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【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

体験プログラム

2022.03.24

山形県河北町町役場が主宰している「移住体験」プログラムに参加してきました!

フリーランスでライターをしている柳澤智子と申します。田舎暮らしやアウトドア・登山、自然食のジャンルを中心に雑誌、書籍で企画・執筆をしています。中期〜長期の地方出張が多く、パソコンと電話があればわりとどこにいてもなんとかなるこの仕事。子どもが成人し、暮らし方や働き方を考え直していた、ここ数年。東京と実家がある関西での2拠点生活をゆるく試していた私を、「移住体験してみませんか?」と招いてくれたのは山形県河北町。東北圏での生活は経験したことがないため、興味はかなりある!3泊4日で、移住体験をしてきました。

後編はこちら

飛行機で1時間。羽田空港からおいしい山形空港へ

東京から河北町へのアクセスは、公共交通機関なら飛行機か新幹線が便利。

飛行機は、羽田空港―おいしい山形空港間のJAL定期便があり、フライトはたった1時間。1日2往復、朝の便は少し早い時間だけど、その後の時間を有意義に使えると考え、飛行機を利用することに。

空港の愛称が「おいしい山形空港」っていうんですね。おいしいには、見事という意味もあり味のことだけでなく、「食、景色、祭り、温泉などすべてが見事だ」という思いを込めた愛称だそう。俄然、高まる期待。

おいしい4日間にしたいわぁ。

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
8時15分には到着。これから3泊4日、よろしくおねがいします。おいしい山形空港のよさは、街と近いこと。空港から河北町までは車で10分!山形市まではシャトルバス、河北・東根・天童・村山・寒河江までは完全予約制の空港ライナーがある。空港内にレンタカー5社(トヨタレンタリース山形、日産レンタカー、ニッポンレンタカー、オリックスレンタカー、タイムズカーレンタル)の受付カウンターも。今回の移住体験では3日までの料金が無料になるため、レンタカーを利用。

仮住まいは、立派な一軒家

今回の移住体験は、河北町町役場が主宰しているもの。対象は町外に住所を有する方で、河北町への移住を希望または検討している方。最低3泊4日〜最長7泊8日まで、町役場が用意してくれた家に滞在しながら、移住後の人生の可能性を探ることができるのだ(※手続きに時間が少しかかるため、滞在したい日にちの14日以上前までに必要な手続きをお願いします)。

子どもが成人したことがあり、「新しい環境に身を置いてみたい」となんとなく考えていた私。新しい環境といっても、全部がまっさらになると困る。これまでの生活の3割くらいがいい。その意味で2拠点生活はちょうどよく、まわりには多拠点で生活し働く友人たちが多い。特に、山形の山間部にも拠点を持った先輩の暮らしは、山菜をとったり養蜂を始めたり、私が大好きな漫画『リトルフォレスト』(五十嵐大介/講談社)そのもの。その様子を見聞きしては、羨ましく感じていたわけです。

しかし、見聞きするのと自ら経験するのは大違い! 慣れない雪国で本当にやっていけるのかは、私にとって大きな問題。この河北町の移住体験は3回まで利用できるというから、一度だけでなく二度、三度、滞在できるチャンスがあるのはありがたい。

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
今日から河北町の我が家となるのは、街の中心にある2階建て・5DKの一軒家。1階にはキッチン、和室3部屋、2階には和室2部屋という広さ。木を活かした外観、宿のような広い玄関、そしてオール和室。ぬくもりある日本的な住まいにぐっときた。Wi-Fi完備、仕事用のデスクも用意され、快適にパソコン仕事ができる。

野菜、米、酒……。河北町で食材の買い出しへ

荷物を片付けたら、さっそく外へ出かけることに。国道沿いには大型スーパー、ドラッグストア、クリーニング店、病院、子育て支援施設などが集まっていて生活には困らなさそう。

しかし、街のことを知りたいなら、地域に密着した個人商店や食堂を訪ねたい。オンラインでいくらでも買い物ができるようになった今でも、野菜は八百屋で、魚は鮮魚店で、ワインは酒屋で、とプロにどうやったらおいしいかを教えてもらいながら買いたい。好みのお店がひとつ見つかると、とたんにその街に信頼と親近感が湧く。たった数日の滞在ならスーパーでも十分揃うのだが、どうやら河北町にはナイスな店主が営む店が多くあるらしい。事前に、町役場の方からおすすめをうかがって、食材、お酒、文房具店などを、道を覚えつつまわった。

酒屋の『源八』は、一歩入ってしびれてしまった。自然派ワインが多く「いろいろな種類があって楽しいよ」とは聞いていたけれど、日本のものにしても輸入にしても酒造りに真摯な作り手のものばかりで、店主が作り手と信頼関係を結んでいないと仕入れることすら難しい銘柄も。酒離れが進み、安く大量に販売する酒屋が増えるなかで、源八はしっかりと本来の美酒とはなにかを伝え、酒文化を支えようという気概をひしひしと感じる。源八が日常にある河北町の人がうらやましい。

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
日常のなかで気軽に飲める質のいいワイン、日本酒ばかり。わかりやすく描かれたポップも素晴らしい。レジ脇には、自然派ワインに真剣にとりくむイタリアの作り手たちのサインも。 山形でも、自然の方法に乗っ取りぶどうを育て醸造するチャンジングなワイナリーがたくさんある。そんなお話をうかがいながら、滞在中に飲む分2本と自宅用に6本購入。あまりにお店のファンになりすぎて、自宅に帰ってからもまた通販してしまった。

酒屋 源八 
河北町谷地字月山堂684-1 TEL:0237-71-0890 営業時間:9001900 定休日:水曜日(営業の場合あり)

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
町役場前にある八百屋さん「クラッカー」。新鮮な青果だけでなく、山形の地酒や缶詰め、レトルトもあり、よろず屋的なお店。目を引くのは、果物をたっぷり使ったフルーツサンドやデコレーションされたチョコバナナ。なんと、マリトッツォまである。“のりちゃんあんだぎー”にも惹かれたがフルーツサンドに目がないので、翌日の朝ごはん用に、いちご、パイナップル、バナナ&いちご&キウイを購入。果物の贅沢な使いっぷりは、さすが八百屋。

クラッカー
河北町谷地己56-17 TEL:0237-73-3842 営業時間:9:001900(日曜のみ1800まで) 定休日:水曜日

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
「クラッカー」のすぐそばに365日、24時間開園、無料の動物園があると聞いて、のぞいてみる。山形県内唯一の動物園で、ポニー、さる、やぎ、ひつじ、きつね、うさぎ、ふくろうなど30種類以上の動物がいるそう。雪にもかかわらず、シカやヤギ、キツネは元気そうに跳ねていた。しかし、ウサギのかわいいことよ。

河北町児童動物園
河北町谷地戊81

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
地元の野菜を買いたいなら、外せない産直。河北町ではイタリア野菜の生産がさかんと聞いて、チコリの一種、トレヴィーゾ・タルティーボやセルバチコなどを買ってみる。花を咲かせたオータムポエム(アスパラ菜)など、あまり知らない野菜にテンションがあがりまくる。きのこの缶詰もレトロでかわいい! 食べ方をお店の方に聞いて、お土産に購入。

ひな産直センター
河北町谷地字下野281 TEL:0237-85-1610 営業時間:9001800 定休日:11日、2日、3

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
ライターという職業柄、ペンとノートはマストアイテム。一筆箋、封筒もよく買うので文房具店も外せない。石山商店は、表向きは“街の文房具店”という顔つきながらも、よくよく見るとあちらこちらに文房具好きの心にささるユニークなセレクトが。地酒、米、果物、スリッパ、冷たい肉そばなど、山形のさまざまな名物をモチーフにしたマスキングテープをオリジナルで販売しているそうで、3種類買わせてもらう。

石山商店
河北町谷地己19-4 TEL:0237-72-3322 営業時間:8001900 定休日:日・祝日

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
買い物がひと段落したところで、お昼ご飯を食べに「正福」へ。畜産会社が営む黒毛和牛、しかも雌専門店だ。エサの質、牛が育つ健やかな環境に配慮し、生後1000日(通常は600日から900日)たってようやく出荷する「千日和牛」を自社ブランドとしているそうで、米沢牛、山形牛の2大ブランドに迫る勢いだ。精肉も自社で行うため、夜の焼肉メニューは、新鮮でめったに食べられない貴重な部位が目白押し。昼のメニューは、ハンバーグ、シチュー、焼肉丼、メンチカツ定食の4種。旨味あふれるハンバーグに、夜の再訪を誓う。

黒毛和牛雌牛専門店 正福(まさふく)
河北町谷地荒町東2-9-8 TEL:0237-73-4129 営業時間: 11:30〜14:0017:3022:00(LO21:15) 定休日:月曜日

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
甘いものも好きなので、山形県産の素材にこだわったパティスリーへ。県内外のファンに愛される洋菓子店だそうで、店内もテイクアウトを求めるお客さんでいっぱい。クリームやフルーツを使ったケーキ、チョコレート、焼き菓子、ジェラート、クロワッサンやバケットなどパンまであり目移りする。お勧めされたのは、店名を冠するスペシャリテ「ジョワ」。ショコラムースにバナナ・くるみ・スポンジが層になっていて、コーヒーにも赤ワインにも合いそうな濃厚さ。季節ごとにメニューが変わるそうなので、ここもまた再訪を誓う。

デ・ジョワ
河北町谷地ひな市1-1-3-1 TEL:0237-72-5718  営業時間:9:00〜19:00 定休日:水曜日(祝日除く)

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
移住体験住宅のすぐそばにある、どんがホール。地域間・世代間交流しながら、町のにぎわい創出につなげていくための多目的施設で、子育て支援センターやサウンドスタジオ、私の敬愛する手塚治虫先生だけを揃えた図書コーナーなどがあり、開館時間中は誰でも利用できる。

河北町どんがホール
河北町谷地甲79 TEL:0237-73-5280 営業時間:9:00〜21:30 定休日:水曜日(祝日除く)、12月29日〜1月3日

これが芋煮魂か!雪原で焚き火

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

キャンプ好きであることを町役場の移住支援ご担当の東海林さんに話していたせいか、「焚き火をしましょう」とお誘いいただいた。東海林さんも最近キャンプにはまっているそうで、焚き火台、椅子、テーブルなど必要な道具を車にみっちりと積んで家まで迎えにきてくれた。

場所は、最上川の河原。ふったばかりの雪で覆われ、足跡ひとつついていないなか、ずんずんと道具を運び設置する。

理想とする2拠点生活の中に、「いつでも焚き火ができること」がある。

私は焚き火が大好きだ。

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なにも焚き火は、キャンプで暖をとるだけのものではない。たとえ夏でも、テレビをつける感覚で薪に火を灯し、パチパチとはぜる様子をぼんやり眺めていたいのだ。今は河原であっても焚き火を禁じる自治体が多いから、こうして焚き火ができることに驚く。

「山形は芋煮文化もあって、焚き火OKな河原は多いんですよ」と東海林さん。

わざわざキャンプ場へ行かずとも、日常のなかで思いついたときに焚き火ができるなんて!もしも、河北町に住むことになったら夕方までは仕事をして、焚き火をしながらウインナーでも炙って食べ、温泉に入って帰るのもいい……と妄想する。ちなみに登山好きの友人からは、河北町からは月山、朝日連峰などみちのくの名峰までアプローチがよいと聞き、海釣り好きな友人からは、太平洋、日本海の両方に2時間くらいで行けるから、海の状況を見てよい方に釣りにいく、と聞いた。質のいい外遊びのフィールドまでも、気負わず行けるこの立地。1泊2日でも十分に外遊びを楽しめそうだ。人生折り返し、これからもよく働きよく遊びたい。東京と河北町の2拠点生活、アリかもしれない。

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編

【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
風もなく、焚き火日和な夕方。道の駅 河北のすぐそばの階段から降り、2時間ほど焚き火を楽しむ。雪原での焚き火は初めてで炎のあたたかさや、炙ったウインナー、マシュマロ、ココア、コーンスープが染みる!

後編に続きます。

 

Photo:新井智子
Text:柳澤智子