自然が育むサウンド
糸島ひょうたんスピーカー
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「ひょうたんスピーカー」って。。
趣味嗜好はそれぞれあるにせよ、音楽好きであればその名前に引っ掛からないわけがない。このサイトがオープンするにあたり、真っ先に福岡から紹介したいと思ったモノがこの「糸島ひょうたんスピーカー」。
ご覧の通り、ひょうたんからつくられており、普通のスピーカーよりも柔らかい音の鳴りで、長時間聞いても疲れないのが特徴。中音域の表現に優れていて、民族音楽や人の声、音数が少ないシンプルな音楽の再生に最適といいます。
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ひょうたんから降り注ぐ音の粒子を体験したならば、ただのオシャレアイテムとは圧倒的に違うことを思い知らされます。
糸島・二見ヶ浦で制作されるこのひょうたんスピーカー。ひょうたん自体、原産はアフリカということもあって、九州の気候も適しているようですが、何よりうなってしまうのはその生産工程。
自家採取した固定種を植えて育てることからその年の生産はスタートします。農薬や化学肥料は一切使わず腐葉土だけで育てるひょうたんは、細心の注意を払ったとしても、虫にやられることや、形やサイズが整わないこともしょっちゅう。
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ようやく実っても、その中で納得のいくサウンドを表現できる形状のものは一握り。中身を腐らせて抜き(これがまた超大変)ひょうたんのカーブに合わせて機器を取り付けるという、気の遠くなる工程をクリアして、販売までたどり着くのは年間なんと15セット程だとか。
種を植えるところから販売まで全ての工程を一手に担うのはカラヴィンカミュージックの龍石さん。
福岡市内から糸島へ移住したことをきっかけに、独学で作りはじめたといいます。
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「糸島ひょうたんスピーカー」の販売だけでなく、ご自身のレコードショップ「カラヴィンカミュージック」の経営をはじめ、音楽イベントのプロデュースやライブなど、音楽を起点にさまざまな活動を行っています。
自宅の庭ではひょうたん以外にも野菜やお米を自家栽培し、通勤では毎日約30キロを自転車で移動するという龍石さん。衣食住をはじめ、より自然へ近いポジションを選択するライフスタイルが魅力的です。
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形をととのえて生産量を増やすだけなら農薬を撒けばいいというのは、ひょうたんの話だけじゃなくて、僕らがいつも口にしている野菜や穀物なんかも実は同じ。虫にもやられないから手間も時間も省けるし。
しかし、考えてみればそれが如何に不自然なことか。
龍石さんに取材する中で、ふと思ったことです。
食べ物と同じように、音も体に入ってくるものだとすると、糸島ひょうたんスピーカーほど自然な状態で、音を聞かせてくれるモノはないのではないでしょうか。
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(カタオカ)