声をかけてくれて協力してもらうことに。さらに東北芸術工科大学の卒業生を3人採用しました。それによって“売れる見せ方”と“高いデザイン性”の両方を提供できる強みを作ることができました。商品の写真撮影のディレクションはもちろん、サイト全体の色合いまで全指定。視認性を高め、自然と寄附ボタンを押してしまうような作りにしています。売り方と売れるための戦略的なデザインを一元化できているのは、県内でも弊社だけだと思いますよ」

五十嵐「僕が声をかけたのは東京ですでに活躍しているデザイナーだったので、新規雇用したデザイナーたちがわからない部分はリモートで教えてもらっています。弊社がコロナ禍でのスタートだったこともあって、東京のデザイナーと山形のデザイナーは一度も会ったことはないんです。だけど、ウェブで繋げばいつでも顔を見て話せますし、わからないことは聞くこともできます。働いている場所は関係なくなってきていますよね。都会だからできる仕事という感覚はなくなってきているようにも思います」

鈴木「デザイナーは社員もいるし、副業で入ってもらっている人も何人かいます。大手外資系IT企業の社員もメンバーに入ってもらっていて、最先端の情報を共有していただいているんです。そのスタッフは世界中を飛び回っていますし、田舎でも都会でも関係ない時代になってきていると思います」

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
「出会ってから意見が合わないことはない」というおふたり。息ピッタリだ。

村山市で100人雇用が目標
クリエイターが働きたい会社に

デザイナーを正式に雇用し、2020年にデザイン会社「ローカルブライト」を設立。村山市をはじめいくつかの自治体のふるさと納税支援、企業のネットショップ支援、ロゴやサイトデザインといったクリエイティブディレクションの3本柱で事業を展開している。 

鈴木「起業するときに、給料水準の低さをどうにかしたいというのをひとつの課題としました。これは村山市だけでなく、地方で働く課題だとも思っています。周りを見ていると、基本給が少ないから残業代で給料を上げるのが当たり前で。でもそれって違いますよね。3時間働いて同じ給料を貰えたら、それがいいに決まっています。若手に雇用をと言いますが、低賃金で雇用を生んでも何もいいことはありません。だから、弊社は働く時間が短くても圧倒的な結果を出せばいいという考え。10時から19時が就業時間ではありますが、時間の使い方は自由にしてもらっています。デザイナーとしてクオリティを上げるためにも美術館に行って感性を磨いてもらいたいですし、今は難しいですが、海外旅行にも積極的に行ってほしい。会社に来なくても仕事の結果を出してくれさえすれば、就業時間をそういう時間に使ってもいいと思っています」

 五十嵐「スタッフたちにはできないことを『無理』と決めつけるのではなく、常にできる方法を考えることを身につけてほしいと言っています。その中で社員が楽しいこと、頑張りたいことを応援するのが僕らの役目。やりがいのあることを一生懸命やれる職場でありたいと考えます。社員が成果を認めて貰えない状況は作りたくない。社員1人ひとりの幸せを本気で考える会社こそが成長するということを我々が証明できればと思っているんです」

鈴木「社員には、どうすると自分の可能性が広がるかを常に考えてほしいと伝えています。そのために私が準備できるのは、環境づくり。大手外資系IT企業の社員や、東京で最先端のデザインを手掛ける人材などに参加してもらうことで、一流の仕事に触れ、たくさんのことを吸収してほしいと思っています。また優れたスキルがあることはもちろんですが、『人に寄り添う優しさ』や『コミュニケーション能力』なども尊敬できる部分があるからこそ、参加してもらっているんです。ローカルブライトではそういった”心のあり方”を大切にしていますし、1人ひとりにその心があればもっと可能性が広がり、みんながイキイキとして働けると思うんです。今のところ、いちばんイキイキしているのは、五十嵐かもしれませんが(笑)」

五十嵐「コロナ禍になる前は、海外に2週間ほど行って、ワーケーションすることもありました(笑)」

鈴木「今年の夏にはオフィスを『Link MURAYAMA(リンクむらやま)』に移す予定。広くなるので、デザイナーも増やしていきたいと考えています。将来的には100人は雇用したいですね。村山市で100人を雇用するというのは、挑戦的なことだとも思っていて。デザイナーなどのクリエイターと呼ばれる仕事を田舎でするのは難しいと思う人は多いと思うんです。だけど村山市にいても十分やれるんですよ。今やウェブ会議は当たり前ですし、村山市でも最先端の技術に触れることはできる。この1年は、村山市でクリエイターとして働きたい人の環境を整えることもやっていきたいです。『田舎なのに、なんでこんなに優れたクリエイターがいるの?』と思われる会社にしていきたいですね」

【山形・村山市】村山から世界へデザインを発信。「ローカルブライト」はクリエイターがイキイキ働き、成長できるデザイン会社。
Link MURAYAMA内のオフィスイメージ。社員が働きやすい空間にする予定。

ローカルブライト https://localbright.co.jp/

写真:伊藤美香子
取材・文:中山夏美