【鹿児島県阿久根市】まちぐるみでの関わりから、阿久根にしか出せない価値を体験できるお宿 / お宿ととと
インタビュー
鹿児島県阿久根市の古民家を改修し、一棟貸しの宿として今年4月に新しく生まれ変わった『お宿ととと』。近くの鮮魚店でお魚を購入し、それを料理するなど、宿を起点に港町の暮らしを友人や家族で楽しめる“まちやど”(※)となっています。今回、宿に関わる方々にオープン背景や今後の展望などについてお話を伺いました。
(※)まちを一つの宿と見立て宿泊施設と地域の日常をネットワークさせ、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上していく事業のこと(日本まちやど協会HP 参照)。
“まちやど”を起点に、阿久根の日常を楽しむ
まずは運営会社でもある『株式会社まちの灯台阿久根』・代表取締役の石川秀和さんに、オープンに至った背景を伺いました。
阿久根はイワシビルが2017年夏にオープンして以降、ホステルやゲストハウス、アクティビティ体験も増え、通過型から体験型観光のまちに変わりつつあります。
次のステップとして、石川さんの中で思い浮かんだのが“まちやど”。観光客がまちを歩きながら阿久根の日常も楽しめる起点として“まちやど”を少しずつ増やしてみたいと考えるようになったといいます。
そんな時、以前からお店づくりを一緒に進めてきた地元の工務店『株式会社サン・ホーム』代表取締役の寺地兼二さんは「自分も阿久根を盛り上げる拠点づくりができたら…」という想いが次第に芽生えてきたそうです。
2人の想いが重なり、2年前に北さつま漁港近くの古民家を寺地さんが購入。“まちやど”の一棟目を立ち上げるプロジェクトが始まったのです。
「宿の名前は“ととと”にしました。“とと”は魚を意味する言葉として使われています。“魚と○○”というように、お酒だったり、人だったり、まちの何かと組み合わせることで、楽しみ方はたくさんあると考え、このネーミングにしました。」(石川さん)
お客様一人ひとりに寄り添い、居心地良い時間を
昨年の夏、出産を機に地元である阿久根へ家族でUターンされた大戸佳美さん(寺地さんの娘さん)。オープン後は、チェックイン・チェックアウトの対応、宿の清掃、SNSの発信などで運営メンバーとして関わっています。
大戸さんは高校卒業後から県外へ。
昔から旅好きで様々なタイプの宿に泊まり、ひとり旅・子連れ旅といった視点が自然と身についていったのだとか。
現在は二児の母親ということもあり、特に家族連れ・子連れの観光客がいかに楽しく、無理なく、阿久根での時間を過ごしてもらえるかを意識しているといいます。
“地元を長い間離れていたからこその視点だったり、できることが私にもあるのではないか。”
そんな想いからSNSの発信は毎日欠かさず、地域の何気ない風景や情報も毎日発信しています。
さらに、宿の中に子どもたちが遊べるスペースを作れるようにしたり、おもちゃを準備したり、試行錯誤しながら運営していると話します。
「“このお客様なら、これが必要かな”“この子だったら、あそこが楽しめるかもしれない”と考えながらコミュニケーションをとっています。お客様一人ひとりが求めていることに寄り添えたらと思い、私自身も楽しみながら運営に関わっています。」(大戸さん)
“いつも通り”接することで
宿から路地をまっすぐ歩くこと1分。阿久根で唯一の鮮魚店『武宮鮮魚店』が右手に見えてきます。
そこで魚やお刺身を購入し、宿の器に盛りつけ、お酒を飲みながら過ごす。それが“ととと”の楽しみ方の一つです。
ここ数年、地元だけではなく、魚を買い求める観光客が増えてきているのだとか。それでも、武宮さんの中ではスタンスは変わらないと話します。
「もちろん地域の人もですが、地域外から阿久根に帰ってきた人たちにも喜んでもらえる刺身を提供できるように心がけているので“ととと”のお客様に対しても、いつも通り接したいと思っています。」(武宮さん)
「予算や人数、好みに合わせて“このお客様だったら、こうしたら喜ぶかな”と考えながら、刺身を盛っています。先日、宿泊したお客様から“美味しかったです”また阿久根に泊まりに来ます!”と言われた時は嬉しかったです。」(武宮さん)
「キビナゴは鹿児島の人にとって当たり前の食材です。でも、県外のお客様の中には食べたことがない方もいらっしゃいます。だからこそ、私たちの当たり前の味を誠心誠意込めて捌くことで、お客様に最高に喜んでもらえるように臨んでいこうと思います。」(武宮さん)
等身大の自分を表現することで、旅を楽しんでもらう
“ととと”ではオプションでケータリングのサービスもあります。担当するのは『うみまちテーブル』の木原里奈さん。
阿久根の人が暮らしの中で食べているメニューを提供すること。
それを宿にあるユニークなお皿を使って丁寧に盛りつけること。
この2点を意識しているのだとか。
「旅行に行くと、お肉やお魚を提供するお店は多いですが、軽めな旬の野菜を使った料理を提供するお店は少ない印象でした。私自身、阿久根や近隣地域のオーガニック食材を使ってお弁当を販売しているので、これなら私でもできるかもしれないと思いました。」(木原さん)
オープン初日、早速ケータリングの依頼があり、
旬だったパセリを使用したご飯を提供したとのこと。
その時の宿泊客からの声が印象的だったといいます。
「パセリは添え物として使われることが多いと思いますが、その時は肉団子に混ぜて提供しました。農家さんからお裾分けしていただくことも多く“材料を無駄にしたくない”という気持ちもあったからです。」(木原さん)
「すると“こういう食べ方があるんですね”という声がありました。目の前で調理法も簡単にお伝えできたので、それは私にとっても新鮮でしたし、楽しい時間でした。」(木原さん)
「普段、私が何気なく考え、実践していること。つまり、等身大の私を表現することでお客様に楽しんでいただけるのは嬉しいことです。」(木原さん)
まちの人たちの関わりを組み合わせ、阿久根にしか出せない価値を提供する
オープンして1ヶ月。当初イメージしていたこと以上の関わりもできてきているのだとか。
たとえば、レンタルスペースとして活用し、大戸さんを中心に昼間の時間帯に子育て中のお母さんたちが集まる機会を作っているといいます。
普段、住んでいるまちの宿に宿泊することのない人たちが利用することで“ととと”や普段住んでいる阿久根の良さを知ってもらい、そこから違う誰か・何かに波及していくのではないか。そんな未来も感じさせます。
「“ととと”の場合、時が経つにつれて価値が高まっていくタイプだと思っています。今後は阿久根市内で他にも“まちやど”が、周辺エリアには惣菜屋もオープン予定です。いろんなお店やマーケットが育っていくのが楽しいです。」(石川さん)
「根っこにあるのはお客様に、まちの皆さんの関わりを組み合わせることで楽しんでほしい。それに尽きます。」(石川さん)
様々なタイミングが重なり、5名の人たちの関わりからスタートしましたが、今後「○と○と」といった組み合わせや仲間が増え、阿久根を訪れた人たちにとっても、地域の人たちにとっても選択肢が広がるように感じました。
まずは“ととと”を起点に阿久根の暮らしを
まちを歩き、人と触れ合いながら過ごしてもらえたら。
イベントやレンタルスペースといったカタチでも利用できます。気軽にお問い合わせください。
屋号 | お宿ととと
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URL | |
住所 | 鹿児島県阿久根市琴平町13-2 |
備考 | ●予約サイト ●POPUPやレンタルスペース利用に関するお問い合わせ先 こちらからご連絡ください。 ●オプション 焼酎5種飲み比べ 2,000円(税込) ケータリング 1名5,500円(税込)〜 ●アメニティ 歯ブラシ、パジャマはご持参ください(歯ブラシは購入できます)。 その他、お風呂用ベビーチェア等、お子様グッズレンタル可能。 ●その他 おひとり様料金、連泊割もございます。気軽にお問い合わせください。 ※上記は2024年6月時点の情報です。 |