はじめての「さくらんぼ収穫」
農業の現場で感じたこと
※山形へ移住したライター中島による、山形で体験するはじめての出来事を記録するコラムです。アーカイブはこちらから。
ついにやってきました!
山形に来てから、ずーっと楽しみにしていたんです、さくらんぼ収穫。
収穫作業の朝は早く、5時半頃に農園へ到着しました。Tシャツでは少し肌寒いくらいだけど、作業には快適な気温です。
さくらんぼ畑を見ると、鳥がついばむのを防ぐための青いネットで全面が囲われています。上には、雨よけのビニール屋根が設置されていました。
中に入って視点をあげると…
か、かわいい!
赤い粒がいっぱいいっぱいなってます。発色がよくて、ツヤツヤで、宝石がなってるみたい。
今日収穫するのは「佐藤錦」。同日に行われたイベント〈とんがりマーケット〉に卸すための収穫でした。目標は10キロ。
その前に、ひとつ味見を…
あ、あまい!!
山形にくるまえは、佐藤錦なんて高級フルーツは高嶺の花で、まともに食べたことがなかったのです。あまいとは聞いていたけど、ここまであまいのか…。
皮がパンと張っていて、噛むと濃厚なあまみが弾けます。もうひとつ、もうひとつ、と味見を…。お、おいしい…。
ちなみに、山形の人にとってさくらんぼは「もらうもの」だそうです。身割れしたり、双子になった規格外(でも味に変わりはない)のものが、近所や知り合いの間でおすそ分けされるんだとか。なんと贅沢な〜!
さて、作業に入ります。腰にカゴをぶらさげて、もいでいきます。
コツはカンタン。軸の付け根を折るように、角度をつけてもぎます。プチっと簡単にとれました。
味見しながらもいでいくうちに、おいしい実の見分けがつくようになってきました。軸が太くてハリがあるものが甘いようです。
さくらんぼの木は4メートルくらいの高さがあります。上のほうは脚立を使って作業します。
なにげなく脚立にのぼってみたら、そこは新境地でした。
木のてっぺんに近くにつれて日光を浴びやすく、実が大きくハリがあるのです。下のほうより格段にレベルが高い!
「これおいしそう!これも!これも!」ともぎ取って、葉っぱをかき分け、リンリンとなる実を発見して、テンションが上がって、というループがしばらく続きました。これは、楽しいぞ。。
黙々とカゴへ詰めていくこと約2時間。作業が終了しました。
自分にこんな集中力があったのかと驚くくらい、あっという間に過ぎた2時間。「さくらんぼ狩り」とは一味違う、ストイックな醍醐味がありました。
さくらんぼ収穫を体験して思ったこと。
東京にいた頃と比べて、山形に来てからは、農業や作物がより身近になりました。
たとえば、同僚の那須さんから「畑のある暮らし」の話を聞くこともあるし、わたしが住んでいる家のすぐ隣の敷地は畑だったりするし、なにげない人付き合いから農家さんと知り合いになることもあります。
さくらんぼをつくるプロセスも今回初めて知りました。
木に花が咲いたあと、よい果実をつくるための剪定(摘花)をしたり、均等に日光を当てるために葉をもいだり、枝の伸ばし方を調整したりと、収穫までに多くの作業があるのだそうです。
畑にネットがかかっていたように、栽培と同じくらい、鳥獣対策にも手がかかるといいます。
食べ物をつくるには、どれほどの工数があるのか。農業の現場に入れていただき、ほんの一部だけど体験して、「食」に対する視点が少し変わった気がします。とっても有意義な収穫体験でした。
やっぱり、山形に来てよかったな。
帰り道、農道を走りながら、そんなことを思いました。