山形移住者インタビュー・和田有紗さん「心が歌いだす未来をつくる」
移住者インタビュー
#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは和田有紗さんです。
都内の企業にフルリモートで所属しながら、自ら立ち上げたプロジェクトデザイン会社「合同会社lururu」の代表を務めています。今回はUターンという形で山形市に移住し、新たな挑戦に向かう和田さんが感じる山形の魅力や、仕事にかける思いについてお届けします。
山形県山形市出身の和田さん。長年都内のイベントプロデュース会社に勤務していましたが、2016年にワークスタイルをリモートワークに変え、拠点を山形に移しました。2021年にはこれまでの経験を礎に、山形で起業。リモートワークを継続しながら、新たな活動を始めています。
二足のわらじを履きながら、4歳児の親として母親業もこなす日々。結婚・出産育児・そして山形での起業を経た今、和田さんがこの場所でつくろうとしているのはどんな未来なのでしょうか?
オフになれる場所で、「リモートワーク」という選択
高校を卒業して山形を出たときは、東京の刺激を浴びまくりたいという気持ちでした。知的好奇心を刺激するものや遊びに事欠かない東京では、完全に夜型の生活で、夜9時に仕事が終われば早い方。休日も友人と遊んだり、企画展やイベントに足を運んで仕事の情報収集をしたりで、家にいる時間のほうが少ないくらいでした。
私は基本、常にオンなんですが、もちろん疲れることもあって。そんなとき山形に帰省すると、自然とオフになれました。デジタルデバイスを全部なくしてドライブをしたり、実家から山の景色を見たり。そんな感覚を何度か体験していく中で、今の仕事は大好きだし、これからもやり続けたいけど、住む環境は一度変えてみてもいいかなって思ったんです。お付き合いしていた人が山形に住んでいたこともあり、結婚を機に山形への移住を決めました。
今の会社は設立間もない頃に仲間に入れていただいたので、社長とは信頼関係ができていて普段から働き方の話題になることも。移住の話を切り出したときは、社長からリモートワークを提案いただき、とてもありがたかったです。
改めて気が付いた山形の「おもしろさ」
10代の頃は、山形に何の魅力も感じてなかったんです。田舎だし、ワクワクすることが一切ないって思っていました。でも帰ってきて、仕事を通じてたくさんの方と出会い関わる中で、視線を変えて改めて山形を見ると、すごくおもしろいまちだと気が付きました。小さくてもいろんな想いを持って活動してる人や、クリエイティブな人たちがたくさんいて。ここならモチベーションを保ちながら暮らしていけそうだな、と感じましたね。
楽しいのは、仕事を通じて山形で今まで訪れたことがなかった魅力的な場所や、知らなかった伝統文化などに触れる機会が増えたこと。例えば山寺は県外の方が行く観光地という印象があり、行ったことがなかったんです。でも地元の人が行っても、とても魅力的な場所で大好きになりました。
起業という挑戦。それは「みんなで一緒に育っていく」こと
起業への想いは昔からありました。山形に帰ってきてから、ここで拠点を持ってしっかりと一つひとつの仕事に向き合えるような環境を作りたいなと思い、リモートでの仕事は続けつつ、2021年に企画をつくる「合同会社lururu」を立ち上げました。
山形の仕事では「大きな予算を一気に使う」というよりは、「今ある資源を使ってどう育てるか」という視点の仕事が多くて、そこに魅力を感じます。これまでに培ってきたものを生かしながら、お客さんと一緒に目線を合わせて「今いる場所」と「向かいたい未来」を一緒に丁寧に考えて、歩んでいく。形は違えど、そういった視線を持ってお手伝いできる仕事が、ここにはあります。
相談してくれた方や一緒に作るパートナーがどんな気持ちでいるのかとか、企画を届けたい人たちがどんな気持ちになったらいいだろうとか、なによりも「心」を大事にしたいと思っています。
社会的なインパクトを求めるよりも、一人ひとりの心に良い変化が訪れるような、そんな取り組みに伴走したいんです。未来をつくるということは、「未来に生きる人にどんな気持ちになって欲しいか」だと思うんです。迷ったときは、常にそこに立ち戻りたいなと思ってます。
山形で生まれた「当事者意識」
都内を拠点に仕事をしていた頃は、極端に言ってしまうと、プロジェクトで取り扱う課題が自分からかけ離れているような感覚を感じる時がありました。でも山形に帰ってきたら、地域の課題は自分が住んでいるまちのことだし、子育て環境の課題はママという立場で考えることができる。プロジェクトにより当事者目線を入れられる。それが楽しいです。
「Local wedding」では、ちょうど結婚を控えた幼馴染の友人がモデルを務めました。大事な人の大事なときに、こうした形で一緒に寄り添えたことがとても嬉しかったです。ほかのプロジェクトでも、信頼関係のある方々や大好きな人たちとチームを組みながら、一つひとつの仕事にしっかりと向き合える環境が気に入っています。
何ができるかより、どうありたいかを大切にしたい
起業することを決めた大きな理由として、もうひとつあったのが、子どもが学校から帰ってきたときに、「おかえり」と言って迎えてあげたいという想いでした。自分なりの想いを込めた会社を作って、自分が大事にしたいライフスタイルや思考を実現していく、そんな挑戦をしてみたいなと思ったんです。
育休明けで子どもを保育園に預けるときは、少し葛藤がありました。でも、子どもが保育園に行ってる間はちゃんと胸を張って楽しいことやってたんだよって言えるような時間を過ごしたいなと。
そんな時に考えるようになったのが、これからどんな仕事をしていきたいかとか、その仕事の中身についてでした。それまでは全部頑張りたいと思っていたけど、限られた時間の中でいかに自分も満足して過ごすのかと考えると、「何ができるかじゃなくて、どうありたいかが大事なんだ」って気付いたんです。
私にとって山形は、いろんな冒険をして、最後に戻って来ることができる、そして戻ってきたいと思う場所。それから、1人ではなくて、仕事も家族もみんなと一緒に生きて暮らしているってことを実感できる場所です。
これからは、「lururu」をひとつのベースとして、いろんな人たちが自分のライフスタイルを大切にしながら働いていけるチームを作っていきたいと思っています。
取材・文:高村陽子
撮影:布施果歩
合同会社lururu
https://www.lururu.co.jp/