すばらしきジャポニズム
「博多織ディベロプメントカレッジ」講師“メアン・マグダレン”
「クールジャパン」という言葉もよく耳にしますが、その一方で昔ながらの建築物や着物に和雑貨などが“珍しい物”として扱われることが、良くも悪くも当たり前になってしまっている今日この頃。
今回ご紹介するメアン・マグダレンさんは、イギリス生まれでスイス国籍の博多織の専門学校で講師を勤める2児の母。え?ヨーロッパ出身なのに「博多織?」と、ここで読み返した人は何人かいらっしゃるはず。
そうなんです、彼女は16世紀からの歴史を誇る博多織の職人育成プログラム「博多織ディベロプメントカレッジ」で、デッサンの講師をされています。私はそれを聞いただけでもうかなりバイタリティーのある女性像が浮んだのですが、それだけではありませんでした。
彼女は、写真家でありファッションデザイナー、スタイリストにコラムニスト、女性用着物のコレクターである多才人。繊細で柔らかな着物をまといつつ内側から湧き出る彼女のパワフルな人柄は、会った瞬間から伝わってきました。
元々“日本”に興味を持ったのは、スイスの大学で日本美術を勉強していたところからなのだそうでうす。そしてもっと日本を知りたい気持ちが膨らみ、金沢と福岡へ留学。福岡では九州大学を卒業後、99年から本格的に移住。その後ファッション系の専門学校でデザインの講師として勤め、スイスで一番人気のファッション雑誌のコラムも執筆。
ファッションデザイナーとしては福岡の洋服ブランドや2005年の愛知EXPOにデザインを提供されるなど多方面に活躍、さらに集めた和物アンティークや着物を販売、修復のお仕事まで。
「私はお父さんが写真家で小さいころから手伝ってたの。ファッションに対するインスピレーションは母、彼女はロンドンでファッションの大学に通ってたのよ。」とメアンさん。さらにフォトグラフィー・アーティストとしての活動も…
日本に移住してから、本物の「和」の美しさに見せられていくうちに、着物の生地にハサミをいれることに抵抗がでてきたのだそう。
そして失われつつある「日本の美意識と伝統」を守るために、捨てられそうになる女性用着物やアンティーのコレクションが増えていったのだと。
今はその「和」のコレクションと経験を基に、彼女の持つセンスが遺憾なく発揮されたアート写真を多数制作。
たくさんの出会いや仕事、そして妊娠に出産も、その場所が福岡だったのは、いい意味で“運命のいたずらだった”と答えるメアンさん。
「住みやすい街だし、福岡での毎日の生活はとても楽しい、でも残念なことは古きよき“日本の文化”がどんどん失われていくこと。“文化”は“環境”から生まれるのよ。だから環境の一部となる建物はとても大切なもの。本物の“美”を知っているクリエイター達は、日本家屋のような古い建物を求めているのよ。日本の大家さん達にはそれを気づいてほしい。」と訴えるメアンさんに大きく共感しました。
正直日本人である私よりも、日本に移住して来た彼女に「日本の文化」について教わることが多かったと感じた今回の取材。日本の古き良き文化を残しつつ、新しい風を吹き込んでいく私たちの“美意識”に日本の文化の未来がかかっていると実感させられました。
URL | メアン・マグダレンさんfacebook |
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