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【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん

インタビュー

2023.06.21

鹿児島県阿久根市にて“暮らすように旅をする”をコンセプトに『塩屋ホステル』を運営されている松元薫久さん・寿乃さん。そんなお二人からホステル事業を背景などについてお話を伺いました。

【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん

暮らすように旅をする

薫久さん:私たちは16年前から阿久根市内で『ハモニカン』として飲食業を営んでいます。敷地内に空き家となっていた元塩屋の倉庫があったのですが「どこかのタイミングで活用したいな」とずっと思っていました。以前はギター工房や学習塾などとして利用されていました。

ある時、ハモニカンの常連として来てくださっている阿久根の自動車学校の社長さんが「教習生が泊まるところが無くて困っている」と話してくれたんです。合宿で免許をとる人は、2週間以上宿泊します。だから、教習生が泊まれるような施設にするのもいいかもしれないと考えました。

寿乃さん:自動車免許取得における合宿の時期は大体決まっています。だから、他の時期はビジネスや旅行を目的とした人をターゲットにすれば事業として成り立つのではと考えました。

阿久根は観光地ではありません。でも、小さなまちでの暮らしを体感しながら、ゆっくり滞在して次の目的地へ向かうような宿もいいかもしれないと考えました。以前、バックパッカーの経験もある夫とそんな話になり、宿の開業に向けて準備を進めることにしました。

【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん
写真左:塩屋ホステルオーナー 松元薫久さん 写真右:松元寿乃さん 宿泊者のチェックインを行うハモニカンにて

薫久さん:阿久根に住んでいる70代以上の方はハモニカンを“塩屋さん”と呼んでいます。テレビが各家庭にあまり無い時代に、塩屋にはテレビがあり、何かしらあれば皆が集まってテレビ観戦をしていたそうです。

僕自身“塩屋の松元”と自己紹介すると「塩屋さんね!」とまちの人にすぐ認識してもらうことも多いです。ホステルには昔の看板が今でも残っています。そういう背景もあって、名前を残したいと思い、宿の名称を『塩屋ホステル』としました。

寿乃さん:まちで暮らしている人の営みの中に入ってもらいたくて、コンセプトを“暮らすように旅をする”としました。長期滞在の場合、外食だけではなく、まちで買い物をし、自炊される方もいらっしゃいます。

痒いところにも手が届くようにと、お客様の目線にできるだけ添えるように準備しました。外食先は私たちが普段利用しているところをお客様の要望に合わせてオススメしています。私たちにとっての日常を少しでも味わってもらいたい想いがあるからかもしれません。ついお節介なぐらいになることもあります(笑)。

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同敷地内にある喫茶店・ハモニカン チェックイン・チェックアウトを行う
【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん
塩屋ホステル 入り口 外観 1Fはイベントスペースとして使える倉庫兼駐輪場 2Fは宿泊スペースとなっている

力まず、日常の一コマを楽しむ

薫久さん:宿を始めてから実感したのは、まちの人の暮らしを覗き見る旅をする海外の方が多いことでした。例えば、ここなら、海が近いので自転車に乗りながら海の風景を楽しんだりとか、近所のおじいちゃん・おばあちゃんに「ハロー!」と言って挨拶したりとか。

細い話になると「地方によって話すスピードが違う」「阿久根の人はゆっくり話をしてくれて居心地がいい」と話してくれた方もいました。それって、ゆっくりとまちに滞在しないとわからないと思うんです。そういうお客様ほど長期滞在してくれます。

寿乃さん:ありがたいことに「もう1泊できる?」「もっと泊まりたかった」とおっしゃってくださる方も多いです。さらにいうと、チェックイン中の海外のお客様がハモニカンにコーヒーを飲みに来た常連さんと仲良くなって、お互いに楽しんでいる様子を見ることもあります。

ある常連さんから「ここで仲良くなった外人さんと連絡先交換して、メールでやりとりしてるよ!」と報告してもらった時は嬉しい気持ちになりました。宿として基本情報しか出していないのですが、何の期待もなく、なんとなく泊まってみたら“意外に宿もまちも落ち着くな”と感じてくれているのではないかと思っています。

【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん

薫久さん:ビジネス目的で宿泊されるお客様もいらっしゃいます。あるサラリーマンのお客様はいつもの習慣で共有スペースで晩酌をしていると、海外のお客様と顔を合わせ一緒に晩酌をされたと聞きました。「ハロー!焼酎!ショウチュウ!」と言って国際交流して盛り上がったようです。

数年前には妻の同級生が暮らす離島の皆さんが偶然泊まりにいらして、それがきっかけで私たちがその島へ遊びに行き、同級生にも再会するといったこともありました。宿を運営している私たちも、地元の人も、お客様も、偶然集まった人たちもすごくハプニングを楽しんでいると思います。

寿乃さん:全ては暮らしの一コマですよね、そこが楽しいです。だからこそ、ネットを介さずとも、そこで多くの人に宿やまちのことを伝えなくてもいいのだと思うようになってきました。“家族やお客様と一緒に楽しい時間を過ごせていれば、それで十分なんだ”と思います。

それが阿久根での暮らし、まちの営みをつくってきた人たちの日常を次へ繋いでいくことに自然となっていくのではないか。そんな風にも感じています。阿久根は大きすぎず、小さすぎず、良いサイズ感のまちです。そんなまちだからこそ、繰り広げられる一つ一つの光景がお客様にとって居心地の良いモノと感じてくれるのかもしれません。

【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん
写真提供:塩屋ホステル
【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん
写真提供:塩屋ホステル
【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん
写真提供:塩屋ホステル 塩屋ホステル内 共有スペース

まごころを込めて

寿乃さん:宿を運営していて嬉しい瞬間の1つがお客様から置き手紙をいただくことです。スケジュール上、早めにチェックアウトされる方もいらっしゃるので、朝の見送りができないパターンもあります。それでも「おかげさまで良い旅になりました」「オススメしていただいた場所がとても良かったです」と書いてあって

それを見たら嬉しい気持ちでいっぱいになります。毎年、思い出として壁に貼り、お客様との思い出を振り返っています。私たちが最も大事にしているのは“まごころ営業”です。置き手紙のような温もりのある評価は私たちのモチベーションを上げてくれます。

薫久さん:実は、予約サイトに掲載されている私たち夫婦の写真。あれは、ハモニカンの営業が終わった後に疲れた状態で、かつ、スマホで撮影したものでして(笑)。洋服もヨレヨレなので「いつかは撮り直さなきゃ」と思っていました。でも、意外にその写真が決め手となって宿泊を決めた方が国内外関係なく多くて。

あるお客様からは「あの写真は絶対変えてはダメですよ」とアドバイスを受けたこともあります。宿を始めた当初は何をどうすればいいかわからず運営していたのですが、全て偶然に、良い方向に向かっていて、ありがたいです。

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写真提供:塩屋ホステル 1Fスペース 昨年12月開催した音楽ライブイベントに合わせた空間仕様に
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写真提供:塩屋ホステル オープン当初に撮影した写真

薫久さん:宿泊事業を始めた当初は1Fがイベントスペース、2Fが宿泊スペースとして考えていました。コロナ渦でイベントが中々できませんでしたが、今後は上映会やアーティスト展など、様々なことを開催していきたいです。

『塩屋ホステル』の名前もですし、この建物と敷地を残してくれたご先祖に対する感謝があるからこそ、自分たちの想いを少しずつカタチにしていきたい気持ちが強くなってきています。今は仕事と旅をセットで移動されている方も多いので、そんな人たちが気持ちよく滞在できるような体制や環境も整えていくつもりです。

寿乃さん:最近は少しずつ海外のお客様の利用も戻ってきました。その度に、私たちも世界各地を旅行した気分になれます。それは会話だけではなく、滞在時の過ごし方でも感じることができます。例えば、あまりゴミを出さないものを買っていたり、移動する際はガスを排出しない自転車を使用したりとか。その国々の習慣や意識を垣間見ることができます。

他にも、予定を詰め込まず、ゆっくりとした時間を過ごす方も多く、色々な視点でお客様から教えていただくことばかりです。それも宿という場所があるからこそ学べることなので、その強みを活かしつつ、私たちなりの宿の運営を続けていきたいと思います。

【鹿児島県阿久根市】まごころを込めて“暮らすように旅をする”時間を、小さな港町で / 塩屋ホステル 松元薫久さん・寿乃さん

屋号
塩屋ホステル
住所
鹿児島県阿久根市本町118番地
備考

●宿泊予約

・電話 

090-6778-0994

予約サイト

 https://www.booking.com/hotel/jp/shioya-hostel.ja.html

 ※公式SNSHPはございません。

 
●宿泊部屋

シングルルーム、ツインルーム

※宿泊料金につきましてはお電話、もしくは、予約サイトにてご確認ください。

 

●その他

トイレ・シャワー・キッチン、ランドリーは共同です。

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