常夏サモアから、みちのく山形へ
サモア交流大使の斎藤アロイシアさん
「サモア」という国を知っていますか?
世界地図でいうと、オーストラリアの右上あたり。南太平洋に浮かぶ常夏の島国です。
5月末の曇りの日、山形市に在住する唯一のサモア人、斎藤アロイシアさんと初めてお会いしました。
「どうも、こんにちは〜!」
歯切れのいい口調に大きな笑顔で、第一印象はとにかくパワフル。ひんやりグレーな七日町に、熱風が通り過ぎたような、強いパワーを感じました。
アロイシアさんが山形市へ越してきたのは、29年前のこと。海外青年協力隊でサモアを訪れていた旦那さんと出会い、結婚して子供が生まれました。
任期終了にともない、旦那さんの地元の山形市へ移り住むことに。そのときはまだ雪が残る3月で、テレビや映画でしか見たことがなかった雪に触れて感激したといいます。
常夏の島国サモアから、山に囲まれた山形市へ。
気候、言葉、食べ物、人柄、おおよそ共通点が見当たらない異国の地ですが、カルチャーショックなんてなんのその。3人の男の子を育てながら、老人ホームでの介護、英会話教室、歌手活動など、底知れぬパワーで日々を歩んでいます。
さらに、山形市が東京オリンピック・パラリンピックにおけるサモア独立国のホストタウンとなり、アロイシアさんはホストタウン山形・サモア交流大使に任命予定です。
「わたしはね、山形でサモア流の生き方をしてるんですよ」
そう語るアロイシアさんは堂々としていて、突き抜けた明るさがあって。話しているうちに、サモアのことをどんどん知りたくなりました。
素直に気持ちをアピールすること
──サモア流の生き方とは、どういうことでしょう?
サモアの人って、すごくオープンで優しいんです。
誰かがヘルプを必要とするときは、無条件で手を差し伸べます。たとえ知らない人だとしてもね、人のためになにかをすることは当たり前。お返しはなしですよ。常にウェルカムな精神です。
そうしていると、自然といい人との出会いが増えていきます。おかげさまで、いまわたしは周りの人に恵まれていて、すごく幸せなんです。
──山形市に来たばかりのころ、環境の変化に戸惑いはなかったですか?
やっぱり家族を恋しく感じることはありました。
だけど、私には歌があったから、人前で歌う機会をもらって、たくさん発散できました。むしろ、家でジッとしている時間がなくて、寂しいと感じる余裕はなかったかな?
人に楽しませてもらうんじゃなくて、自分で自分を楽しませるんですよね。周りのせいにしちゃダメ。自分で立ち上がらないと、周りも変わらないから。
──アロイシアさんはオープンだし、ストレートな印象です
それ、よく言われます(笑)。
お料理やお菓子をおすそ分けいただくとき、「お口に合うかわからないですが…」ってみんな言います。
わたしから贈るときは、「これすっごいおいしいんだよ!〇〇さんにも食べてほしいの!」って言いますよ。
だって、おいしいから相手に食べてほしいわけでしょ。もっと素直にアピールしなきゃ。そのほうが相手も喜んでくれるはず。いいと思ったものは、遠慮せず表現するのがサモア流です。
子どもの英語教室でも、勉強の前に「大きい声で話すこと」を大前提に教えているんですよ。
声が小さいってことは自信がないってこと。「間違っててもいいから、大きい声で言おう」って子どもたちには言ってます。最近では、わたしに負けないくらい、子どもたちは大きな声で発音してくれますよ(笑)。
声が大きくなると、自信をもって積極的に手が挙げられるようになって、アピール上手になっていくんです。
家族を大切に、お年寄りを思うこと
──ほかに、サモアの精神ってどんなことがありますか?
すごく家族を大切にする国なんです。
サモアでは、家族がお年寄りの面倒を最後までみるのが当たり前。山形へ移住してすぐ、老人ホームで働いたのですが、そもそもそんな施設があること自体にびっくりしました。一人暮らしのお年寄りにお会いすることが多くて、胸が痛みました。
いまでも毎週火曜日は、施設に泊まり込みで働きにいっています。
わたしには兄弟が12人いて、みんなで親をケアしてくれてるから、安心して日本で暮らせています。いまの老人ホームの仕事は、自分の親を思う気持ちで、お世話をしているんです。
「お願いします」「ありがとう」。お年寄りの言葉には重みがあって、学ぶことがたくさんありますし、気持ちが安らぎます。
お年寄りのみなさんから、山形のいいところをたくさん教えてもらって、ここまでやってこられたんです。
6月29日、サモアについて語り合うイベント
──サモアにまつわるイベントを開催されるんですよね
「サモアってどこ?」って聞かれることが多くて。まだまだ山形での認知度は低いんですよね。
「サモア・カフェ2017」と題して、もっとサモアのことを知ってもらうために、サモア特産のカカオティーを味わってもらい、佐藤山形市長とサモア大使とともに、サモアの文化についてお話します。
わたしはね、サモア人であり、山形人なんです。
山形は第二のふるさと。サモアと山形、2つのふるさとが交流できたら、こんなに嬉しいことはないですよ。
たった一人のサモア人でも、サモアの精神を貫きながら、この山形でメッセージを発信できるんだってこと、知ってもらいたいんです。
これからもっともっと、サモアと山形のためにがんばりますよ!
アロイシアさんから半径1メートルくらいは、ポジティブな空間があって、そこに入ると自然と元気になり、同時に安心感もありました。
取材が終わったころには、曇り空に光がさしていて、アロイシアさんが太陽を連れ来てきたのかな、なんて思うほど。
これまであまり馴染みがなかったサモア。アロイシアさんと会って話せば、どんな書物で研究するよりも、「リアルなサモア」を体感できるはずです。
イベントは、興味がある方なら誰でも参加OK。詳細は以下よりチェックしてくださいね。
>> サモア・カフェ 2017