【大阪】ドキッとして欲しい 「マンボラマ」代表/デザイナー 小澤 健
街で見掛けるカラフルなこのかばん「BAG’n’NOUN」(バッグンナウン)
これらは東心斎橋・鰻谷にある古いビルで、「マンボラマ」小澤 健さんが企画デザインしているもの。マンボラマは洋服やかばんで知られている大阪発のアパレルメーカー。
小澤さんは、大阪生まれ大阪育ち。80年代後半、グラフィックデザインの専門学校に通いながらファッションウォッチの文字盤をデザインするというアルバイトをしていた時に、同じ形の腕時計も文字盤ひとつで売れ行きが変わることを目の当たりにして「なにか製品がつくりたい」と思うようになる。同じ頃、“洋服の企画をするオトナたち”の存在が小澤さんの心をさらに動かす。彼らはとにかく洒落ていてかっこよかった。感化された小澤さんは、グラフィックから服飾の道へ転向。ひとりの先生について3年間、ゼロから学んだ。その後独立しフリーのデザイナーになる。
「ほんまはちゃんと就職したかったんやで。けど(バブルで)時代が良くて意外に食いつなげてしまってん」
ある日、知人に連れられて東心斎橋の小さなビルを訪れた。他愛の無い会話から「いま、席空いてるけどここ来る?」と誘われ、4人のデザイナーでアトリエをシェアする日々が始まった。27歳だった。
しばらくしてアトリエの下の階(3階)をスタジオとして使っていたバンドが退去した。空いたテナントをみて「自分で店をやろう」と思い立ったのがマンボラマの原点だ(1991年)。自分でデザインした服と、ヨーロッパで仕入れた古着を一緒に扱うスタイルが珍しくて注目された。
しばらくすると、次は2階のギター屋が出て行った。「もし今ここに誰か他の服屋が入ったら3階までお客さん上がって来てくれへんようになる。それは困るなぁ。なら、ここを使ってカフェをやったろう!」これが、カフェコロンビアのはじまりである。
今でこそ異業種を複合的に展開するのは珍しくないが、その頃カフェを併設している服屋なんて無かったと思う。アパレルだけじゃなく、かっこいい空間(インテリア)もエスプレッソも提供するというのが小澤さんなりの「他の服屋とはちょっとちゃう」ポイントだった。インダストリアルな空間に大きな音でサルサが流れ、夜になると小澤さんは気持ち良さそうに太鼓をたたいていた。
ご機嫌に使われたそのビルも事情で退去しないといけなくなり、ひとつ北側の通りにある今のビルに移転してきたのが12年前。
BAG’n’NOUNを始めたのはちょうどその頃のこと。ビビッドでおしゃれというのが、人と一緒は嫌で目立ちたがりの大阪人にフィットしたのかじわじわと広まった。今や国内だけでなくヨーロッパを中心に12都市のセレクトショップで取り扱いがあり、海外でも支持を受けている。
インタビューの最後に聞いてみた。小澤さん、作る時に一番大切にしていることはなんですか?
「“便利であること”はいったん排除するところから作りたいと思ってます。かばんに便利を求めるのはここ数十年の話やで。コロコロ(キャスター)ついてたり、ポケットいっぱい付いてたりね。便利の行き先なんて所詮そんなもの。そもそもかばんはモノを運ぶ道具でしょ。用途は持ってくれた人の勝手。ええと思ってくれた人が使いたいように使ってくれるのがいい。かわいい、かわいない、それで良いやないですか。持ってくれた人にドキッとしてもらいたい。」
小澤さんと話しているとそのユーモアの奥には芯のある美意識と、遊び心の両方があると感じる。そして、そのイズムは商品はもちろんカフェや店、働く人たちにまで、浸透している。マンボラマから生まれる商品はオンラインでも購入できるけれど、できれば是非このビルを訪れてもらいたい。
20年変わらぬ姿勢で続く小澤さんの店はまた、年を重ねた街の魅力というものを感じさせてくれる。
屋号 | 有限会社 マンボラマ / MAMBORAMA Co. |
---|---|
URL | http://mamborama.co.jp/index.html |
住所 | 大阪市中央区東心斎橋1-11-15 |
備考 | 事業内容 営業時間 1F【cafe Colombia】 |