【福島県・矢祭町】DIY・木工やってみたい!そんなときに頼りたい木材ソムリエ、「押田製材所」押田洋平さん。
インタビュー
「製材所ってなんだろう。」「私たちの暮らしとどんな関係があるんだろう。」そう思っている人が多いかもしれません。今回訪れた「押田製材所」は、あまり木材に詳しくない人でも、ふらっと立ち寄ってDIYなどに使う木材の相談ができる場所。押田さんに、木・製材・木材のおもしろさなどを教えてもらいました。
山のように積まれた原木。自分の身長よりも明らかに大きい。どこを見ても、視界は木材。ダイナミックな現場に見える。そしてその横には、綺麗に製材された角材や板材。そこで「同じ木なんてひとつもない。1本1本の木と向き合うんです。」と話すのが、押田製材所の押田洋平さん。
ここは福島県矢祭町。東北最南端に位置し周囲が山々で囲まれ久慈川が流れるこのまちに、自然の恵みを日常生活で見かける姿に変えて、私たちと結びつけている人がいます。その方は「押田製材所」でお仕事をしています。「製材所」とは山で伐採された木を、建築材として必要な寸法の角材や板材に切り出す(製材)場所です。
木の個性に気づいて向き合う
「製材の面白いところは、同じように見える木でも1本1本が異なり、どうカタチにしていくかというところです。中身も節の有無が異なります。それぞれの木の表情は人間の個性みたいなものを感じます。毎日、「今日は何の木をどう製材しようかな~」という新鮮でワクワクした気持ちで、求められる形に仕上げていきます。そして、その1本1本の積み重ねが集まって、沢山の人が関わってやっと一軒の家になります。それに加えて、何十年何百年と山奥にあった木々を扱います。自然の中で生きてきたものに携わることに、自然の長い年月を扱う面白さがあります。木を扱うという仕事は沢山の時間と沢山の人が関わっている仕事なんです。」
押田製材所として、いろんな人に利用してもらえる製材所をつくる。
「木、1本1本と向き合う。」この製材での姿勢は経営者としての一面にも繋がっているようです。
「社員ひとりひとりとの対話を大事にしています。最初は、社内で起こっている問題や課題を改善するために始めた面談は、いつしか夢やこれからチャレンジしていきたいことなど、未来へのビジョンを話す場へと変わっていきました。」
押田さんは、押田製材所として「専門知識が無い人からも木材の相談がされるような場所にしていきたい。」とも思っているようです。
「製材所と言われると、一般の人にとって敷居が高い上に、馴染みが無いように思われることを、まず変えていきたいです。何もわからない人でも来やすい雰囲気をつくっていきたいと思っています。そして木材のソムリエとして、何が作りたいのか、どう作るのか、どういうのが作りたいのか、お客さんがなんとなく求めているものを感じ取って、イメージを聞きながら最適な木材を一緒に考えて提案したいと思っています。」
「最近はDIY用の木材を購入される人や、木に触れたいという目的で来てくださる人もたくさんいます。お客さんにとって身近な存在になれたら嬉しいですね。そのためにも、何もわからないけど自分でDIYをやってみたい人にも、より押田製材所として、サポートできるようにしていきたいです。」
製材から生まれた端材でできたコンポスト
そういった思いは、こんな活動にも表れています。
「製材の過程で生まれた端材で「生ごみ処理器(コンポスト)」を制作しています。一般の人にとっても、製材を身近に感じてもらえたらなと思っています。」
家族の中では、生ゴミのゴミ捨て担当だった押田さん。日々の生活の中で出てくる生ゴミを目の前にして、何か出来ないかなと考えたことがきっかけだったそうです。
「コンポストの土の中に生ごみを入れて、数日後生ごみが無くなっているかを確認するのが新たな習慣となっています。自分たちの端材で生ごみを減らす活動ができることが嬉しいです。」
ふくしまヤタイにもその思いは繋がっていく。
そして押田製材所は、「real local 郡山」が主催する「清水台つくしまつり」で使用される「ふくしまヤタイ」の木材も製材しています。
「木造の家に住んでいても、木はなかなか見えないので、木を感じて生活しているわけではありません。そういう意味では、木材は縁の下の力持ちだと思っていて、それが木ならではの良さだと思っています。4月に行われる「清水台つくしまつり」でも、「ふくしまヤタイ」の木が空間に自然に馴染みながらも、その場の雰囲気を陰で支えられる存在になれたらいいなと思っています。」
初めて製材所という場所を訪れ、製材所はただ木の材料が出来ていく場所という認識だったのが、木材を通して私たちの「つくりたい」を実現できる場所という認識に変わりました。
ホームセンターに行ってしまえば、何不自由なく手に入れられる木材。でも押田製材所には、木材ソムリエとしてお客さんの「つくりたい」に寄り添いながら、一緒に考えようとする押田さんの姿があります。