【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
イベント情報
2010年より3年ごとに開催されてきた「あいち」の芸術祭は今年で5回目を迎えます。
国際芸術祭「あいち2022」の会場は愛知芸術文化センターのほか、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)。まちとの関わりも深い地元の芸術祭について、チーフキュレーターである飯田志保子さんにお話を伺ってきました。
「アートって難しそう……」なんて方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、目から鱗のお話をたくさん伺うことができましたので、ぜひこの夏は国内最大級の国際芸術祭に足を運んでみてはいかがでしょうか。
【real,local名古屋では名古屋/愛知をはじめとする東海地方を盛り上げている人やプロジェクトについて積極的に取材しています。】
「まだ生きている。」
––まずはじめに国際芸術祭「あいち2022」のテーマ『STILL ALIVE』に込められた想いについて教えてください。
今回のテーマは愛知県を代表する世界的アーティスト河原温の《I Am Still Alive》という作品から着想を得ています。
自身のアトリエや旅先などから「I AM STILL ALIVE」という文面の電報を1970年から30年間友人知人に送り続けた作品です。「わたしはまだ生きている」という宣言であり、逆説的には「まだ死んでいない」という解釈も可能な、生死観を読み取ることができます。
河原温はコンセプチュアル・アーティストとして有名です。コンセプチュアル・アートとは、日本語に訳すと概念芸術となります。つまり、目で見て美しいものや迫力のあるものだけではなく、アイデアそのものが芸術作品なのです。
世界が未曾有のCOVID-19や戦争に直面しているいま、『STILL ALIVE』というテーマを通して見るアートから、誰しも考えることがあるのではないでしょうか。
「あいち2022」はこうした人々のいのちの営みに迫るような作品と作家が選出されています。
時代に対して真っ直ぐでありながらも普遍的なテーマは、誰がどんな風に解釈しても良く、見る人自身に委ねられています。
美しいと感じても感じなくても、楽しいでも不可解でも良い。感想や感情がすぐに言葉にならなくても良い。何か感じて、考える。コンセプチュアル・アートはそのきっかけになります。
アーティストだけが表現者ではない。
国際芸術祭「あいち」組織委員会の方々は展覧会、舞台芸術としてアートを見てほしいという想いはもちろんありながら、もともと住んでいる地元の方、芸術祭を目的に遠方から足を運ばれた方にも、「愛知県って多様で面白い」と、作品を見ることをきっかけにまちの良さにも改めて気づいてほしいという想いを持って、まちと絡めたアートの展開を続けているそうです。今回選定されたのは昔ながらの産業、伝統の文化的特徴を色濃く持ち続けている地域でした。
【愛知芸術文化センター】
【一宮市】
【常滑市】
【有松地区】
アーティストが表現するために土地の魅力や技術を搾取するのではなく、まちとともにアート、『STILL ALIVE』を考える。住む人も訪れる人も自分たちの足元について考えを深め、今後も生きていくための道筋を考える。そんなひとつのきっかけになるような、小石を投じるような想いで企画を組んでいらっしゃるそうです。
––まちと絡めて芸術祭を展開することは、まちに対してどのような“こと”をもたらすのでしょうか。
芸術祭でまちが盛り上がれば、次の芸術祭が開催されるまでの2年間にまちの皆さん自身が何かやりたいと思うアイデアの種を育んだり、自主的にありたい方向を見つけたりします。アートそのものはまち自体を変えませんが、触媒としてまちを活性化し、長い年月をかけて結果的にまちが少しずつ変化してゆくこともあります。
「あいち」のように周期開催される芸術祭やビエンナーレなどは、時代と社会の変化をアートの視点から20年、30年かけて定点観測する役目を担っています。私はそういった長い目で愛知県を見つめ、この芸術祭が地域に寄与することを願っています。
また、日本の中でも最大規模の芸術祭とあって、多くの人がさまざまな地域から訪れたり、芸術祭をきっかけにこの地域に定住したりすることもあります。
さまざまな人が自分たちの住むまちを訪れ、感動して帰っていく様子に、良い意味で驚くこと。このことも地域を見つめ直すきっかけとなります。
世界各地で周期開催されているトリエンナーレやビエンナーレは、そういったシビック・プライドを育てる一助にもなります。国際芸術祭「あいち」もその役割を果たしています。
生きていること、死ぬこと、生き続けるものがあること。
「あいち2022」では、5回目となる今回はじめて物故作家が選出されました。
これまでは現代美術展として今を生きるアーティストたちの新鮮な作品が届けられていましたが、今回のテーマである『STILL ALIVE』を通して見るアートは普遍的なものです。誰しもが生きていて、いつか死に、その傍らで歴史や現象として残り続けていくものがあります。
死を間近に見る機会が増えている今だからこそ、本質的に変わることのない「生きていること」を痛烈に感じることができるのではないでしょうか。
ぜひ皆さんも、会場それぞれの作品を通してご自身の『STILL ALIVE』に触れ、考えてみてはいかがでしょうか。
屋号 | 国際芸術祭「あいち2022」 |
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URL | |
住所 | 愛知芸術文化センター:名古屋市東区東桜1-13-2 |