【鹿児島県鹿児島市】肩書きを外した人との関わりが生み出す自分の成長と新しい風景 / コミュニティ大工見習い 松元さおりさん
インタビュー
コミュニティ大工見習いとして県内各地を中心に空き家改修現場サポートを仲間たちと行っている松元さおりさん。そんなさおりさんからコミュニティ大工見習いになった背景等についてお話を伺いました。
コミュニティ大工に関する過去の記事はこちら。
変わりゆく風景を、みんなで
2022年春。
姶良市蒲生町にて『結庵-むすびあん-』のオープンに向けて空き家改修が始まりました。
施主とイベントで知り合ったのをきっかけに仲良くなり
一緒に改修作業を手伝うことになったのだとか。
しかし、さおりさんはDIY経験がなく、大工道具すら扱ったことのない状態だったそうです。
そして、不安な気持ちを抱えたまま初日の現場へ。
そこでコミュニティ大工を知ることになるのです。
「大工さんと聞くと、怖い印象しかありませんでした。“少しでもミスをしたら怒られるんじゃないか?”って。」
「でも、その印象をひっくり返してくれたのが、コミュニティ大工の加藤潤さん(以下:潤さん)だったんです。」
「到着するなり“お茶でもしましょうか”と口にし、びっくりしたのを覚えています。“え?作業をするんじゃないの?”と思いました。」
「お茶をしながら、施主さん、潤さん、私の3人で自己紹介をしました。その時間を通して、不安が消えて、打ち解けるきっかけになりました。」
“施主さんの想いをカタチにするお手伝いをしたい。”
改修前から施主の想いに触れていたからこそ
「大工作業なんて絶対できない。最初はそう思っていましたが、小さなことから任せてもらえるようになって、少しずつ自信がついてきました。」
「私以外の他のメンバーも、潤さんとの作業をきっかけに個性や能力を強めてもらったと思っています。」
「たとえミスをしたとしても“いいんじゃない?”と、潤さんも施主さんも笑ってサポートしてくれたので、安心感がある時間でした。」
「社会人になると、周りの目や評価を気にしがちになってしまいます。だから、思いっきり楽しみながら何かをするってことがほとんどありませんでした。」
「変わりゆく風景をチームで一つの目標に向かっていく時間って、大人の部活のようなものですよね。それは社会人になってから初めての経験だったと思います。」
コミュニティ大工見習いとして
「ありがたいことに、結庵の改修現場では多くの人に知り合うことができました。中には、これからアクションを起こそうとしている方もいて、そんな人たちのお手伝いができたらと思うようになりました。」
「それで、潤さんに“結庵以外の現場もある日に私も手伝いに行かせてほしい”とお願いしたんです。それがコミュニティ大工見習いとしてのスタートでした。」
そこから、様々な現場で施主やその場にいる人たちの想いに触れていくことになります。
元々、さおりさんはカラーセラピーのお仕事を通して
1対1で人を向き合うことを大事にされていました。
だからこその気づきがあったといいます。
「人と向き合い、人と関わる点ではコミュニティ大工見習いも同じではないかと気づきました。だから、コミュニティ大工見習いは私の目標や目的ではないんです。」
「“自分の成長は、人と関わることでしかない”と思っています。現場で一緒になった人たちは必ず素敵な面があって、そこを必ず伝えるようにしています。」
「そんな人たちがいるから、現場へ行こうと思うし、知ることで私にとっての成長に繋がるんです。」
コミュニティ大工の現場に同行するようになり1年半。
できることが増えてきた反面
力不足を痛感することもある日々なのだとか。
最近は大学生やDIY初心者をサポートする場面も出てきたそうです。
「私自身、最初は何もできない状態からのスタートだったからこそ、初心者の気持ちや大変な部分がわかります。」
「手つきを見て“危ない!”と感じたらアドバイスするし、逆に“もうちょっと見守ったほうがいいな”と思うところは言葉にせず、心の中で応援するようにしています。」
「それは私自身の訓練とも感じています。私は昔から“〜〜すべき”が強いタイプだったので、つい“こうしなさい”と口に出してしまっていました。」
「そうではなく“こうしたら、この場がうまく回るのかな?”と見守るのも、人との関わり方の一つです。そんな時間を通して、私に中の“べき”が少しずつゆるくなってきているのかもしれません。」
「潤さんはいろんな現場で多くの人を相手にしているのに、現場をゆるい雰囲気にしつつ、一人一人に対して丁寧にお話している姿をみて“すごいな…”と思っていつも見ています。」
人との関わりを通して、自分を認める
元々自己肯定感が低かったというさおりさん。
コミュニティ大工見習いとして過ごす日々は
自分自身を認めることに繋がってきているといいます。
「一緒に作業する仲間から中古のインパクトドライバーをプレゼントしてもらったことがあるんです。その時、めちゃくちゃ泣いてしまって…。」
「私、この場にいていいんだ。仲間の一員として認めてもらっているんだ。こんな私にもできることがあるかもしれない。そう強く感じました。」
「DIY技術とは関係ありませんが、家族以外の誰かに料理を振る舞えるようになったのは一番の変化かもしれません。好みが分かれるからこそ“美味しい”と言ってもらえる自信がなかったんです。」
「潤さんが失敗しても笑いながら振る舞ってくるのを見て、私もやろうと思いました。何より、みんなが作業している間に料理をすれば、効率も良くなると考えたんです。」
「みんなが美味しいと思わなくてもいい。出すことに意義がある。そんなふうに思えてから気持ちが楽になりました。」
最後に今後の展望について伺いました。
「現場ではいろんな肩書きの方にお会いします。でも、人って肩書きじゃないと思っています。そんなことを気にせず、一人一人と関わっていきたい。そこもコミュニティ大工見習いを通して、伝えていきたいことの一つです。」
「今が一番楽しいです。それは意欲的にアクションを起こしている人たちと関わって、そんな人たちに会いに現場に行けているから。」
「人との関わりを通して、自分自身を認められる瞬間が増えたのも、コミュニティ大工の現場に行くようになってからです。」
「現時点ではコミュニティ大工見習いのままでいいと思っています。本業を大事にしつつ、今はみんながゆるく現場で作業できるように立ち振る舞うようにしたい気持ちが強いです。」
「私がやりたいことは現場を回すサポートです。私自身が主体になることではありません。そのために、人が何を求めているのか察知する力が必要なので、そこをもっと勉強していきたいです。」
屋号 | コミュニティ大工見習い |
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備考 | ●過去のコミュニティ大工関連の記事はこちら (ゆるさを大工現場に。素人とプロの境界線を結びつける。 / コミュニティ大工 加藤潤さん) |