【鹿児島県薩摩川内市】楽しんでいる大人の背中を見せること、それが未来の子供たちへのバトンに/高江未来学校 東峯生さん
インタビュー
鹿児島県薩摩川内市の「高江未来学校」を運営されている東峯生さん。そんな東さんから「高江未来学校」を運営するに至った経緯や背景、今後の展望についてお話を伺いました。
バトミントンに夢中になる日々
中学校まで部活としてバトミントンが無い環境だったため、小さい頃からプレイをしていた選手とのレベルの差を痛感したそうです。
そんな状況でも、部活動と並行し、社会人チームに混ざって練習するぐらい夢中になっていきました。
高校卒業後は、日中は働き、それ以外の時間を全て練習に費やすことを選択。
「隣町の職場までの行き帰りを1時間ぐらいかけて走って通勤していました。」
「20歳の時に県大会で初めて優勝したのですが、九州大会で実業団チームの選手に負けてしまいました。そこから更に強くなりたい気持ちが大きくなって、環境を変えるために県外で働くことにしたんです。」
23歳の時に神奈川へ行き、そこの社会人チームに所属しながら、これまで以上に練習に励みました。
練習環境や周りの選手のレベルも違い、1日1日が勉強になったといいます。
しかし、当時バトミントンはプロ制度がない世界。
企業に所属しながら実業団の選手としてプレイすることが主だったのです。
年齢を重ねるにつれ、体力の衰えや今後の人生のことも考え、30歳になると実家のある薩摩川内市へUターンすることになります。
高江未来学校 東峯生さん
プレイヤーから指導者へ
その同級生は鹿児島で初めて立ち上がったバトミントンの実業団チームに所属していました。「一緒にチームでプレイしないか?」と声をかけてくれたといいます。
実業団に所属しプレイをする傍ら、スクール業のサポートとして東さんの娘さんを含む子供たちの指導も行っていました。
指導を始めて1年経った時のこと。娘さんが全国大会のかかった優勝決定戦で敗れてしまい、泣き崩れたことがあったそうです。
自分ごとのように悔しい気持ちでいっぱいの東さん。
「娘が悔し泣きをしているのを見て、本気でバトミントンに励んでいたことに気づかされました。」
「その時、もっと子供たちのために教えたいと思ったんです。そこから、ほとんどの時間を指導に費やしていきました。」
仕事をする傍ら、新たにバトミントンショップを作り、その利益を娘さんの遠征費等に充てていったといいます。
また、お店を作ったことで新たな変化も起きました。30代の大人や小中高生が混ざり合ったバトミントンコミュニティができたのです。
大人は楽しくプレイしながら子供たちに教えることができ、子供たちは大人からバトミントンの技術を教わることができる。
大人にも子供にも新しい発見が常にあり、良い空間が生まれていたと東さんは話します。
ピンチをチャンスに
薩摩川内でバトミントンをしていた中で生まれたご縁で、高江地区で廃校になった中学校の活用に関する話が舞い込んできたのです。
様々な業種やバトミントンの仲間たちが支えてくれたこともあり、2020年4月にオープンしました。
施設内にはバトミントン専用の体育館や宿泊部屋、食堂、学童等の様々な機能が備わっています。
高江未来学校内 バトミントン選手や運営メンバーの写真が飾られています
しかし、オープンと同時に大きな問題に直面。
それは新型コロナウイルスの拡大による世の中の混乱でした。
住んでいる街ですら移動や人との接触も厳しい状況。
子供たちの合宿の予定がキャンセルになり、体育館や宿泊の利用も壊滅的だったといいます。
そんな中でも諦めず「自分たちには何ができるか?」とスタッフと一緒に考えました。
「皆で考えていく中で生まれたのが燻製されたナッツやチーズ、塩の商品です。自分の子供たちも気に入って食べるくらい美味しくて。」
「薩摩川内市内のショップに置かせてもらうと次第に人気が出てきたんです。今では空港のお土産ショップや鹿児島市内の観光施設、市のふるさと納税でも取り扱わせていただくようになりました。」
危機的状況から一転。
知恵を巡らし、商品開発を行うことでオープン当初は想定していなかった顧客に手が届き、「高江未来学校」の輪が広がっていったのです。
自分たちが楽しくすることから未来の子供たちにバトンを
また、運営している自分たちや子供たちの未来もより良くなってほしい想いも込められています。
一緒に運営しているスタッフはほとんどが地元雇用。
それぞれの能力を活かし、日々仕事に励んでいます。
スタッフの中には中学時代の同級生も一人いるそうです。
そのスタッフにはデザインや写真等の面で関わってもらっているといいます。
「僕ができない部分を色々とカバーしてくれていて、本当に周りのメンバーに支えられています。」
「そんなメンバーと大切にしていることは“楽しく仕事をすること”です。その姿を子供たちに見せることで、地元で働くことに対して魅力が出てくると思うんです。」
「今、僕には夢があります。それは薩摩川内市にバトミントンの実業団チームを作ることです。バトミントンを当たり前にできる環境を整えて、その中で学んだことを次の世代の子供たちへバトンを繋いでいきたいと思っています。」
大人が地元で楽しんでいる背中を見るだけで、子供たちの地元に関する印象や想いは変わってきます。
「高江未来学校」で働いている人たちの姿や、そこをきっかけに作り出された環境は
未来を担う子供たち、そして、更に次の世代へと地元を愛するバトンとして受け継がれていくのではないか。
そんな気がしてなりませんでした。
屋号 | 高江未来学校 |
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URL | |
住所 | 鹿児島県薩摩川内市高江町654-1 |