九谷焼を“土台”から知る複合型創作ラボ「CERABO KUTANI」
石川県を代表する伝統工芸品「九谷焼」。その名を聞けば、まず鮮やかな「絵付け」が想起されますが、焼き物はまず「粘土」があってこそ。
今回は九谷焼の粘土のもととなる「陶石」に着目し、さらに制作の全行程を体感・体験できる新たな施設「九⾕セラミック・ラボラトリー(通称:CERABO KUTANI)」をご紹介します。
「CERABO KUTANI」は2019年5月、石川県小松市にオープン。製⼟⼯場・ギャラリー・体験⼯房・レンタル⼯房・外⼟間を兼ね揃えた、複合型の九⾕焼創作⼯房です。
設計は隈研吾氏。「大地と有機的につながるおおらかな平屋建築」がコンセプトだそうで、建物正面に広がる穏やかな田園風景の伸びやかなラインとつながっていくようなシルエットに。
ちなみに、屋上緑化に用いられているのは地元・小松市の先端ファブリックメーカー「小松マテーレ」のプロダクト。
さて、九谷焼の起こりは「花坂陶石」という石の発見に端を発しています(九谷焼は“磁器”として生まれました※1)。その陶石の採石場が小松市にあり、60年以上に渡って製土を担ってきた工場が、まさに現在CERABO KUTANI内に稼働する「谷口製土所」です。
(※1)…九谷焼は磁器(「磁器」の粘土のもととなる素材は「石」。「陶器」の粘土は「土」からつくられる)として起こりましたが、現在の九谷焼は磁器・陶器ともに存在します。
文字通り九谷焼の“礎”となる陶石。CERABO KUTANIでは花坂陶石の粉砕から陶土が完成するまで見学することができるラボを施設の心臓部に据えています。
「ドン、ドン」と館内にリズムよく響く重い音は、まさに九谷焼が生まれる鼓動のよう。
また、ギャラリースペースでは、新進気鋭の九谷焼作家による作品展示も随時開催。
「九谷焼」というひとつの枠の中で、自在に表現されるそのジャンルの幅広さが、九谷焼の可能性を雄弁に語っています。
体験工房では、ろくろ体験や手びねりでの成形体験、絵付け体験など様々なメニュー(一部要予約制)が体験できます。専門のスタッフによる指導もあるので、初めての方でも安心して参加できます。
若手作家の育成を目的に作られたレンタル工房では、新しい九谷焼の文化を担っていく様子を見学することも可能。
普段は見ることができない作家の制作工程が可視化されることは、この地における才能の可視化ともいえるはず。
「オープンから1ヶ月が経ち、1,000人以上の方が訪れてくださいました。来館者が九谷焼の世界に触れて驚くのが、”石”から出来ている事と、その繊細な工程。数少ない陶石の産地・小松の石文化を伝え、九谷の美と技を発展的継承していく拠点になれれば」とスタッフの緒方さん。
伝統工芸好きはもちろん、建築好きも石好きも楽しんでいただけると思うので、ぜひお立ち寄りあれ。
名称 | 九⾕セラミック・ラボラトリー 通称:CERABO KUTANI (セラボ・クタニ) |
---|---|
URL | |
住所 | ⽯川県⼩松市若杉町ア91番地 |
営業時間 | 10:00-17:00(最終⼊館は16:30 まで) |
定休日 | ⽔曜⽇・年末年始 ※製⼟⼯場の稼働は平⽇のみ。 |
料金 | ⼀般 300 円/学⽣(⾼校⽣以下) 150 円 ※ ⼩松市内在住の18 歳以下および65 歳以上の⽅は無料。 |
備考 | 【ろくろ体験コース】 対象年齢:原則小学生以上
【手びねり体験コース】 対象年齢:全年齢
【絵付け体験コース】 対象年齢:原則小学生以上 |