【鹿児島県指宿市】道は1つではない。思いもよらぬ道を歩んでも、きっと人生は楽しめる。/D-Linxs-Plus 内田勝朗さん
移住者の声
鹿児島県指宿(いぶすき)市で古民家改修を行いながら『D-Linxs-Plus』として地域の人たちと一緒に学びの場を開催している内田勝朗さん。そんな内田さんから、指宿への移住や現在の活動に至った背景等を伺いました。
思いもよらぬ人生の歩み
昔からプラモデルや機械いじり等、“ものづくり”に興味があったそうです。
大学では機械工学を学べる学部に入学しました。しかし、くじ引きで希望とは違うゼミに入り、結果としてコンピュータを活用することを学んだといいます。
就職は関東にある自動車会社のシステム部門でデジタルに関する仕事に従事することに。うっかりしたことで就職活動の最盛期を逃してしまい、その会社しか選択肢がなかったのだとか。そこではデジタルを軸に22年間勤務しました。
「大学のゼミ選択も就職も希望した道ではありませんでした。でも、不思議と楽しく仕事ができました。それは、幼少期から好きだった“ものづくり”に繋がっていたし、人に喜んでもらえる業務だったからかもしれません。」
「元々車会社には興味が無かったのですが、中学時代に唯一「カッコいい」と思った車は就職先の会社が製造したものだったんです。そのことに気付いたのは就職してからでした。」
その後、関東のシステム会社へ転職。そこでは前職の業界とデジタルの経験を活かし、自動車担当部門へ配属され、定年の60歳まで勤務しました。
大学時代にくじ引きで入ったゼミで学んだデジタル、そして、何気なく就職した会社で従事した自動車の世界。
「思いもよらぬ道ばかりでしたが、私はこの道を歩んできて良かったと思っています。だって、定年まで積み重ねてきたデジタルや“ものづくり”の経験が、自分自身が楽しく、結果として人に喜んでもらえる仕事でしたし、今に繋がって活きているんですから。」
内田勝朗さん
ディーリンクス
次第に「指宿で自然に囲まれながら好きな“ものづくり”をしながら定年後を過ごすのも良いかもしれない」と思うようになりました。
奥様も指宿で生活することに了承してくださり、60歳の定年に合わせて家を建てる等の準備を進め、移住。
その後、奥様は地元のコミュニティに少しずつ慣れ友人を作っていきました。しかし、内田さんは人の輪に入るのが苦手だったこともあり、交流の場に出ず、友人ができなかったそうです。
移住から2年経ったある日のこと。奥様からの一言が内田さんの背中を押すきっかけとなったのです。
「お父さん、友達いなくていいの?」
ハッとなり、指宿市内で開催されるイベントを調べると、移住に関するセミナーを発見。そのイベントに何となく参加することにしました。
「イベントの中でワークショップがあったのですが、同じテーブルだった参加者との出会いが大きな転機となりました。」
「その参加者が勤めている会社が指宿駅2階にある事務所を市民向けに開放している日があることを教えてもらいました。その事務所に出入りをするようになってから指宿での繋がりが広がり始めたんです。」
内田さんが出入りするようになった事務所は『ディーリンクス』。そこでは繋がりだけではなく、その後の内田さんの動きにも大きく影響していくことになります。
趣味から地域に貢献できたら
地域おこし協力隊の若い世代や地元の図書館の職員といった幅広い交流関係を作っていきます。
そんな中、面倒を看ていた身寄りがない遠い親戚の高齢者から築100年を越える空き家を引き継いでもらえないかと相談を受けることに。
その高齢の親戚が亡くなった後、内田さんはその空き家を引き継ぎ、修繕していくことを決意します。
しかし、掃除はできても、建築の専門的な部分は全くの素人。そのため、プロの人たちに相談することにしました。
すると、プロの人は内田さんが以前参加した移住セミナーの講師だったり、指宿の地域おこし協力隊だったりと様々な場で知り合った人ばかり。
「何気なく参加したイベントで知り合った人たちが、まさか自分の家に関わるになるとは思いませんでした。」
「妻には「空き家改修を趣味にしよう」と言って始めました。だから、基本的に2人で無理のない形でコツコツ改修していこうと思っています。」
空き家の活用法として、指宿で仲良くなった友人や地域の人が様々な能力・趣味を持っている人が多いので、そういったことを通して学びの場を作れたらと考えているそうです。
「空き家改修も含めてですが、何となく趣味から始まって、そこが自然と地域に貢献できればいいなと思っています。特にデジタルは地方や田舎の活性化の鍵だと思っているので、私の得意なデジタルを教える場ができたらなと考えるようになりました。」
「昨年の夏に地域のおじいさん・おばあさん向けにパソコン講座を開催したら数名参加してくれて、そこから輪が広がってきています。」
写真提供:内田勝朗さん 地域向けに開催したデジタル講座
1つの夢にこだわるのではなく、好きなものは何か・何に喜びを感じるかを考える
「特定の夢を持つよりも「好きなことは何なのか?何に喜びを感じるか?」を軸に生きたほうが選択肢の幅が広がると思うんです。」
「軸さえあれば、そこに繋がる選択肢が出てくるし、時代の変化にも対応できると人生を通して学びました。」
幼少期から大学時代、会社員時代、そして今も繋がっているのは“ものづくり”。
それは偶然なのかもしれない。それでも、思いもよらない道を歩んでも人生を楽しめたと笑顔で語る内田さん。
昨年春には『D-Linxs-Plus』として個人事業主となりました。指宿でたくさんのご縁をいただいた『ディーリンクス』にプラスした活動を指宿で行いたいという想いが込められています。
実は『ディーリンクス』の意味は夢(ドリーム)を繋ぐ(リンク)だということ聞き、このご縁にもびっくり。
最近は指宿の仲間と「指宿をどういう街にしたいのか?」「フリーランスに優しいまちづくりとは?」について語ることが多いといいます。
「デジタルを活用して、子供たちが大きくなっても都会ではなく、地元で仕事ができる環境があればいいよねと仲間と話しています。」
「そのためには子供たちに「こんな仕事があるんだよ」と選択肢を伝える必要があると思っています。フリーランスの仲間や行政と連携して、そんな仕組みを生み出せるようにしていきたいです。」
「私にとって、そのベースとなるのがデジタルです。それで喜んでもらえると自分が嬉しい。ただ、専門家としてではなく、気軽に話ができる地域の住民として皆さんと一緒に活動していきたいです。」
人生はうまくいかないことが多いもの。
そんな時でも、考え方1つで道が拓け、選択肢は増えてくる。
たとえ、思ってもいない道を歩んでいたとしても自分が大切にしている軸に繋がってくる。
内田さんの人生の捉え方は、これから人生で様々な選択をする人たちにとって優しく背中を押してくれるものになるのではと感じました。
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