【長野】おばんざい&かふぇ ごま/白馬村 山好き店主が作る、毎日食べたいおばんざい
大根1本でも、皮をむいたり、下茹でをしたり。
野菜を使った料理はとにかく手間がかかる。肉料理と違って作り置きもあまりできない。「(おばんざいは)私が毎日食べたいもん」。長野県白馬村で「おばんざい&かふぇ ごま」を営むごまちゃんこと五枚橋(ごまいばし)純子さん。繁忙期のスノーシーズン以外はひとりで店を切り盛りしている。
滋賀県出身の五枚橋さんは2010年に白馬村にやってくるまでは、調理師学校を出て、国内外のリゾート地でジャパニーズシェフとして料理の腕を奮ってきた。「そろそろお店やりたいなーと思って。知り合いは誰もいなかったけど白馬に来た」という。彼女とは共通の知人も多いけど、白馬のみんなが“ごまちゃん”と呼んでいる(私も取材までフルネームを知らなかった)。
白馬に拠点を移した後は、夏は北アルプスの天狗山荘など山小屋、冬はスキー場併設寮のまかない係やバックカントリースキーのガイドクラブなどで働いていた。そこで登山やスキーを通じての友人が徐々に増えていったという。「ガイドクラブのお客さんたちの話についていけるように、最初は雑誌見てギアのブランド覚えたり、有名なスキーヤーの名前とか覚えたりしてた。スキーのギアは友達やお客さんにもらったり。先シーズンに初めて自分でウエア買ってん!」
店を始めたのは、2015年の冬。前年の2014年11月22日、最大震度6弱の神城断層地震があり、白馬村と隣の小谷村にも大きな被害が出た。当時住んでいたシェアハウスにも被害が出て、公営住宅、アパートへと転居を余儀なくされた。「家はなくなったけど、地震の被害で閉鎖したスキー場やレストランもあって、炊飯器とかテーブルとかいろんなもらいものがやってきた。それは店を開くのに助かった」
震災時にお世話になった人たちへのお礼の会を開いたときに、友達が友達を呼び、さらにいろんな知人の輪が広がった。お店で使う野菜やお米もそういった地元の繋がりで、地元の農家さんから直接仕入れている。お店で使う味噌や漬物も自家製。白馬村の民宿の女将さんたちは漬物上手、味噌作り上手。「誰に訊いても作り方を教えてくれる。でも塩ひとつかみって、え?いまの何グラム??って。だから自分で作ってみなあかんねん」。今年は野沢菜を70kg漬けたばかりだとか。
「女性がひとりで食べに来やすい店を」と思っていたが、バックカントリースキー繋がりのコアな常連さんも多い。「冬に手伝ってくれてるのは、フリージングレベルの話がわかる女性。でもバックカントリーやらへん子が手伝いに入ってくれたときに『すごいですね~』なんてリアクションしてるのもまたよくって」。ちなみにフリージングレベルとは凍結高度。山を滑る際にどの標高から雪になっているか?という会話。
取材日は白馬村のスキー場が前日の降雪で緊急オープンした日。シーズンインのゲレンデは「めっちゃいい膝下パウダーやった!!!」。もちろん開店前にひと滑りしてきたそう。「安定していい雪の日なんて、1年に何回あるかどうか。だからここ(白馬)に住んでる」
どこに住むかなんて、本当はもっとシンプルに決めていい。
初滑りを終えて楽しそうな五枚橋さんの話を聞いて、帰ったらスキー板のワックス塗らなきゃ!と思う私も、ここの暮らしに慣れてきたのかなと思った。