はじめての「玉こん」
プリプリでアツアツな、山形のソウルフード
※山形へ移住したライター中島による、山形で体験する“はじめて”の食べ物、イベントなどを記録するコラムです。アーカイブはこちらから。
お団子みたいだけど、こんにゃくです。
玉こんにゃく、通称「玉こん」は、山形を代表する郷土料理のひとつ。なかでも観光客がもっとも出会いやすい山形フードかもしれません。
観光名所のお土産屋さん、お祭りの出店、道の駅など、人が集まる場所へ行けば、かなりの確率で出会うことができます。
しょうゆベースのたれで煮た丸いこんにゃくが、串に3つか4つ刺さっています。こんにゃくは直径3〜4㎝で一口サイズかそれよりやや大きめ。80〜150円程度という、お手頃な価格帯です。
わりと早く冷めてしまうので、急いでアツアツのうちに頬張ります。食道を通るときに感じるじんわりとした温かさ、丸いフォルム、プリプリした食感……。なんだろう、玉こんを食べると、ちょっと幸せな気分になるんですよね。
隠し味としてスルメと一緒に煮るのが主流ですが、昆布が入っているのを見かけたこともあります。たっぷりのたれに浸けて煮たり、汁をとばすように味をつけたり、お店によってスタイルはさまざま。
タイミングによって、たれが濃くしみていたり、はたまた薄味だったりするので、しっかり味がしみていたときは「アタリ!」と、心の中で喜びます。
ファーストフードのように、お店や野外で“買い食い”するのが定番ですが、家庭料理としても愛されています。
山形のスーパーへ行くと、板状のこんにゃく(山形では「ひらこん」と呼ばれている)と一緒に、当たり前のように玉こんが並んでいます。消費量が全国第1位というほど、山形ではこんにゃくをよく食べるとのこと。そういえば、山形フードの代表格、芋煮にもこんにゃくが入っていたっけ。
山形市内で玉こんを食べるなら、千歳山のふもとにあるこんにゃく専門店「千歳山こんにゃく」がおすすめです。昭和元年創業の老舗で、玉こん発祥のお店としても知られています。
「千歳山こんにゃく」の佐藤さんにお話をうかがったところ、当時は十分な資金がなく、こんにゃくを形成する道具がなかったことから、手で丸めるだけでつくれる玉こんが生まれたそうです。
お店の裏で手づくりされている大ぶりのこんにゃくは、気泡が入った独特の食感で弾力性が抜群。素朴だけど上品で、こんにゃく本来のおいしさに気付かされます。
寒くなるとおいしさが増す、アツアツの玉こん。千歳山を眺めながら、極上の一本をぜひ。