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山形県村山市・移住者インタビュー 藤井雅さん/新体操の魅力を伝える

インタビュー

2023.03.29

山形移住者インタビュー。今回は村山市編です。2020年東京オリンピック・パラリンピックを機に村山市はブルガリア共和国のホストタウンとなり、ブルガリアの新体操ナショナルチームとの交流がはじまりました。オリンピック以降も国際交流を続けながら新体操を盛り上げて、村山市の子どもたちが新体操をできる場をつくっていこうと、2019年には地域の新体操チーム「むらやま新体操教室」が誕生しました。

2022年4月、大学卒業後に新体操の振興をミッションとした地域おこし協力隊として東京から移住した藤井雅(ふじい みやび)さん。4歳から新体操をはじめ、名門の日本女子体育大学に進学し、全日本選手権団体優勝という国内トップレベルの実績の持ち主です。村山市では「むらやま新体操教室」で指導しながら、新体操を通じて地域に関わり新しいことに取り組みたいと話す藤井さん。日々の暮らしや活動に込める思いについてうかがいました。

山形県村山市・移住者インタビュー 藤井雅さん/新体操の魅力を伝える

村山市で指導者の道へ

東京都羽村市で生まれ、4歳から新体操を始めました。母が指導者でその姿をずっと見てきたので、自分も将来は指導者になりたいと思うようになり、大学ではコーチングやコンディショニングを学んで、部活動では新体操部に所属しながら4年生では団体チームのキャプテンをつとめました。

実は移住する前に二度、村山市を訪れたことがあります。一度目は、東京五輪に向けた事前キャンプ「ROSE CAMP2019」。二度目は、村山市で行われた大学の合宿。こうした縁もあったので、卒業してすぐに地域おこし協力隊として村山市に移住することになりました。

むらやま新体操教室には40名ほどの子どもがおり、未就学児から中学生まで年齢順に6つのクラスに分かれています。2022年4月からは将来的に国際大会で活躍できる選手を輩出していく「育成クラス」ができ、これから大会出場なども目指していきます。教えることは難しいですが、子どもたちは元気いっぱいで、接していてすごく楽しいです。

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取材日は育成クラスのレッスンが行われていた。小学2年から中学1年までの子どもたちが大会出場を目指して技術を学んでいる。
新体操のおもしろさとは

新体操は美しさを競うスポーツです。音楽に合わせて自分を表現することで観客を魅了させられることが、新体操のおもしろさだと思います。その反面、表現を追求するスポーツなので教えるのが難しいですね。

技は教えれば身につきますが、表現することは本人の感性によるものです。例えばピアノを習ってる子は音とりがすごく上手であるように、日々の暮らしや環境から影響を受けたり、あらゆる要素が関わってきます。だからこそ言葉で伝えることは難しく、動画で少しでもいろんな選手の演技を見せたり、今後は強いチームを呼んで実際に演技を見せてもらうなど、子どもたちが自分自身で感じ取れるような機会をつくれたらいいなと考えています。

育成クラスは私にとっての挑戦でもあると感じています。育成には時間がかかりますが、少しずつ育てていきたいですし、私自身もまだ模索中ですが、指導者として一緒に成長していけたらと思います。

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村山市民体育館にて新体操用のマットを敷いてレッスンが行われる。「ここは広くて天井が高く、新体操をするうえですごくいい環境が整っています」と藤井さん。

2022年12月には村山市初となる個別レッスン体験会を企画しました。日本女子体育大学の学生3名と先生を呼んでレッスンをしていただいたところ、この体験会をきっかけに3人がむらやま新体操教室に入会してくれました。子どもたちに新体操の楽しさを知ってもらえたことがうれしかったです。村山市内の中学校にあった新体操部が来年にはなくなってしまうという背景もあり、これからも村山市の子どもたちが新体操を体験できる場をつくっていきたいです。

四季を感じる村山暮らし

ここに来て1年が経とうとしています。村山市の好きなところはたくさんありますが、まずは景色がいいこと。季節によって景色が変わるのがすごくいいなと思います。東京にいた頃はあまり景色から季節を感じることがなかったので、すごく新鮮です。冬の雪山もきれいだし、秋の田んぼの景色もすごく好きです。まちにゴミが落ちてないこともきれいでいいなと思います。

あとはやっぱり毎日の食事がおいしいですね。つや姫がすごくおいしいし、季節ごとにさくらんぼやすいか、桃など年中いろんな果物をいただいて食べています。近所のコンビニに行くと、「だし」とか鳥中華や肉そばなどがあって、ご当地フードを探すのが楽しいです。

伝統文化が多いことにも驚きました。市役所の方や地域のみなさんがいろんな場所を案内してくださるのですが、地域のお祭りがあったり、じゅんさい採りの文化や特産物など「ずっと続いていること」がすごいなあと思います。新鮮なことばかりで毎日楽しいですね。ここに来てよかったなと思っています。

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大学卒業してすぐに始まった村山暮らし。雪のシーズンを乗り越え2年目に突入する。「地域の人々や市の職員のみなさんが『大丈夫か?』と気にかけてくださり、みなさんのおかげで楽しく暮らすことができています」と藤井さん。
新体操を通じて地域の健康促進を

今年はもっと地域貢献に取り組んでいきたいと考えています。まずは地域のみなさんに新体操の楽しさを知っていただくこと。去年は楯岡小学校と大久保小学校を訪ねて、体育の授業としてマット運動をやらせていただきました。子どもたちは元気いっぱいで、初対面の私を「藤井先生」と呼んで受け入れてくれたり、ちらっと側転を披露しただけでもすごく喜んでくれたり、恥ずかしかったけどすごく楽しかったです。新体操はマットがなくてもできることがありますし、今年も地域の学校に行って子どもたちと交流する機会をつくっていきたいです。

そして子どもだけでなく、大人向けや高齢者向けの新体操レッスンも開催したいです。特に高齢者のみなさんには健康体操のようなかたちで、気軽に体を動かす機会をつくれたらいいなと考えているところです。

これまで19年間、新体操をやってきた経験を生かして、市民のみなさんの健康促進など貢献できることを少しずつ実践していきたいと思います。

取材・文:中島彩
撮影:渡辺然(Strobelight)