DECO BOTANICAL
VINTAGE + GARDEN CAFE
木と鉄と石とモルタル…、多様な素材によって建築された線のように軒の先端が細い建物が森の中にある。店主の大庭夫妻がほぼ独力で切り開き、庭を作り続ける自宅敷地の一画に建てた「店」だ。
「好きな庭と好きなアンティークを引っ付けたかった」
フランスや北米から定期的に買い付けてくる古い品々は店の内外に置かれていて、どこまでが商品でどこからが店の什器や家具や備品なのか境界が曖昧だ。 庭づくりは、そもそも店のためではなく、この土地を手に入れて、約300本の木を伐採、伐根した時から続いている。連なる森を借景として店や小屋や自宅が、庭を主役として配置されているのが分かる。
「設計図はなかったのです」
「店」は、設計図を作らず、都度、考えながら建築を進めていった。つまり店主夫婦は単なる発注者という立場ではなく、設計施工者(nomos)とともに主体的に建築全体に関わった。例えば、自然石を使った基礎工事や給排水管工事は、ご主人が工法を勉強しながら自ら施工した。必要な材料は足りなくなるとと都度、調達したという。また解体される民家の構造体から使える部材を選びここに運んで柱梁として再生利用されている。普通に行われる建築という行為とはずいぶん違ったやり方だった。
「ここは評価されるべき場所だ」
計画のはじめから、店の規模、特にカフェとしての機能をどこまで充実させるか悩んでいた。「アンティークのある庭」をコンセプトとして、好きな人だけに限定するかもっといろいろな人に来てもらえる場所にするか、それによってカフェという機能のあり方、店の規模は変わってくる。「ここを決めたときの想像力とエネルギーがある、ここは評価されるべき場所だ」という知人の言葉をきっかけに「店」の方向性は決まった。開いたキッチン、広い床面積、カフェとしても充実した機能を「店」は有することとなった。
「雑木林、南アルプス側という選択」
大庭さんご夫婦は移住者である。八ヶ岳側の大泉町に仮住まいしながら、自宅敷地を探し続けた。イメージはあった、森の中、大通りに面していないけれどそこまで離れていない、広い敷地、小川が流れ、標高が高いなどだ。数年後に武川町の広域農道から入った林道沿いの雑木林に出会った。高さ20mを超える無数の樹木と下草で覆われた土地、手を加えた後の状態が想像できなければ、普通に造成された土地しか見たことがなければ、そして自力で開拓するという強い意志がなければ、決めることはできない土地だ。大庭さんは確信できた。歩測で境界票を探しながら林立するニセアカシアの雑木林の中を歩き、家を建てる場所、庭の配置、どう開拓していくか、頭の中でイメージが形になっていき、そしてここを取得した。
「南アルプス側ということで、周囲にはあまりよく言わない人もいた」と大庭さんは言った。八ヶ岳側と逆に北下がりの地形がそうした印象を作っているのかもしれない。ただ海抜のあるこの土地は実は日照条件が八ヶ岳側とさほど変わらないのだ。現にモノ作りをする人たちの多くは、手つかずの森が残る白州、武川に拠点を有している。
開拓を続け作り続ける、「店」も「庭」も「アンティーク」も「カフェ」もそれらを取り巻く森も大庭さんご夫妻の作品なのだ。あきらめない妥協しない移住者夫婦のある到達点をぜひ体験していただきたいと思う。
名称 | DECO BOTANICAL |
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業種 | カフェ、アンティーク、作庭・空間デザイン |
URL | |
住所 | 山梨県北杜市武川町柳澤3022-9 |
TEL | 0551-45-9795 |
営業時間 | 11:30~18:00 ( 季節により変動あり ) |
定休日 | 木曜・金曜 ( その他買付やイベントなどで不定休有り ) |
備考 | アクセス:須玉ICから車で約20分 小淵沢ICから車で約20分 |