【山形・河北町】人生折り返しで考えた2拠点生活 山形県河北町で、3泊4日の移住体験 前編
体験プログラム
山形県河北町町役場が主宰している「移住体験」プログラムに参加してきました!
フリーランスでライターをしている柳澤智子と申します。田舎暮らしやアウトドア・登山、自然食のジャンルを中心に雑誌、書籍で企画・執筆をしています。中期〜長期の地方出張が多く、パソコンと電話があればわりとどこにいてもなんとかなるこの仕事。子どもが成人し、暮らし方や働き方を考え直していた、ここ数年。東京と実家がある関西での2拠点生活をゆるく試していた私を、「移住体験してみませんか?」と招いてくれたのは山形県河北町。東北圏での生活は経験したことがないため、興味はかなりある!3泊4日で、移住体験をしてきました。
後編はこちら
飛行機で1時間。羽田空港からおいしい山形空港へ
東京から河北町へのアクセスは、公共交通機関なら飛行機か新幹線が便利。
飛行機は、羽田空港―おいしい山形空港間のJAL定期便があり、フライトはたった1時間。1日2往復、朝の便は少し早い時間だけど、その後の時間を有意義に使えると考え、飛行機を利用することに。
空港の愛称が「おいしい山形空港」っていうんですね。おいしいには、見事という意味もあり味のことだけでなく、「食、景色、祭り、温泉などすべてが見事だ」という思いを込めた愛称だそう。俄然、高まる期待。
おいしい4日間にしたいわぁ。
仮住まいは、立派な一軒家
今回の移住体験は、河北町町役場が主宰しているもの。対象は町外に住所を有する方で、河北町への移住を希望または検討している方。最低3泊4日〜最長7泊8日まで、町役場が用意してくれた家に滞在しながら、移住後の人生の可能性を探ることができるのだ(※手続きに時間が少しかかるため、滞在したい日にちの14日以上前までに必要な手続きをお願いします)。
子どもが成人したことがあり、「新しい環境に身を置いてみたい」となんとなく考えていた私。新しい環境といっても、全部がまっさらになると困る。これまでの生活の3割くらいがいい。その意味で2拠点生活はちょうどよく、まわりには多拠点で生活し働く友人たちが多い。特に、山形の山間部にも拠点を持った先輩の暮らしは、山菜をとったり養蜂を始めたり、私が大好きな漫画『リトルフォレスト』(五十嵐大介/講談社)そのもの。その様子を見聞きしては、羨ましく感じていたわけです。
しかし、見聞きするのと自ら経験するのは大違い! 慣れない雪国で本当にやっていけるのかは、私にとって大きな問題。この河北町の移住体験は3回まで利用できるというから、一度だけでなく二度、三度、滞在できるチャンスがあるのはありがたい。
野菜、米、酒……。河北町で食材の買い出しへ
荷物を片付けたら、さっそく外へ出かけることに。国道沿いには大型スーパー、ドラッグストア、クリーニング店、病院、子育て支援施設などが集まっていて生活には困らなさそう。
しかし、街のことを知りたいなら、地域に密着した個人商店や食堂を訪ねたい。オンラインでいくらでも買い物ができるようになった今でも、野菜は八百屋で、魚は鮮魚店で、ワインは酒屋で、とプロにどうやったらおいしいかを教えてもらいながら買いたい。好みのお店がひとつ見つかると、とたんにその街に信頼と親近感が湧く。たった数日の滞在ならスーパーでも十分揃うのだが、どうやら河北町にはナイスな店主が営む店が多くあるらしい。事前に、町役場の方からおすすめをうかがって、食材、お酒、文房具店などを、道を覚えつつまわった。
酒屋の『源八』は、一歩入ってしびれてしまった。自然派ワインが多く「いろいろな種類があって楽しいよ」とは聞いていたけれど、日本のものにしても輸入にしても酒造りに真摯な作り手のものばかりで、店主が作り手と信頼関係を結んでいないと仕入れることすら難しい銘柄も。酒離れが進み、安く大量に販売する酒屋が増えるなかで、源八はしっかりと本来の美酒とはなにかを伝え、酒文化を支えようという気概をひしひしと感じる。源八が日常にある河北町の人がうらやましい。
酒屋 源八
河北町谷地字月山堂684-1 TEL:0237-71-0890 営業時間:9:00~19:00 定休日:水曜日(営業の場合あり)
クラッカー
河北町谷地己56-17 TEL:0237-73-3842 営業時間:9:00~19:00(日曜のみ18:00まで) 定休日:水曜日
河北町児童動物園
河北町谷地戊81
ひな産直センター
河北町谷地字下野281 TEL:0237-85-1610 営業時間:9:00~18:00 定休日:1月1日、2日、3日
石山商店
河北町谷地己19-4 TEL:0237-72-3322 営業時間:8:00~19:00 定休日:日・祝日
黒毛和牛雌牛専門店 正福(まさふく)
河北町谷地荒町東2-9-8 TEL:0237-73-4129 営業時間: 11:30〜14:00/17:30〜22:00(LO21:15) 定休日:月曜日
デ・ジョワ
河北町谷地ひな市1-1-3-1 TEL:0237-72-5718 営業時間:9:00〜19:00 定休日:水曜日(祝日除く)
河北町どんがホール
河北町谷地甲79 TEL:0237-73-5280 営業時間:9:00〜21:30 定休日:水曜日(祝日除く)、12月29日〜1月3日
これが芋煮魂か!雪原で焚き火
キャンプ好きであることを町役場の移住支援ご担当の東海林さんに話していたせいか、「焚き火をしましょう」とお誘いいただいた。東海林さんも最近キャンプにはまっているそうで、焚き火台、椅子、テーブルなど必要な道具を車にみっちりと積んで家まで迎えにきてくれた。
場所は、最上川の河原。ふったばかりの雪で覆われ、足跡ひとつついていないなか、ずんずんと道具を運び設置する。
理想とする2拠点生活の中に、「いつでも焚き火ができること」がある。
私は焚き火が大好きだ。
なにも焚き火は、キャンプで暖をとるだけのものではない。たとえ夏でも、テレビをつける感覚で薪に火を灯し、パチパチとはぜる様子をぼんやり眺めていたいのだ。今は河原であっても焚き火を禁じる自治体が多いから、こうして焚き火ができることに驚く。
「山形は芋煮文化もあって、焚き火OKな河原は多いんですよ」と東海林さん。
わざわざキャンプ場へ行かずとも、日常のなかで思いついたときに焚き火ができるなんて!もしも、河北町に住むことになったら夕方までは仕事をして、焚き火をしながらウインナーでも炙って食べ、温泉に入って帰るのもいい……と妄想する。ちなみに登山好きの友人からは、河北町からは月山、朝日連峰などみちのくの名峰までアプローチがよいと聞き、海釣り好きな友人からは、太平洋、日本海の両方に2時間くらいで行けるから、海の状況を見てよい方に釣りにいく、と聞いた。質のいい外遊びのフィールドまでも、気負わず行けるこの立地。1泊2日でも十分に外遊びを楽しめそうだ。人生折り返し、これからもよく働きよく遊びたい。東京と河北町の2拠点生活、アリかもしれない。
後編に続きます。
Photo:新井智子
Text:柳澤智子