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【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.6

連載

2023.07.28

山形市長町にある〈エンドー〉は、地域密着型のスーパーである。創業は昭和40年。以来、地元の人々に親しまれ続け、日々、さまざまな顔が集う。そこにある時間と、ここにしかない風景。今日のエンドーでは、どんなことに出会えるだろうか。

【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.6

山形のソウルフードはどこにある?
エンドー発、げそ天・イノベーション

「山形のソウルフード」と聞いて、最初に思い浮かべるのはなんだろうか。やはり芋煮か、玉こんか。夏だったら「だし」や冷たい肉そば。冬ならひっぱりうどん、納豆汁なんかもある。そのなかで、山形市というエリアで確固たるポジションを築いているのが「げそ天」だ。多くのみなさんがご存じのとおり、イカの足に衣をつけて揚げた天ぷらである。市内のそば屋のメニューでは高確率で登場し、ラーメンのトッピングで見かけることもある。スーパーのお惣菜コーナーにも、当たり前のように並んでいる。

諸説あるものの、山形におけるげそ天の歴史は古く、江戸時代にまでさかのぼるという。とはいえ、すべての県民に馴染みがあるかというと、意外とそうではない部分もある。私自身は県南に位置する置賜地方の出身であるが、げそ天にはそこまで馴染みがなかった。そのため、山形市をはじめとした村山地方ではげそ天とそばを一緒に食べるのがポピュラーだと教えてもらったとき、新鮮にさえ感じられた。これは地域による違いなのかもしれない。
海が近いわけでもないのに、なぜ山形市には「げそ天」という食文化が根付いたのだろう。自分で調べて得たものだけでは物足りないような気もするので、今度エンドーを訪れたときに、お店の人やお客さんにも訊ねてみようと思う。

と、ここまでは山形の食文化としてのげそ天の話。ここからは従来のげそ天とは一線を画す、エンドー独自のイノベーティヴなげそ天を紹介していきたい。

 

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店に入るとまず目に飛び込んでくるのが、屋台風のげそ天メニュー。注文時には、カウンターにある用紙に味とサイズを記入し、できあがるのを待つ。大・中・小とサイズがあるので、小サイズをいくつか食べ比べてみるのもいい。
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慣れた手つきでどんどんげそ天を揚げていく遠藤さん。多いときは1日に300人分ぐらい売れることもあるそうだ。「ここのげそ天、なんでこんなに柔らかいの?何か秘密があるの?って聞かれることがあるんですけど、おそらく揚げる前段階でのひと手間かもしれませんね」
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揚げるときに米油を使っているのも大きなポイント。揚げもの特有の重たい感じがなく軽くてヘルシー。子どもからお年寄りまでおいしく食べられる。冷めてもおいしいので、おにぎりの具材やお弁当にも適していることにも納得。
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左上から時計回りに_ピンクにブラック、プレーン。いろんなフレーバーのカラフルな衣。国産のスルメイカを使用しており、注文が入ってから揚げるので、できたてはサクサクでやわらか。気になって仕方がなかった扉の「ゲソ調理室」(写真左下のみ提供:杉の下意匠室)。
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ビジュアルがインパクト大の「ピンク」。元々しつこくなく食べ飽きないものの、紅生姜フレーバーでよりさっぱり。エンドレスでお酒が呑めてしまうのでおつまみにもぴったり。これはきっと、蕎麦にも合うはずだ。

「エンドーのげそ天」ムーブメントのはじまり

山形の隠れたソウルフードであるげそ天は、長町にあるエンドーという地域密着型スーパーの手によって、大きな変身を遂げた。胴体部分に比べて格下に扱われていたげそは、今までにまとったことのないようなカラフルな衣をまとい、ファーストフード店のサイドメニューにあるようなパッケージにかわいらしく収まっている。げそ天はもともと、お惣菜メニューのうちのひとつだったが、これによって付け合わせやおかずとしての食べ方だけでなく、スナック感覚で食べられる新しいスタイルのげそ天が誕生した。

一番人気は塩レモン。次いで「ワサビ」。さらに人気急上昇なのが「ピンク」。「チーズ」や「BBQ」は子どもたちに人気だ。濃厚な旨味を感じる「ブラック」は、イカスミ、チーズ、ブラックペッパーに加えてトリュフ塩が肝。過去には「シーフード」という幻のフレーバーがあり(うに、からすみ、青のりといった夢の組み合わせで、まるで海を食べているといった感じ)、隠れた人気者であった。

街中の渋いそば屋で見かけたあなたに、こんな一面があったなんて。というよりも、「陰キャ」と「陽キャ」ぐらい違う。個性という名の衣をまとわせることによって、げそ天の世界は爆発的に多様化した。げそ天はそばの付け合わせ、というイメージの人にこそ、エンドーのげそ天を体験してみてほしい。

 

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提供:杉の下意匠室
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げそ天(小)のパッケージは、“例のアレ”のオマージュだそう。フレーバーごとにキャラクターが違うげそ天のスタンプも楽しい。
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揚げたてをマイナス40℃の超冷風で急速冷凍し、おいしさを閉じ込めた「冷凍げそ天」は、帰省時のお土産や贈りものにも喜ばれる。エンドーのホームページでは、この商品のアニメーションが見られます(提供:杉の下意匠室)。

 

エンドーのげそ天は、前回vol.5で登場している〈杉の下意匠室〉とエンドーのみなさんの試行錯誤の末に生まれた。お惣菜としてだけでなく、げそ天単体でもさまざまな接点を設けようということで生まれたのが、「おやつ、おかし、おつまみに」というキャッチコピー。さらには「おそばのおともに、ごはんのおかずに。自然解凍でお弁当にも。食べたいときに食べたいだけお召し上がりください」と続く。季節やシチュエーション問わず一年中楽しむことができる、げそ天の魅力がここに凝縮されている。

山形市長町で始まり、そこから市内、県内、さらには東北エリアへと広がっていき、今では全国的にも注目されている、エンドーオリジナルげそ天の一大ムーブメント。オフィシャルSNSアカウントに「たぶん日本一のげそ天です」とあるように、味はまさにみなさんのお墨付きだ。

 

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エンドーのじいちゃん(英弥さん)の手打ちそばとげそ天がセットになった「げそば(温・ざる)」はランチタイム限定。げそ天に合うように考えて作られたクラフトビール「ゲソIPA」もおすすめ。
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げそ天が入った小さなおむすび3個セット「げそ天むす」。このミニサイズであるがゆえに、具材とごはんとの黄金比が生まれている。小腹が空いたときにもちょうどいいのと、テイクアウトするときの竹の皮の包みもまた良い。
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夏季限定の新味「台湾」。取材後に登場したメニューとあって、後日エンドーへ。カラッと揚がったげそ天にエスニック風味のタレ、細かく刻まれたニラがトッピング。げそ天に合うのはやはり「ゲソIPA」(自身による撮影)。
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じいちゃんが持っている左上から、ブラック、カレー、ピンク、プレーン、塩レモン。現在のフレーバーは11種類(+台湾)と個性豊かな面々。ぜひ、あなたの「推し」を見つけてみてください。

 

INFORMATION
エンドー
住所 山形県山形市長町2-1-33
電話番号 023-681-7711
営業時間 10:00-19:00(日・月曜休)
https://gesoten.jp/

 

写真:伊藤美香子
文:井上春香